最終更新日 25/05/11
国内スタートアップ

株式会社CAST|高温対応センサー「ULTRACK」で配管減肉を常時監視|スマート保安で注目の熊本大学発スタートアップ

サステナブルシステム開発
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(引用元 : PRTIMES)

近年、製油所や化学プラントなどのインフラ設備では、老朽化による配管やタンクの腐食(減肉)が深刻な課題となっています。設備の安全運用には定期的な点検と保守が欠かせませんが、点検作業には多大な時間と労力が必要で、特に高温・高圧・暗所といった危険な環境での作業は従業員の安全にも大きなリスクが伴います。こうした背景から、IoT技術を活用した遠隔監視システムへの注目が高まっています。熊本大学発のベンチャー企業である株式会社CAST(キャスト)(以下CAST)は、配管などの減肉を現場で“つけっぱなし”の状態で継続的に計測し、常時監視できるセンサーシステムを開発しています。CASTが掲げる「あらゆる場所にセンサーを」という理念のもと、従来の検査方法に代わるソリューションを実現しています。

事業内容:減肉監視向けフレキシブルセンサー

(引用元 : 公式HP)

CASTの主力製品「ULTRACK™」は、超薄型・高耐熱・フレキシブルな圧電センサーを活用した配管減肉の常時監視システムです。熊本大学発の「ゾルゲル複合体圧電デバイス」技術を応用し、高温環境下でも安定計測が可能。配管や設備に貼り付けて設置するだけで、非破壊で連続的な厚み測定を実現します。データはリアルタイムで送信・可視化され、予知保全や異常アラートにも活用可能。設備改造が不要で、短期間・低負荷で導入できるのも大きな魅力です。

製品概要

特徴① : 薄型超音波センサー

厚さわずか1mmでフレキシブルかつ高耐熱性(最大500℃対応)を備えたセンサー。金属配管への超音波透過性に優れ、±0.1mmの高精度で肉厚を測定可能です。専用治具により、タンクやシュートなど多様な設備にも対応可能。
製油所・化学プラント・製造業全般で、設備の劣化監視による業務効率化と安全性向上に貢献しています。

※500℃対応モデルは、150℃/300℃仕様とは運用条件が異なるため、詳細は要問い合わせです。


特徴① : パルサーレシーバーモジュール

上記センサー専用の信号送受信機器で、超音波を使った厚み測定を実施。

  • 最大8台のセンサーを有線で同時接続可能
  • PCとUSB接続することでリアルタイム測定・データ取得が可能
  • Windows11対応の専用ソフトウェアで、エコー波形の描画・データ保存が可能
特徴① : モニタリングシステム

専用ソフトを用いた常時モニタリング環境を提供。
腐食・摩耗による減肉状態をリアルタイムで検知・記録・可視化し、メンテナンス判断を支援します。

配管減肉状態監視の仕組み

(引用元 : 公式HP)
  • 課題解決

従来の手動測定では多大な人手とコストが必要でしたが、ULTRACK™は貼り付け型センサーによる非破壊・常時監視により、危険箇所への立ち入り不要で安全性を向上。予防保全やコスト削減、老朽化対策の最適化にも貢献し、CASTはこれを「スマート保安」の実現手段として提案しています。

  • 差別化ポイント

ULTRACK™は薄型・柔軟・耐熱耐湿性に優れ、複雑な形状や過酷環境でも設置可能な常設型センサーです。現場に適応しやすく、メンテナンス不要で長期間運用できるため、従来の検査機器に比べて運用負荷とコストを大幅に削減します。

  • ターゲット層

ULTRACK™の導入先は製油所や化学プラントをはじめとする大型インフラ施設が中心で、発電所、上下水道、鉄鋼、食品・医薬品工場など幅広い業種に対応。老朽化設備や人手不足に悩む現場、安全性が求められるエリアで特にニーズが高く、遠隔監視による効率化とリスク低減に貢献しています。

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  • 導入メリット

ULTRACK™の導入により、高所や危険個所への立ち入りが減り、安全性が向上します。さらにリアルタイム監視で予防保全を最適化し、突発的な故障を防止。点検コストや人件費の削減にもつながり、取得データはメンテナンス計画や設備設計の改善にも活用可能です。安全と効率の両面で大きな価値を提供します。

資金調達

(引用元 : PRTIMES)

2025年2月、株式会社CASTは第三者割当増資により総額1億5000万円の資金調達を実施しました。出資先はリアルテックファンド4号(UntroD Capital Japan)や肥銀ベンチャー2号(肥後銀行系)、OKBキャピタルと名南M&Aが組成するファンドなど複数のベンチャーファンドで、熊本大学認定ベンチャーとしての実績が評価されました。この調達により、累計の資金調達額は約3億7000万円に達しています。同時にこれまで「配管減肉モニタリングシステム」と呼んできた製品を「ULTRACK™」という新ブランド名にリブランディングし、製品ページも刷新しました。なお、今回の資金は今後の事業拡大に向けた取り組みに活用されます。例えば、プラント内での本格稼働に必要な防爆規格認証の取得に向けた開発・手続きを加速する計画です。資金面の安定化とブランド強化により、CASTは事業展開をさらに加速させていきます。

市場規模

(引用元 : Mordor Intelligence)

設備監視やセンサー関連技術の市場は国内外で拡大傾向にあります。Mordor Intelligenceの調査によると、インフラモニタリング市場(産業施設の遠隔監視市場)は2024年に約72.2億ドル、2029年には約116.8億ドルに達し、年平均成長率(CAGR)約10.1%で成長すると見込まれています。これは、先進的なセンサーやIoT技術の普及、予防保全ニーズの高まりが背景にあります。また、センサー市場全体でも拡大が続いており、2024年の世界市場規模は約173.9億ドルとされ、2030年には約304.6億ドルまで成長する予測で年平均約9.8%の伸びが見込まれています。日本国内に限っても、センサー市場は堅調で、2024年に約11.2億ドル、2029年に約16.4億ドルまで拡大すると予測されています。特に、工場のIoT化やスマート化が進む中で、設備状態を遠隔監視する需要は今後も高まる見込みです。

一方、腐食監視市場(配管やタンクの腐食検知市場)は規模こそ小さいものの高成長が期待されており、2023年に約3億4994万ドルだった世界市場は2031年に約8億67万ドルに成長し、CAGR約10.9%と予測されています。これは、石油・ガスや化学プラントなどで腐食対策投資が増えているためです。CASTのULTRACKはこうした腐食監視需要を直接的に取り込む製品であり、国内外での採用可能性があります。産業インフラの老朽化対策需要やDX推進の流れを背景に、今後も市場拡大が見込まれる領域です。

会社概要

  • 会社名:株式会社CAST
  • 所在地:熊本県熊本市(本社)
  • 設立:2019年(平成31年)9月26日
  • 代表者:中妻 啓(代表取締役)
  • 公式HPhttps://ultrack.jp/

まとめ

CASTが開発するULTRACKセンサーは、設備老朽化や人手不足といった社会課題に対応するソリューションとして注目されています。リアルタイムで配管の肉厚変化を把握し、トラブルを未然に防ぐ技術は、将来的な産業インフラの安全・安定運用に欠かせません。中妻代表も「設備の状態をリアルタイムで把握し、トラブルを未然に防ぐことで、人々がより安全かつ効率的に働ける社会を実現する」と語っており、CASTの取り組みには大きな期待が寄せられています。今後、防爆認証取得や海外展開など課題もありますが、高性能センサーによる監視システムの需要は高まり続ける見込みです。

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