最終更新日 25/06/04
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iPS細胞で透析ゼロを目指す!リジェネフロ株式会社の挑戦

ヘルスケア
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(引用元 : PRTIMES

慢性腎臓病や透析患者の増加、高齢化に伴う在宅医療・介護の需要拡大は、日本社会全体の重要課題となっています。こうした背景の中で、医療・バイオとデジタル技術の融合による新しい解決策が求められています。

リジェネフロ株式会社(以下リジェネフロ)は、iPS細胞を活用した再生医療と、SaaSを用いた介護支援サービスの両面からアプローチするスタートアップです。腎疾患の根本治療と、介護現場の業務効率化を同時に目指すという独自のビジョンで注目を集めています。

創業の原点には、「重い腎疾患を抱える患者に、従来とは異なる希望を届けたい」という強い想いがあります。代表の森中紹文氏は、製薬企業での研究開発と、ベンチャーキャピタルでの投資経験を経て、「研究成果を社会実装する側に立ちたい」と考え、2023年にCEOへ就任。技術と経営の両視点を持ち合わせた異色のリーダーとして、リジェネフロの成長を牽引しています。

本記事では、株式会社リジェネフロの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。

事業内容:腎疾患治療と介護支援の両輪展開

再生医療事業(RN-032)

(引用元 : 公式HP

リジェネフロ株式会社が取り組むRN-032は、iPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞(iNPC)を活用し、慢性腎臓病(CKD)の新しい治療法を目指す再生医療プロジェクトです。

腎臓は、体内の老廃物や余分な水分をろ過・排出する重要な臓器であり、その機能単位である「ネフロン」は、糸球体と尿細管で構成されています。CKDはこのネフロンが障害され、徐々に腎機能が失われていく病気ですが、現行の治療法(透析・腎移植など)では根本的な回復が難しいのが実情です。

RN-032では、iPS細胞から分化誘導したネフロン前駆細胞を、腎臓とその被膜の間に特殊なデバイスで投与します。この細胞が腎臓内で栄養因子を放出し、損傷部位の修復を促す「パラクライン効果」により、腎機能の改善が期待されています。

マウスなどの小動物モデルではすでに有効性が確認されており、現在は人への臨床応用に向け、細胞の純化や培養、製造スケールアップのプロセス構築が進められています。これらは日機装株式会社をはじめとする専門企業と連携しながら進行中です。

リジェネフロはこの技術によって、将来的には透析導入を防ぎ、慢性腎臓病患者の生活の質を大きく改善できることを目指しています。

新薬開発(RN-014)

(引用元 : 公式HP

RN-014は、リジェネフロ株式会社が開発中の、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する新しい経口治療薬です。

ADPKDは、腎臓に多数の嚢胞(液体のたまった袋)が発生・増大し、腎機能が徐々に低下する進行性の遺伝性疾患です。70歳までに約半数の患者が透析や腎移植を必要とする末期腎不全に至ると言われています。現在唯一承認されている治療薬「トルバプタン」は進行を遅らせる効果はあるものの、根本的な治療法とは言えません。

リジェネフロは、ADPKDの原因であるPKD1遺伝子に変異をもつヒトiPS細胞を用い、疾患モデルを再現することに成功しました。このモデルをもとに、既に白血病治療で承認されている「RAR(レチノイン酸受容体)作動薬」を新たな治療薬候補として発見し、RN-014として開発を進めています。

2023年12月には、日本国内で第IIa相臨床試験(少人数による有効性・安全性確認試験)を開始しました。対象は、病状進行リスクが高く、トルバプタンによる治療が難しい、あるいは希望しないADPKD患者です。被験者の募集は段階的に行われ、安全性と忍容性が確認され次第、本格的な臨床試験が進められます。

RN-014は、ADPKDの新たな治療選択肢となる可能性があり、患者や医療関係者から大きな期待が寄せられています。既存薬の再活用により、実用化までの時間やコストを抑えられる点も強みです。

訪問介護看護サービス

京都市を中心に、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスも提供しています。看護師や介護士が1日数回訪問し、透析患者や医療依存度の高い高齢者へのケアを行います。

自治体や医療機関と連携しながら、在宅での自立生活をサポートしており、地域包括ケアの一翼を担っています。

資金調達:シリーズBで累計44億円

(引用元 : PRTIMES

リジェネフロは、創業以来順調に資金を調達しています。2020年のシード期には約4.6億円、2022年のシリーズAで約13.9億円を調達。さらに2024年にはシリーズBで25億円を調達し、累計調達額は約44億円にのぼります。

出資者には、三菱UFJキャピタル、京大イノベーションキャピタル、JAFCO、エムスリー、富士フイルム、島津製作所など、国内外の有力なVCや大手企業が名を連ねています。調達資金は主に新薬・細胞治療の開発費や臨床試験、SaaS開発体制の強化に使われています。

【市場規模:腎疾患治療と介護ICTに高成長性】

日本には約1,330万人の慢性腎臓病患者がいるとされ、そのうち33万人以上が透析治療を受けています。また、高齢者の増加により、在宅医療・介護のニーズも急増しています。

iPS細胞を活用した再生医療は、根本治療が乏しい腎疾患領域で期待されており、国内外から注目されています。さらに、介護現場のICT化を進めるSaaS市場も拡大傾向にあり、PORTALLのようなクラウドサービスの導入ニーズは今後も高まると見られます。同社のように、医療と介護、テクノロジーを横断的に結びつけるスタートアップは、日本だけでなくグローバルでも希少な存在です。今後の事業成長と社会実装に注目が集まっています。

【会社概要】

  • 会社名:リジェネフロ株式会社
  • 所在地:〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46-29 京都大学 医薬系総合研究棟
  • 海外拠点所在地:214 Homer Ave, Palo Alto, CA 94301, USA
  • 設立年月日:2019年9月20日
  • 代表者名:森中紹文
  • 資本金:32億7,615万6,900円(資本準備金含む)
  • 公式HP:https://www.regenephro.co.jp/

【まとめ】

リジェネフロ株式会社は、医療とITの融合によって腎疾患と介護の課題に正面から挑むスタートアップです。再生医療の臨床応用と、在宅ケア支援SaaSの展開を両軸に据えた事業戦略は、社会的な意義と成長性を兼ね備えています。

今後、同社が研究開発や実装フェーズをさらに前進させることで、腎疾患に悩む多くの人々やその家族に新しい選択肢を提供することが期待されます。同社のように、医療と介護、テクノロジーを横断的に結びつけるスタートアップは、日本だけでなくグローバルでも希少な存在です。今後の事業成長と社会実装に注目が集まっています。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。株式会社リジェネフロのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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