
日本の農業は、少子高齢化による担い手不足や気候変動、農地の減少といった課題に直面しています。こうした状況を打開するカギとして注目されているのが、「アグリテック(AgriTech)」です。
これは「Agriculture(農業)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉で、IoT・AI・データ分析・環境制御などのテクノロジーを活用し、農業の効率化・高収益化・持続可能化を目指す取り組みを指します。今や日本だけでなく海外でも人口増加や気候変動などの問題から注目を集めており、投資市場としても成長を見せています。
本記事では、アグリテック領域で革新的な挑戦を続ける以下の4社をご紹介します。それぞれが異なるアプローチで、農業の未来を切り拓いているため、ぜひ参考にしてください。
- サグリ株式会社――衛星データで耕作放棄地ゼロへ挑む
- 輝翠TECH株式会社(Kisui Tech)――ロボットで農業を効率化
- 株式会社フェイガー――カーボンクレジットを生成・販売
- Arctic Farming――宇宙農業技術で屋内農業を主流に
サグリ株式会社――衛星データで耕作放棄地ゼロへ挑む

サグリ株式会社は、衛星データとAIを活用して農地の可視化と土壌解析を行うアグリテック企業です。農業従事者が抱える「土地の状態がわからない」「生産効率が上がらない」といった課題を、リモートセンシング技術で解決します。
同社が提供するプラットフォームでは、衛星画像から農地の肥沃度や作物の生育状況を解析でき、スマート農業への移行を後押し。さらに、データに基づく農地評価は、金融機関との連携によるアグリファイナンス支援にもつながっています。サグリの技術は、農業の生産性向上だけでなく、地球規模の食料課題の解決にも貢献。日本発の衛星アグリテックとして、海外展開にも意欲的です。
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輝翠TECH株式会社(Kisui Tech)――ロボットで農業を効率化

輝翠TECH株式会社は、AIを活用した農作業用ロボット、Adam(アダム)を開発しています。
従来、農家は運搬や草刈り、農薬・肥料散布などで複数の機械を購入しなければならず、使用頻度の低い機械でも高額なコストが発生していました。しかし、Adamは、こうした機能が集約されているため、草刈りや農薬散布といった負担の大きい作業にも対応可能で、コストの削減と農作業の効率化が期待できます。
現在、人口減少と高齢化の影響を受け人手不足が大きな問題となっている農業業界において、Adamの存在はそのような問題を解決する革新的なソリューションとなるでしょう。
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株式会社フェイガー――カーボンクレジットを生成・販売

株式会社フェイガーは、農業由来のカーボンクレジットの生成と販売を行うスタートアップです。
農家と協力し、脱炭素農業によって削減・吸収されたCO₂量を「カーボンクレジット」として可視化・取引可能にすることで、環境価値を創出しています。フェイガー独自のアプリを活用すれば、クレジットの売買手続きを簡略化でき、農家の収益向上と企業の環境貢献の両立が実現可能です。2025年1月にはシリーズAラウンドで11.7億円を調達し、ベトナムやフィリピンなど海外市場にも展開を進めています。
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Arctic Farming――宇宙農業技術で屋内農業を主流に

フィンランド発のスタートアップ「Arctic Farming(アークティックファーミング)」は、宇宙農業技術を応用した屋内栽培システムで、食糧生産の未来を切り拓く企業です。
同社の主力製品「HERBY」は、冷蔵庫サイズのスマート農業器具で、NASAの研究に基づくクローズドループ灌漑やAIによる生育データ管理を採用しており、水使用量を95%削減しながら高栄養な作物を自動で育成できます。2019年に兄弟で創業し、2023年には15万ユーロのシード資金を調達。垂直農法市場の成長を背景に、都市型・持続可能な農業の実現を目指しています。
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まとめ
今回は、アグリテック分野で注目される4社をご紹介しました。それぞれの企業は、データ活用、AI、環境制御、スマート農業といった異なる技術領域で、共通して「持続可能な農業の実現」を目指しています。
アグリテックは今後、単なる効率化技術にとどまらず、食料安全保障・地域創生・環境問題への解決策として、より社会的意義を持つ分野へと発展していくでしょう。
New Venture Voiceでは、今後も国内外の革新的なスタートアップを紹介していきます。
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