
キャディ株式会社(以下、キャディ)は、2017年創業のスタートアップ企業です。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションのもと、製造業の属人化や分散した知見をデータとAIで可視化・活用することで、ものづくり現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。設計から調達・生産に至るバリューチェーン全体の情報を統合・解析することで、現場の判断や経営意思決定を高度化します。
当初は図面をもとにした部品製造の見積・調達支援サービス「CADDi Manufacturing」を提供し、2022年からはプラットフォーム戦略を本格化していました。また、図面活用クラウド「CADDi Drawer」やAI見積クラウド「CADDi Quote」など、製造業のDXを包括的に支援するサービスを展開しています。2024年にはQuoteを正式リリースし、現在は日本、米国、ベトナム、タイの4か国で事業を推進中です。累計資金調達額は257.3億円に達し、グローバル展開にも注目が集まっています。
本記事ではその事業内容や資金調達について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
事業内容:製造業向けAIデータプラットフォーム「CADDi」
キャディの中核となる「CADDi」プラットフォームは、前述のとおり製造業のエンジニアリングチェーンからサプライチェーンにまたがるデータを一元的に収集・解析するための土台です。このプラットフォーム上に、用途別のクラウドアプリケーション(サービス)を展開することで、製造業に特化したさまざまなデータ活用ソリューションを提供しています。現在、主要なアプリケーションとして以下の二つが提供されています。
- CADDi Drawer(キャディ ドロワー) – 製造業データ活用クラウド
- CADDi Quote(キャディ クオート) – 製造業AI見積クラウド
各サービスの概要と特徴、社会的意義について、以下で詳しく紹介します。
CADDi Drawer(キャディ ドロワー) – 図面データ活用クラウド

CADDi Drawerは、製造業の図面データを資産化するクラウドサービスです。キャディ独自の画像解析アルゴリズム(特許取得済)により、図面の形状を解析して類似図面を瞬時に検索。図面に紐づく設計・調達・製造情報を一元管理でき、業務のムダや属人化を大幅に削減します。
主な特長は以下の3点です。
- 図面検索の高度化:OCRとAIで図面を解析し、キーワードや形状で高速検索が可能。設計ナレッジの再利用を促進します。
- 関連情報の一元管理:図面と過去の発注履歴・材質・製造実績などを紐づけて管理でき、調達・見積精度を向上。
- 部門横断で活用可能:設計・調達・生産管理など複数部門で共有資産として活用でき、全社的な標準化と効率化に貢献します。
Drawerは、属人的な知見を可視化し、次世代への技術継承や業務最適化を実現するツールです。スズキ、SUBARU、川崎重工業など多くの大手企業で導入されており、製造業のDXを支える信頼性の高い基盤として評価されています。
CADDi Quote(キャディ クオート) – AI見積クラウド

CADDi Quoteは、製造業の調達業務を効率化するAI見積クラウドです。2024年に正式リリースされ、FAXやメールに依存していた見積取得・発注先選定プロセスをクラウド化することができます。また図面や仕様書を登録するだけで、AIが最適なサプライヤーを自動選定し、見積依頼から比較・判断までを一元管理できます。
主な特長は以下のとおりです。
- 調達業務の自動化と可視化:見積の依頼・回答・査定・比較をクラウド上で完結し、進捗状況もリアルタイムで管理可能。
- データ蓄積による知見高度化:見積データが自動で蓄積され、将来的な価格分析や戦略的なサプライチェーン構築に活用可能。
- 導入効果が明確:実際の導入事例では、見積工数の60%削減、新規サプライヤー開拓、属人化解消といった成果が報告されています。
さらに、CADDi Drawerと連携することで、図面データや調達履歴をもとに、より精度の高い見積判断や価格予測が可能になります。調達DXの中核を担うサービスとして、国内外の製造業から注目を集めています。
資金調達:エクイティと長期デッドファイナンスにて合計約91億円を調達

キャディは、シリーズCエクステンションラウンドにおいて、欧州グロースファンドのAtomicoをリード投資家とする3社のグロース投資家を引受先とした合計40億円のエクイティ資金調達を実施しました。同時に、金融機関4行からの長期性のデットファイナンスにより合計51億円の融資を実現しました。これにより、本ラウンドにおいて新たに合計91億円の追加資金を調達し、キャディはさらなる成長と革新に向けて大きな一歩を踏み出します。本ラウンドにより、累計エクイティ調達額は257.3億円となります。
今回の資金調達は、2024年7月の事業統合発表以降初の資金調達となり、このたび調達した資金は以下の目的のために活用する方針です。
- プロダクト開発の強化: 製造業AIデータプラットフォームの機能拡充、AI技術の開発
- 事業拡大:グローバル含めた事業展開の加速
◼︎今後の展望
キャディは、今回の資金調達を機に、製造業AIデータプラットフォームのグローバル展開を加速させていきます。また、年内には製造業メーカーからの出資による追加ラウンドも予定しており、2030年までにARR1000億円規模のグローバルプラットフォームになることを目指します。また世界中の製造業のポテンシャルの解放に貢献に向けて、引き続き邁進すると発表しています。
◼︎資金調達の概要
<第三者割当増資>
- 総額 40億円
- 引受先
- Atomico
- SMBC-GB グロース1号投資事業有限責任組合(運営:SMBC ベンチャーキャピタル・マネジメント株式会社/グローバル・ブレイン株式会社)
- Minerva Growth Partners
- 累計エクイティ調達額: 257.3億円
<長期デットファイナンス>
- 総額 51億円
- 借入先(無担保・無保証)
- みずほ銀行
- 北國銀行
- 日本政策金融公庫
- 他1行
市場規模と将来予測(製造業向けクラウド/AI/データ管理)

GRAND VIEW RESEARCHの調査によると、製造業におけるAI活用は世界的に加速しており、製造業における人工知能市場の市場規模は2030年までに約6.5兆円に達し、年平均成長率は46.5%と見込まれています。背景には、産業用IoTの浸透や大量データ活用の必要性があり、AIによる品質管理や生産計画の最適化など、様々な応用が進んでいます。

また、製造業のクラウド化も進展しています。Global Market Insightsの調査によると産業用クラウドプラットフォーム市場は2032年までに年率17.5%以上で成長すると予測されています。データ管理の柔軟性・安全性の確保が重視されるなか、CADDi DrawerやCADDi Quoteのような製造業特化型クラウドサービスは大きな成長余地を持っています。
国内でも製造業の8割がAI・データ活用への投資意欲を示しており、国によるDX支援策も追い風となっています。こうした環境下でキャディ社は、シリーズC資金を活用し製品開発を強化しており、今後は新サービスや海外展開の加速も視野に入れ、製造業DXの牽引役として注目が高まっています。
【会社概要】
- 会社名:キャディ株式会社
- 所在地:東京都台東区蔵前1-4-1
- 設立年月日:2017年11月
- 代表者名:加藤勇志郎
- 公式HP URL:https://caddi.com/
【まとめ】
キャディ株式会社は、製造業が抱える構造的課題に正面から挑み、AIとクラウドを駆使して現場の知恵とデータを資産化する革新的なスタートアップです。属人化の解消や業務の効率化を実現し、日本発のグローバルDXプレイヤーとして注目を集めています。
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