最終更新日 25/06/17
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不動産テックで業界を変革する注目のスタートアップ3選【DX事例】

DXまとめ記事不動産
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不動産業界は今、大きなDXの波に直面しています。従来、膨大な紙の書類や人脈に頼っていた不動産取引は、情報更新の遅れや業務効率の悪さといった課題を抱えていました。例えば日本では、適切に管理されない空き家が2023年時点で約900万戸(空き家率13.8%)に増加し、防犯景観悪化など深刻な社会問題を引き起こしています。

こうした課題を解決する切り札として、不動産テック(PropTech) 分野のスタートアップ企業が注目を集めています。政府も宅建業法の改正によるオンライン契約解禁などを通じて不動産DXを後押ししており、業界全体がDXへの転換期を迎えている状況です。本記事では、不動産テック・不動産DX領域で特に注目されるスタートアップ3社を紹介します。アナログな慣習にデジタル技術で挑み、業務効率化や社会課題の解決に取り組む彼らの取り組みを見ていきましょう。

本記事で取り上げるスタートアップ企業は以下の3社です(各社の詳細な個別記事も公開されていますので、興味があれば併せてご覧ください)。

  • 株式会社カナリー(部屋探しアプリ「CANARY」で不動産仲介をDX)
  • 株式会社Penetrator(衛星データ×AIで空き家問題に挑む不動産DX企業)
  • TRUSTART株式会社(不動産ビッグデータで業界の非効率を打破するDXベンチャー)

株式会社カナリー:部屋探しを変える不動産テック企業

(出典:https://store.f-mikata.jp/canary/

株式会社カナリー(以下、カナリー)は、2018年創業の「不動産テック」スタートアップです。日常生活で誰もが経験する賃貸の部屋探し不動産仲介の分野で、IT技術による便利化・効率化を目指しています。同社は「もっといい『当たり前』をつくる」というミッションを掲げ、不便が当たり前だった不動産探しに最新テクノロジーで変革を起こそうとしています。スマートフォンのアプリやインターネットを活用し、部屋を探すユーザー不動産会社をシームレスにつなぐサービスを提供することで、これまでの非効率を解消しています。

カナリーが提供する主力サービスは、大きく分けて 消費者向け不動産会社向け の2種類です。

(出典:https://corp.canary-app.jp/about.html
  • 「CANARY(カナリー)」部屋探しアプリ「CANARY」は、賃貸・売買物件を希望条件で手軽に検索できる一般ユーザー向けのスマートフォンアプリです。直感的な操作性と洗練されたデザインで、モバイル世代にも使いやすいユーザー体験を提供しています。最大の特長は情報の透明性で、「おとり物件」や重複掲載を徹底的に排除。正確かつ最新の物件情報を提供することで、複数の店舗を回る手間なく、効率的な部屋探しを実現しています。
  • 「CANARY Cloud(カナリークラウド)」「CANARY Cloud」は、不動産仲介業者向けのSaaS型クラウドサービスです。営業・接客プロセスを支援するCRM(顧客管理システム)や商談支援ツールを提供するため物件対応や顧客情報の一元管理が可能です。これにより、紙や電話に頼っていた業務をデジタル化し、提案や追客の自動化、情報共有の効率化の実現が可能なため、業務負担を軽減しながら、成約率の向上にも貢献しています。

CANARYとCANARY Cloudの導入により、ユーザーは希望に合った物件を手軽に探せるようになり、不動産会社は問い合わせ対応や顧客管理の負担を軽減しながら業務効率を高められるなど、双方に大きなメリットが生まれています。実際、2019年の提供開始以降、CANARYは累計80万ダウンロードを達成し、アプリ評価は★4.7と高水準。使い勝手の良さが広く支持されていました。さらに、2024年にはクレディセゾン10億円規模の資本業務提携を締結し、オンライン決済など新サービスの展開も進行中です。創業から数年で大手企業との連携を実現したカナリーは、不動産DXをリードする存在として今後の成長が期待されます。

詳しく知りたい方はこちらの個別記事もご覧ください。

株式会社Penetrator:宇宙データで不動産DXに挑戦

(引用:株式会社Penetrator 公式HP)

株式会社Penetrator(ペネトレーター)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)発のスタートアップで、「宇宙から不動産の課題を解決する」というビジョンを掲げています。日本が直面する空き家問題や非効率な不動産取引の慣習に対し、人工衛星から得られる膨大な衛星画像データAI(人工知能)技術を組み合わせて革新的なソリューションを提供している不動産DX企業です。

(引用:株式会社Penetrator 公式HP)

株式会社Penetrator(以下、Penetrator)が提供する不動産探索プラットフォーム「WHERE(ウェア)」は、衛星画像とAI解析を組み合わせ、世界中の物件候補をリモートで瞬時に特定できる革新的なサービスです。従来は現地調査が必要だった土地や建物の情報を、人工衛星データをもとにワンクリックで取得可能にし、不動産の仕入れ業務を大幅に効率化、不動産DXを加速させています。2023年のベータ版提供開始からデベロッパー企業への導入が進み、正式リリースからわずか9ヶ月で月次売上1億円を突破しました。衛星データを駆使した「宇宙からの物件探索」という独自のアプローチは、企業や自治体からも注目される存在となっています。

Penetratorは、深刻化する空き家問題にも先進技術で挑んでいます。自治体向けに開発した空き家特定システムでは、衛星画像と水道使用データを組み合わせ、居住実態のない物件をAIで自動検出することが可能です。建物の老朽化や利用状況を数分で高精度に分析でき、空き家対策業務を大幅に効率化します。「鳥の目(衛星)」「モグラの目(地上インフラ)」を融合した革新的な手法として高く評価されています。

こうした技術とビジョンが注目され、同社は2025年に約5.5億円の資金調達を達成しました。非効率な不動産情報流通が残る国内市場において、“宇宙×不動産”というユニークな切り口で、不動産テックの可能性を広げ続けています。

詳しく知りたい方は、こちらの個別記事もご覧ください。

TRUSTART株式会社:不動産ビッグデータで業界革新

(引用:公式HP

TRUSTART株式会社(以下、TRUSTART)は、「人とデータで全てを可能にする」を理念に、不動産業界にビッグデータとAIを活用した変革をもたらすスタートアップです。社名には「信頼(Trust)からスタートする」という想いが込められており、テクノロジーに加え、業界経験豊富なコンサルタントの知見を融合させることで、不動産業界の構造的な非効率に根本から向き合っています。代表の大江洋治郎氏は大手信託銀行出身で、社内ベンチャーから本格展開へとスピンアウト。不動産×テクノロジー×人の力で、社会課題の解決に挑んでいます。

(引用元:公式HP

TRUSTARTは、全国2億件超の不動産ビッグデータを収集・管理し、誰もが簡単に活用できるプラットフォームを開発しています。中でも「R.E. DATA Plus」は、地図上のクリック操作で登記情報を即座に取得できる画期的なサービスで、従来は手間と時間がかかっていた不動産調査を大幅に効率化しました。検索機能も充実しており、不動産会社はもちろん、金融機関や建設業など幅広い業種で活用されています。

加えて、同社はデータ活用のコンサルティングも提供しています。不動産・金融・インフラ分野に精通した専門チームが、業務改善や新規事業開発を支援しています。テクノロジーと人の知見を組み合わせたこのハイブリッド型の支援体制が、不動産業界における現場密着型のDX推進として高く評価されています。

TRUSTARTの不動産データ基盤は、業界の枠を超えて多様な分野で活用が進行中です。例えば、商業施設の出店戦略金融機関による不動産担保評価などへの応用により、データに基づく意思決定を支援情するなど、情報の非対称性を解消し、市場の透明性と効率性を高める取り組みを推進しています。

実際に、センチュリー21や信託系ローンファイナンス会社との提携を通じて、業界横断型のDX支援にも着手しました。累計約6億円の資金調達(うち1.8億円はデットファイナンス)を実現し、事業拡大への投資も積極的に進めています。今後のさらなる展開が期待される企業です。

詳しくは知りたい方はこちらの個別記事もご覧ください。

まとめ:不動産DXの未来とスタートアップの役割

日本の不動産業界はアナログな慣習が根強く残る分野ですが、今回紹介した3社はいずれも先進的なテクノロジーで、それぞれ異なる切り口から、不動産テックの可能性を広げています。

不動産テック市場は国内外で急成長しており、日本でも2025年には1兆円規模に達すると見込まれています。大手企業の参入や政府の後押しも進む中、柔軟な発想と高度な技術を持つスタートアップの存在感はますます高まるでしょう。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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