最終更新日 25/05/27
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【金融DX最新事例】企業の財務改革を支えるスタートアップ4社を徹底解説

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金融DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業の財務・経理・資金管理業務を、ITやデジタル技術によって効率化・高度化する取り組みです。従来の紙・手作業中心だった業務をクラウドやAIで自動化し、業務負担の軽減や経営判断のスピードアップを実現します。特に中小企業にとって、資金繰り改善や人手不足の解消に直結する重要なテーマとなっています。

日本の中小企業は全企業の99.7%、就業者の約7割を占めますが、人手不足や生産性の低さ、DXの遅れ、資金調達の難しさなど多くの課題を抱えています。特に地方企業では、人口減少による人材不足や、補助金制度があっても情報分散や申請の煩雑さから十分に活用できていない現状があります。こうした課題を解決する鍵として、資金管理・請求決済・経費精算など財務関連業務のデジタル変革(金融DX)が重要性を増しています。

本記事では、以下の金融DXを推進する注目のスタートアップ企業4社を紹介します。それぞれが独自のソリューションで、企業の資金管理や財務業務の課題を解決し、大きな成果を上げています。個別記事も紹介しているためそちらも併せてご覧ください。

  • 株式会社ベター・プレイス
  • 株式会社LayerX
  • 株式会社UPSIDER
  • 株式会社Stayway

株式会社ベター・プレイス:中小企業に企業年金を届けるDXの挑戦

(引用:公式HP

株式会社ベター・プレイス(以下、ベター・プレイス)は、中小企業にも企業年金制度を行き渡らせる金融DXに挑むスタートアップです。少子高齢化が進む日本で従業員の将来資産形成を支援する企業年金や退職金制度の重要性が高まる一方、多くの中小企業では制度未整備により大企業との格差が生じています。ベター・プレイスは「お金の心配なく自分らしく働ける社会」を目指し、企業年金制度の導入支援とそのDX化によってこの課題解決に取り組んでいます。

事業内容:企業年金を身近にする3つの柱

ベター・プレイスは、企業年金に関する3つのサービスを展開しています。

  • 企業年金DXシステム「はぐONE」
  • 福祉はぐくみ企業年金基金(はぐくみ企業年金)
  • 企業型DC制度導入支援サービス「つみたてDC」

「はぐONE」は、中小企業向けのクラウド型企業年金管理プラットフォームです。同社はこれによって紙の書類を使わず掛金拠出や従業員の加入・脱退手続き、承認業務などをオンラインで完結できるようにしました。従業員はWeb上で自身の積立残高を即時確認でき、手軽に掛金変更も行えるため、年金を「自分ごと」として捉えやすくなり資産形成意識の向上にもつながります。

「はぐくみ企業年金」は、中小企業が共同で利用できる確定給付年金基金です。元本保証付きの企業年金制度を低コストで提供しています。この基金は全国で導入企業数約3,000社、加入従業員約8万人に達しており、直近1年で約3万人増加するなど急速に拡大しています。制度を導入した企業では、従業員の年金加入率が平均70%にのぼり、福利厚生の充実によってエンゲージメントと定着率(離職率の低下)が向上し、人材確保・採用競争力も高まったとの声が上がっています。

「つみたてDC」は、中小企業向けDC(企業型確定拠出年金)支援サービスです。「選択制DC」の導入を前提とした設計が特徴で、中小企業のDCへのハードルの高さを軽減しています。

ベター・プレイスはこの3つの事業を通して、中小企業の社員にも大企業並みの老後資産形成機会を提供しています。人材定着や満足度向上につなげる点で社会的意義が大きいと言えるでしょう。事業や資金調達についてさらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

株式会社LayerX:企業の支出管理一本化を実現

(引用:公式HP

株式会社LayerX(以下、LayerX)は「すべての経済活動をデジタル化する」というミッションを掲げ、2018年に創業されたスタートアップです。東京大学大学院在学中にGunosyを立ち上げた福島良典氏がCEOを務めています。当初はブロックチェーン技術を活用した企業向け事業を展開していましたが、企業間取引のDXの遅れなど課題を痛感し、現在は、法人支出管理SaaSのバクラクを中心に、Fintech事業、AI・LLM事業を運営しています。

事業内容:企業の支出管理を一本化するサービス「バクラク」

(引用:公式HP

LayerXは、支出管理を一本化するサービス「バクラク」を提供しています。バクラクは企業内の経費・支出データに関する様々な業務を一元化するクラウドサービスです。部署間で情報が連携しづらいという課題をデータ中心のサービス群で解決します。バックオフィス業務全般を一つのプラットフォーム上で効率化し、AIによる入力補助で手作業も削減します。これにより紙やエクセル主体だった煩雑な経理プロセスから現場担当者を解放し、社員は本来のコア業務に集中することが可能です。

実際にサービス開始からわずか約3年で累計導入社数1万社を突破しており、中小企業から大企業まで急速に利用が広がっています。LayerXは複数のプロダクトをデータ基盤で連携させる「コンパウンドスタートアップ」として、企業内のサイロ化されたSaaSを統合しシームレスなデータ活用を実現するモデルに挑戦しており、日本企業の経理・財務DXを包括的に推進する存在です。またそれだけでなく現在はFintech事業やAI事業も展開しています。詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

株式会社UPSIDER:調達額600億円越え!法人向け金融サービスを提供するスタートアップ

(引用:https://note.com/upsider_inc

株式会社UPSIDER(以下、UPSIDER)は、スタートアップや成長企業向けに資金管理や業務効率化を支える法人向け金融ソリューションを提供するフィンテック企業です。同社は複数のサービスを展開していますが、中核となるのはスタートアップ企業特有のニーズに応えた法人クレジットカード「UPSIDER」です。

事業内容:法人カード「UPSIDER」

(出典:https://up-sider.com/

この法人向けクレジットカードは、以下のように多くの利便性を備えています。

  • 高い利用限度額
  • 利用明細のリアルタイム反映
  • 追加カードの柔軟な発行
  • 利用先の細かな制限設定
  • 電子帳簿保存法やインボイス制度(適格請求書制度)への対応
  • 迅速な与信審査

特に審査スピードが早く、必要書類も最小限のため、創業間もないスタートアップや中小企業でも導入しやすい点が高く評価されています。

またUPSIDERはほかにも、

  • 取引先への請求書支払いを銀行振込ではなくクレジットカードで行える請求書カード払いサービス「支払い.com」
  • 業務効率化を目的としたAIチャットボット「UPSIDER Coworker」
  • ベンチャーデットファンド「UPSIDER BLUE DREAM Fund」

など、独自のソリューションを多数展開しており、スタートアップや成長企業から高い評価を得ています。2018年創業という若い企業ながら、UPSIDERはこれまでに累計600億円超の資金調達を達成しており、資本力とスピード感を武器に、企業向け金融サービスのあり方を根本から変えることが期待されます。詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

株式会社Stayway:補助金DXで中小企業の生産性向上・地方創生に挑む

(引用:公式HP

株式会社Stayway(以下、Stayway)は、中小企業向けの補助金申請支援に特化した金融DXサービスを展開するスタートアップです。中小企業の資金繰り支援に可能性を見出した佐藤淳氏によって創業され、国や自治体の膨大な補助金・助成金情報を一元化し各企業に最適な制度をマッチングするとともに、オンライン上で申請書類の作成から提出まで包括支援するクラウドプラットフォームを提供しています。

これまで政府の補助金制度は情報が分散し申請手続きも煩雑だったため、多忙な中小企業経営者にとってハードルが高いものでした。Staywayの補助金クラウドを活用すれば、自社に使える補助金を漏れなく把握でき、書類作成もガイドに沿って進められるため手続きを大幅に簡素化できます。

事業内容:補助金申請支援サービス「補助金クラウド」

(引用:公式HP

「補助金クラウド」は、企業が活用可能な補助金・助成金を一元管理し、最適な制度のマッチングから申請支援までをワンストップで提供します。

サービスの主な機能と特長

  • 国・自治体の補助金情報を一元化
    各省庁や自治体の多様な補助金制度をクラウド上で整理・集約。
  • 最適な制度を自動でマッチング
    企業の状況や目的に応じて、利用可能な補助金をレコメンド。
  • 申請書類の作成〜提出までをオンラインで完結
    面倒な手続きをクラウド上で簡略化し、申請のハードルを大幅に下げます。

これにより、中小企業の補助金申請はこれまでよりも圧倒的に効率的になります。さらに補助金クラウドは直接提供だけでなく間接支援モデルを採用しています。そのため全国拡大がかなり進みリリースから2年弱で全国35社以上の金融機関に導入されています。

またStaywayは他にも中堅企業向け「プロフェッショナル×DX事業」や、自治体・観光業へのコンサルティング支援「地方創生事業」も行っています。気になった方はこちらの個別記事をご覧ください。

まとめ:金融DXがもたらす可能性と展望

今回は、金融DXを提供するスタートアップ4選を紹介しました。これらの企業に共通するのは、「かつては大企業だけの特権だった利便性や効率性を、中小企業にも届けている」点です。実際、UPSIDERの累計600億円超の資金調達や、Staywayの地方銀行との提携拡大に見られるように、金融DX領域のスタートアップには大きな期待が寄せられています。

金融DXの進展は、企業の財務業務の負担を軽減し、リソースを本業へ集中させるだけでなく、従業員にとっても年金や経費管理といった面で働きやすい環境づくりに貢献します。もはや金融DXは、単なる業務効率化にとどまらず、企業の競争力強化の重要な柱となりつつあるのです。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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