最終更新日 25/05/30
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医療DX×医療AIで現場改革!注目スタートアップ6社の挑戦事例

DXヘルスケアまとめ記事医療
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はじめに:医療DXが求められる背景

日本の医療現場では、高齢化による患者数の増加や医療従事者の人手不足が深刻な課題となっています。また医師・看護師の過重労働や地域偏在、救急医療での受け入れ困難(いわゆる「救急車のたらい回し」)といった問題も指摘されてきました。こうした状況を打開するために、医療DX(医療分野のデジタル・トランスフォーメーション)や先端技術の活用による業務効率化・サービス改革が急務です。また、AI技術(医療AI)を診断支援やデータ分析に活かし、限られた医療資源を効果的に使う動きも進んでいます。

このような社会課題に挑戦するのが、医療現場改革に取り組む医療スタートアップ企業たちです。例えば、救急医療のミスマッチ解消に挑む「ドクターズプライム」や、病理診断をAIで支援する「メドメイン」など、テクノロジーを駆使した新興企業が次々と登場しています。本記事では医療従事者をサポートする企業と、診断・治療プロセスを変革する企業の2つのカテゴリに分けて、注目のスタートアップ6社を紹介しているため、是非最後までご覧ください。

医療従事者を支援するスタートアップ

まずは、医師や看護師など医療従事者の負担軽減に焦点を当てた、以下の3つのスタートアップを紹介していきます。

  • 株式会社ドクターズプライム
  • Contrea株式会社
  • TXP Medical株式会社

これらの企業は救急対応の効率化業務のデジタル化によって、医療現場の働き方改革を実現しようとしています。医療従事者を支援するこれらのサービスは、限られた人員でも質の高い医療提供を維持し、患者に向き合う時間を創出することに貢献しています。

株式会社ドクターズプライム

(引用:ドクターズプライム公式HP)

株式会社ドクターズプライム(以下、ドクターズプライム)は、「自分らしく選べる医療をすべての人に」を掲げ、医師の働き方と患者の選択肢をテクノロジーで支援するヘルステック企業です。救急受け入れ拒否や医師の過労、医師選びにおける情報格差といった日本の医療課題に対し、データと仕組みで解決を図っています。

同社は、救急対応に積極的な医師を病院へ紹介する「Dr.’s Prime Work」や、診療スキル向上を支援する「Dr.’s Prime Academia」、信頼できる医師と患者をオンラインでつなぐ「LifeDoctor」など複数の事業を展開しています。医師の診療実績をデータ化・評価し、正当な報酬とキャリア形成を支援することで、医療現場の持続可能性向上に貢献しています。

2025年には約3.9億円を調達し、事業を拡大中です。医師不足や偏在といった構造的課題に挑む、医療DXの先駆け的存在となっています。さらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

Contrea株式会社

(引用元:https://medios.guide/)

Contrea株式会社(以下、Contrea)が提供する「MediOS(メディオス)」は、医療従事者と患者の間にある情報ギャップを埋め、診療現場のコミュニケーション課題を解決する医患連携システムです。診察内容が理解しづらい、待ち時間が長いといった患者の不満や、説明に多くの時間を要する医療者側の課題に対応しています。

最大の特長は、検査や手術前の説明をアニメーション動画で提供する仕組みです。患者は来院前や待ち時間中に動画を視聴でき、自分のペースで理解を深められます。これにより医療者の説明時間は大幅に削減され、MediOS導入病院では50%以上の業務時間削減という実績もあります。さらに、電子同意書の取得やオンライン問診といった機能を通じて、外来業務のDXを推進し、医師が専門業務に集中できる体制を整えています。

さらに評価される点として挙げられるのが、大学病院から地域医療機関まで導入が広げ、医療DXと患者サービスの両立を実現している点です。今後は多言語対応などを通じて、グローバルな患者対応への展開も見据えています。MediOSは、現場の課題に寄り添った革新的なソリューションとして注目されています。さらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

TXP Medical株式会社

(引用:TXP Medical公式HP

TXP Medical株式会社(以下、TXP Medical)は、医療現場のデータ断片化と書類業務の非効率という課題に対し、診療情報の一元管理を実現する医療データプラットフォームを提供するスタートアップです。「医療データで命を救う。」を掲げ、救急患者の搬送時情報の即時共有や、複数病院間の検査・画像データ連携を可能にし、紙やFAXに頼らないスムーズな情報共有環境を構築しています。

同社のシステムは特に救急・急性期医療で力を発揮しており、搬送から初療までの時間短縮や診療方針の迅速な決定に貢献しています。また日常診療においても重複検査の防止やチーム医療の強化に寄与し、医療の質向上と業務負担の軽減を同時に実現しています。

2024年には約24億円の資金調達を行い、急性期病院向け「NEXT Stageシリーズ」や自治体連携による地域医療ネットワークの構築も進行中です。TXP Medicalは、医療DXの中核を担う存在として、持続可能な医療体制の実現を目指しています。さらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

診断・治療を変革するスタートアップ

こちらのカテゴリでは、診断プロセスや治療方法そのものをテクノロジーで革新しようとしている以下の3つのスタートアップを紹介します。

  • 株式会社プレカル
  • メドメイン株式会社
  • 株式会社テックドクター

これらの企業は、AI(人工知能)クラウドデータ解析といった先端技術を駆使し、今まで医師の勘や経験に頼っていた部分を科学的・効率的に支援する点が特徴です。専門医不足が問題となっている領域での診断支援AIの開発や、患者一人ひとりに合わせた個別化医療(オーダーメイド医療)を実現するサービスなど、そのアプローチは多彩です。こうした技術は、正確で迅速な診断・治療を可能にすることで患者の負担軽減にもつながり、超高齢社会の医療ニーズに応える新たなソリューションとして期待されています。

株式会社プレカル

(引用元:PRTIMES

株式会社プレカル(以下、プレカル)は、調剤薬局の業務効率化と医療の質向上を目指すスタートアップです。薬剤師不足や事務作業の負担が課題となる中、同社は日本初のクラウド型レセプトコンピュータ(レセコン)を開発。処方データをクラウド上で一元管理し、病院など他機関と連携することで、重複投薬の防止や患者情報の共有を実現しています。

さらに、プレカルの特徴的なサービスが処方箋入力のオンライン代行です。リモートの専門オペレーターが入力業務を担うことで、現場では入力作業がゼロに。これにより入力ミスが減り、薬剤師が本来の業務に集中できる環境を整えています。

2024年には約2.3億円を調達し、基本利用料0円の「プレカルレセコン」を軸に事業を拡大中です。将来的には薬局データを活用した新サービスも視野に入れており、薬局業務のDX化をけん引する存在として注目されています。地味に見える薬局の現場こそ、大きな改革余地があることを体現する企業です。さらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

メドメイン株式会社

(引用:PR TIMES)


メドメイン株式会社(以下、メドメイン)は、病理医不足という深刻な課題に対し、病理診断支援AI「PidPort(ピッドポート)」を開発し、がん診断分野に革新をもたらすスタートアップです。病理診断は、がんの有無を最終的に見極める重要なプロセスですが、日本では病理専門医が慢性的に不足しており、医師一人あたりの負担が非常に大きいのが現状です。

PidPortは、顕微鏡標本を高解像度のデジタル画像としてクラウドに保存・共有し、遠隔での診断やカンファレンスを可能にするデジタル病理プラットフォームです。独自のAIは胃・大腸・肺・乳腺など多様な臓器に対応し、がん細胞を高精度かつ高速に検出。病理診断の効率化と均質化を実現し、医療格差の是正にも寄与しています。

このシステムはすでに多くの医療機関や研究機関、教育現場で活用されており、メドメインは国内有数の医療AI企業として高い評価を得ています。熟練医の経験に頼っていた病理診断に客観性とスピードをもたらすPidPortは、医療DXの先端を象徴する技術として、今後さらに注目が高まるでしょう。さらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

株式会社テックドクター

(引用:公式HP

株式会社テックドクター(以下、テックドクター)は、メンタルヘルスや生活習慣病といった日常に関わる健康課題に対し、データドリブンなアプローチで挑む医療スタートアップです。「データで“調子”をよくする時代へ」を掲げ、スマートフォンやウェアラブルから得られる生体情報をもとに、病気の兆候や治療効果を可視化するデジタルバイオマーカー(dBM)を開発。特に、客観的評価が難しい精神疾患においては、うつ病患者の睡眠や活動量などを継続的に分析し、主観だけに頼らない診療支援を実現しています。

また、生活習慣病の予防個別健康指導にも活用されており、取得したデータは医療・研究機関向けに統合・可視化された形で提供されます。創業以来、製薬企業や大学との共同研究は100件超にのぼり、QOL指標や疾患特化型のdBM開発に成功。現在はその「社会実装」に注力しており、2025年にはシリーズBで12億円を調達、累計18億円に達しています。

同社の技術は、医療を「治療中心」か「予防・継続ケア」へと進化させる可能性を秘めており、日本発の医療DXを牽引する存在として、今後の成長に期待が集まっています。さらに詳しく知りたい方はこちらの個別記事をご覧ください。

まとめ:医療スタートアップが切り拓く未来

ご紹介した6社は、医療DXや医療AIを通じて現場の課題に挑む注目のスタートアップです。医師や薬剤師などの専門性にテクノロジーを融合させることで、医療従事者の負担軽減と、質の高い医療の持続可能な提供を目指しています。共通点は「データで医療をアップデートする」という姿勢にあります。

各社はそれぞれの分野で独自のAIプラットフォームを開発して新たな価値を創出しており、こうした取り組みは行政や大企業との連携を通じ、今後さらに拡大が見込まれます。また医療スタートアップの革新によって、患者はより安心して医療を受けられ、医療従事者には働きやすい環境が整っていくでしょう。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

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