
近年、SNSで見かけた海外の商品を購入したいニーズが高まる一方、海外通販は言語や決済などの壁や複雑な手続きがあり、一般消費者にはハードルが高いのが現状です。
この課題を解決するため、2023年に名古屋で創業されたスタートアップ株式会社SAZO(以下、SAZO)が注目されています。SAZOはAI技術を駆使した越境ECプラットフォームを提供し、複雑な海外通販の手続きを簡素化して国内サイトのような安心な購入体験を実現します。
本記事では、SAZOのサービス内容や市場動向、今後の展望について紹介します。
事業内容:海外通販の壁をなくすAI越境ショッピングサービス

SAZOは、Amazonのような一般的なショッピングサイトとほぼ同じ感覚で海外ECサイトの商品を購入できる新しいオンラインショッピングサービスです。現在はまず韓国のECサイトに対応しており、韓国コスメやアイドルグッズ、雑貨など韓国の商品を中心に展開しています。
従来、海外サイトの商品を買う際には代理購入サービスを利用し、自分で商品情報を調べてフォーム入力を行い、料金確定まで何度もチャットでやり取りする必要がありました。SAZOではこうした煩雑さを解消し、購入したい商品のURLを入力するだけで為替レート、関税、配送料、手数料といった総額がAIによって即座に算出され、一般的な通販サイトと同様のスムーズな流れで商品を購入できます。
言語の違いや決済手段の壁を意識せず、欲しい海外商品をそのまま手に入れられる手軽さが魅力です。

実際のSAZOサイトの商品ページでは、韓国ECサイト上の商品価格(写真は韓国シリアル500gで¥490)や国内・国際配送日数、関税などが日本円で自動計算され、総注文金額(画面下部¥840)まで一目で確認できます。ユーザーは細かな手続きを意識することなく、国内通販と同じ感覚で海外の商品を購入できるのです。
さらにSAZOは高度なAI技術による差別化を図っています。例えば、韓国で人気の商品を独自AIがデータドリブンで自動的にリサーチ・選定しており、人手では見落とすような世界中の魅力的な商品を発掘しています。また、商品の画像や情報から梱包サイズや重量を予測し、送料や関税を高い精度で試算するAIロジスティクス技術も導入されています。
これらによりユーザーは「越境」を意識せずに買い物できる革新的な体験が実現しているのです。
加えて、SAZO上では世界中のトレンド商品を検索できる機能も提供されており、気になるキーワードや流行中のアイテムを入力して海外の商品を探すことも可能です。単に代理購入に留まらず、プラットフォーム自体で新たな商品との出会いを提供している点も特徴と言えるでしょう。
SAZOのサービスが一般消費者にもたらす主なメリットをまとめると次の通りです。
- 手軽さ: 欲しい商品のURLをコピーして検索バーに入力するだけで購入手続きが完了します。面倒なやり取りや書類記入は不要で、誰でも直感的に利用できます。AIが商品情報を自動翻訳・表示してくれるため、外国語が分からなくても問題ありません。
- 低コスト: SAZOでは韓国からの代理購入手数料が0円(無料)で利用できます。中間マージンの発生しない独自の流通プロセスと、AIが最適な価格を算出する仕組みにより、リーズナブルな総額費用で海外商品を購入することが可能です。実際、韓国コストコの商品が他サイトの1/3程度の価格で買えたとの報告もあります。
- 信頼性: 購入前に商品内容や価格、送料・税金まで含めた総額がすべて表示されるため、予想外の追加費用が発生しません。配送状況の追跡や日本語でのカスタマーサポートにも対応しており、初めての海外通販でも安心して利用できます。利用者からも「対応が丁寧で不安なく購入できた」「思ったより早く商品が届いた」といった声が寄せられています。
- 豊富な品揃え: SAZOは1万店以上の海外ECサイトと連携しており、韓国をはじめ世界各国の多彩な商品を取り扱っています。日本未上陸の最新コスメや限定アイドルグッズから日用品まで、欲しかった商品が見つかる可能性が広がります。国内では入手困難なレアな商品でも、SAZOを通じて直接購入することが可能です。
このようにSAZOはAI技術を駆使して越境ECの課題を解決し、一般消費者が気軽に海外通販を楽しめるプラットフォームを提供しています。今後は対応国の拡大や機能強化により、さらに利便性を高めていくことでしょう。
資金調達:2025年3月、プレシリーズAラウンドにて7億1000万円を調達

2025年3月、SAZOはプレシリーズAラウンドで7億1000万円の資金調達を完了しました。リード投資家は日本郵政グループのCVCである日本郵政キャピタル株式会社で、その他にも物流大手の鈴与株式会社やベンチャーキャピタルのD4V(Design for Ventures)等を引受先とした第三者割当増資により調達が実施されています。
今回の出資により、アジアや北米市場への展開も視野にさらなる成長が期待されています。
調達した資金は事業拡大に向けて以下の目的に充当される予定です。
- AI技術の更なる高度化: 越境ECにおける情報探索・決済・物流・関税処理など国際取引の障壁をAIで自動化・簡素化するための技術開発。
- グローバル物流ネットワークの拡充: 日韓間のみならず世界中への越境配送を可能にするため、日本国内および海外での物流拠点の設立・強化。
- プラットフォーム拡大とマーケティング活動: SAZO独自の越境ECプラットフォームの認知度向上とユーザー基盤拡大のためのマーケティング強化。
- 関税・輸送コスト予測システムのBtoBソリューション化: 投資家でもある物流企業等と連携し、通関業務のデジタル化・効率化や人材不足解消に資するソリューション開発。
- 組織体制の強化: グローバル展開を支えるエンジニアやマーケティング人材、コーポレート人材の積極採用・育成による組織力強化。
実際、SAZOはサービス提供開始から間もないながら急速に成長しています。2024年5月の正式リリース以降、韓国からの購入ニーズの高まりに応える形で取扱高が四半期ごとに179%超という驚異的な成長率を記録しており、サービス開始当初から順調にユーザーと取引額を伸ばしている状況です。
直近の資金調達によって得たリソースを活用し、韓国に限らず他の海外市場へのサービス展開やシステム外販などビジネスの幅を広げることで、更なる成長加速が見込まれます。
市場規模:世界の越境EC市場規模は、2030年には7兆9,380億USドルに達する見通し

近年、世界の越境EC市場規模は飛躍的な成長を続けており、2021年には約7,850億USドルだったものが2030年には7兆9,380億USドルに達する見込みです。
この背景には、InstagramやTikTokなどSNS発のトレンドによって「SNSで見たあの商品が欲しい」という消費者ニーズが世界的に高まったことがあります。米国・中国・韓国のインフルエンサーが使うコスメやファッションアイテムが日本でも人気となり、海外商品の個人輸入(越境EC)が活発化しました。

世界全体の市場動向を見ると、2022年時点で越境EC市場規模の国別シェアは、
1位:中国(50.4%)、2位:米国(18.4%)、3位:英国(4.5%)、4位:日本(3.1%)、5位:韓国(2.5%)となっており、中国が世界の過半を占めています。日本の越境EC利用は今まさに成長期にあるものの、現状では中国や米国に比べ規模は小さく、さらなる伸びしろがある分野です。
実際、経済産業省の調査によれば2022年に日本の消費者が海外サイトで購入した額は約3,953億円(内訳:対中国392億円、対米3,561億円)に留まります。一方で同年に中国の消費者が日本から購入した額は合計3兆円以上に上り、海外需要を取り込む越境ECのビジネスチャンスがいかに大きいかがわかります。
こうした中、SAZOは日本↔韓国間というニッチかつ有望な市場にフォーカスしてサービスを展開しています。韓国はEC先進国でありながら海外発送非対応の国内ECサイトが多数存在するため、韓国商品の購入代行ニーズは高い市場です。SAZOはまずこの日韓間の需要を確実に捉え、ユーザー体験を磨き上げています。
前述のとおりサービス開始から取扱高・ユーザー数とも急拡大しており、今後は韓国在住者が日本の商品を購入できる逆越境サービスの開始も予定されている見込みです。将来的には他のアジア圏や北米などへサービス対応国を順次拡大し、グローバルな越境ECプラットフォームへと成長する計画となっています。
急成長する市場の波に乗って、自社の存在感を高める余地は大きいでしょう。SAZOが独自のポジションを築くことで、日本発のスタートアップとして越境EC市場に新風を吹き込むことが期待されています。
会社概要
- 会社名: 株式会社SAZO
- 所在地: 愛知県名古屋市昭和区鶴舞1丁目2-32
- 設立: 2023年10月
- 代表者: 代表取締役 CEO ギル・マロ (Maro Gil)
- 事業内容: AIを用いた越境ECサイト「SAZO.shop」の運営
- 公式サイト: https://about.sazo.shop/
まとめ
SAZOはAIの力で国境を越えたショッピング体験を根本から革新しようとしています。韓国市場を足掛かりに各国のECサイトと連携し、誰もが自由にそして安心して世界中の商品にアクセスできる新たなオンラインショッピングの未来を切り拓いていく予定です。
越境ECの発展によって海外の商品がより身近になれば、私たち消費者の選択肢はますます広がり、日常の買い物が今よりもっと楽しく便利になるでしょう。
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