最終更新日 25/05/27
システム開発国内スタートアップ

「AI」で不動産取引の透明性を実現 エステートテクノロジーズ

AIシステム開発
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(引用元 : 公式HP

日本の不動産業界は他業種と比べてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が遅れており、作業効率の低さやクラウド利用の不足など課題が山積しています。実際、「勤務先がDXに取り組んでいる・取り組む予定」と回答した不動産企業はわずか48.0%にとどまり、全産業平均(52.3%)を下回ったという結果の調査も出ています(引用元 : いえらぶGROUP)。

紙の書類や対面契約などアナログな慣習が根強く残り、情報の非対称性も大きい不動産取引の現場では、消費者が不利になりがちで市場の停滞要因ともなっています。こうした状況を変革すべく、エステートテクノロジーズ株式会社(以下、エステートテクノロジーズ)は2019年の創業以来、AI(人工知能)とビッグデータの力で不動産取引に公平性と透明性をもたらすことに挑戦している不動産テック企業です。同社は「AIの力で、不動産取引の世界にイノベーションを」というモットーのもと、不動産業界のデジタル化と情報格差の是正によって、人々が安心して資産形成できる社会の実現を目指しています。

事業内容

(引用元 : PRTIMES

エステートテクノロジーズは、BtoBとBtoC向けのどちらにも手広くサービスを展開しています。

BtoB事業

・不動産価格査定エンジンAPI
独自のAIアルゴリズムを活用した高精度な不動産価格査定エンジンをAPIで提供。不動産会社は自社サイトにこの機能を組み込むことで、手軽に自動査定機能を導入可能です。査定精度はMedian Error Rate(中央値誤差)2〜3%台と業界トップクラス。

・不動産追客ロボットサービス
顧客の検索行動や条件を分析し、ニーズに合った物件を自動で提案する営業支援ツールです。営業担当者の負担を軽減し、効率的なフォローアップ(追客)を実現します。成約率や対応スピードの向上に貢献。

・オリジナルPtoPマーケット構築支援システム
売主と買主が直接交渉できる買取マッチングプラットフォームを構築・提供。不動産会社やFC展開企業が自社プラットフォームを持てるよう支援し、仲介コストの削減や成約率の向上が期待できます。

・ウェルスマネジメント向け不動産管理API
高精度な不動産価格をリアルタイムで算出し、顧客の不動産ポートフォリオを一括で可視化・管理できるツール。資産運用や相続対策を支援する金融機関・士業向けの新たなソリューションです。

・「暮らし」「リスク」データ提供サービス
物件単体の情報にとどまらず、周辺の治安・災害リスク・行政サービス・生活利便性など、生活者視点のエリア評価データをAPI提供。不動産選びの根拠をより豊かにするツールとして注目されています。

BtoC事業

・Dr.Asset レコメンダー
東京都心の中古マンションを対象に、希望条件に合った物件を相場価格・生活評価付きで毎日自動提案。LINEやメールで通知され、営業電話は一切なし。掘り出し物件を効率よく見つけたい方に最適です。

・Dr.Asset チェッカー
マンション名や住所を入力するだけで、その物件のAI査定価格や価格偏差値、想定家賃収入が30秒以内に表示されます。営業がかからないため、気軽に「いくらで売れるか」を調べたい方に便利です。

・ マンションリスク by Dr.Asset
東京都内約10万件のマンションに関する価格、立地、暮らし、災害・治安リスクを網羅したマンションデータベース。購入前の情報収集や比較検討に役立つ、”マンション大辞典”のような存在です。

・ Dr.Asset プランナー
「賃貸に住み続けるより、今買った方が得?」という疑問に応える乗り換えプラン設計ツール。家賃・収入・ライフスタイルを入力すると、購入タイミングの最適解をシミュレーションしてくれます。

・Dr.Asset レントチェッカー
現在の家賃が高すぎないか、安すぎないかを周辺の相場と比較し、自動判定できる無料ツール。賃貸継続か引っ越しかの判断材料として利用されており、ユーザーの住宅コスト意識向上にもつながります。

資金調達

(引用元 : PRTIMES

エステートテクノロジーズは着実な事業成長に伴い、外部からの資本調達も進めてきました。直近では2022年8月にシリーズAラウンドとして約5億円の第三者割当増資を実施し、累計調達額を約6.5億円に伸ばしています。このラウンドでは既存投資家の伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(伊藤忠商事系VC)に加え、新規にグローバル・ブレイン株式会社やみずほキャピタル株式会社といった大手VCが引受先となりました。なお同社は創業翌年の2020年7月にも伊藤忠テクノロジーベンチャーズから1.5億円のシード資金を調達しており、VC各社からの継続的な支援を受けながらサービス開発と市場展開を拡大してきた経緯があります。

調達した資金は、不動産AI査定エンジンの機能強化やサービスの全国展開、人手が不足しがちな不動産業務を自動化する「追客ロボット」など企業向けAPIサービスの開発加速に充当すると発表されています。実際、2023年には全国主要エリアの不動産データをカバーしAI査定の対応範囲を広げるなど、資金調達をテコに事業をスケールアップさせています。

市場規模

(引用元 : 株式会社矢野経済研究所

エステートテクノロジーズが展開する不動産テック市場は、今後も大きな成長が見込まれています。矢野経済研究所によると、国内の不動産DX市場は2022年度に9,402億円、2030年度には約2兆3,780億円へと2.5倍に拡大する見通しです。なかでもBtoC領域が市場成長をけん引し、マッチングや査定などの個人向けサービス需要が高まっています。一方、BtoB分野も電子契約の普及などにより約5,180億円規模まで拡大する予測です。

加えて、リースバック市場も高齢化や不動産価格上昇を背景に拡大中。2016年には266件だった取引数が2018年には920件に増加、主要プレイヤーの年間契約件数も1,000件を超えています。シニア層を中心に需要が定着し、信頼性ある比較サービスのニーズが急増しています。

さらに、住宅ローン仲介市場(モーゲージブローカー)も注目分野です。2024年には約7,700億円規模となり、2029年には約8,200億円へと拡大が予測されています。オンラインローンプラットフォームの普及により、エステートテクノロジーズの関連サービスにも追い風となっています。

会社概要

  • 会社名: エステートテクノロジーズ株式会社(Estate Technologies Inc.)
  • 所在地: 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-21-6 プラザF1ビル 9階
  • 設立: 2019年3月13日
  • 代表者: 代表取締役CEO 澤 博史
  • 資本金:699,800,150円(資本準備金含む)
  • 公式HP: https://www.estate-tech.co.jp/

まとめ

エステートテクノロジーズは、不動産業界のDXや情報の非対称性といった課題に真正面から挑むスタートアップです。AI査定やデータ分析を駆使し、透明で納得感のある不動産取引を実現。今後は全国展開や企業向けAPI強化、ウェルスマネジメント分野への進出も視野に入れています。高齢者の資産活用や空き家対策など社会課題の解決にも貢献しており、今後の不動産テック領域をリードする存在として注目が高まっています。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

エステートテクノロジーのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、ぜひ関連記事もご覧ください。

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