最終更新日 25/10/15
国内スタートアップ

へその緒由来の再生医療で難病治療に挑む|ヒューマンライフコードの革新と7.7億円調達

サステナブルヘルスケア医療
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(引用:公式HP

高齢化が進む社会において、医療の質や治療の選択肢の広さは、誰もが関心を持つ重要なテーマです。 従来の医療では対応しきれなかった病気に対して、前向きな解決策が求められています。

そんな中、廃棄されることが多かった「臍帯(へその緒)」から、未来の医療を切り開く可能性を見据え、再生医療の最前線で挑戦を続けるスタートアップがあります。 それが、今回ご紹介するヒューマンライフコード株式会社(以下、ヒューマンライフコード)です。 代表の原田雅充氏は、アメリカでの勤務中に、胎盤由来の間葉系間質細胞が小児患者の治療に繋がる現場を目の当たりにし、この細胞治療を社会に広めたいという強い思いを抱きました。後にMBAを取得し、事業計画を練り上げ、東京大学医科学研究所との連携を経て、2017年4月にヒューマンライフコード株式会社を設立。日本発の再生医療で、世界の医療に貢献することを目指しています。

本記事ではその事業内容や資金調達について詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

事業内容:臍帯由来細胞医薬品の開発・製造・販売

ヒューマンライフコード株式会社は、主に臍帯(へその緒)から抽出される間葉系間質細胞(UC-MSCs)を再生医療等製品の開発、製造、販売を計画しています。特に、免疫・炎症性疾患の中でも、医療ニーズの高い難治性疾患を対象とした研究開発を積極的に進めているのが特徴です。

間葉系間質細胞について

MSCs
(引用:公式HP

間葉系間質細胞(MSCs)は、人間の体内に広く存在します。炎症や組織傷害のある部位へ遊走し、免疫調整や組織修復に効果を発揮することが知られています。これらの効果は、MSCs自体の働きに加え、MSCsから分泌されるサイトカインやエクソソームを介した作用もあると考えられています。

臍帯(へその緒)を利活用する利点

(引用:公式HP

妻帯を活用する理由としては、以下の3点があげられます。

  • ドナーにも環境にも優しい
    臍帯は母子の体に侵襲することなく得られるものであるため、体を傷つけることがありません。また、もともとは廃棄されていたもののため廃棄物削減にもつながります。
  • 細胞製品として製造しやすい
    臍帯には高い均質性と増殖性があるため、製品を製造しやすい点が大きな利点です。
  • 持続・安定的に確保できる
    臍帯は国内で調達可能で、備蓄可能なため確保するうえで問題があまりありません。

独自の一気通貫サプライチェーン

(引用:公式HP

ヒューマンライフコードは、東京大学医科学研究所附属病院臍帯血・臍帯バンク (IMSUT CORD) による臍帯(へその緒)の分譲、東京大学医科学研究所との共同研究、ロート製薬株式会社、アルフレッサ株式会社への業務委託、持田製薬株式会社との共同事業化契約等、外部機関、企業とのパートナーシップのもと、原材料である臍帯(へその緒)の入手から細胞製品の製造、施設への物流に至るまで、ヒューマンライフコードが一気通貫のサプライチェーンを統括管理・運営する体制を構築しています。

資金調達:総額約7.7億円の資金調達を実施

ヒューマンライフコードは、2024年度のエクステンションラウンドでの調達分を合わせて2025年9月末までに総額約7.7億円の資金調達を実施しました。今回の調達は、既存株主を中心に、複数の事業会社、ベンチャーキャピタル、個人投資家、経営陣からの払込が完了したものです。

 これら資金を活用し、現在準備中の造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症(NIPCs)を対象とした第Ⅲ相臨床試験の開始を確実なものとし、さらには、日本、米国を中心とするグローバルの国・地域におけるUC-MSCs供給体制の確立のため、パートナー企業らと共に臍帯原料の調達からマスターセル、プロダクトセルの製造、供給に至るまでのサプライチェーンをより強固なものとするべく努めていくと発表しています。

市場規模:拡大する再生医療市場とヒューマンライフコードの可能性

(引用:IMARC Group

再生医療は、病気や事故で失われた組織や臓器を修復・再生し、機能を回復させることを目指し、21世紀の医療における最重要分野の一つです。世界的に見ても、この市場は目覚ましい成長を遂げており、その中でも細胞治療は特に注目を集めています。

急成長を続ける再生医療市場

再生医療の世界市場規模は、今後も飛躍的に拡大すると予測されています。IMARC Groupの調査によると、日本の再生医療市場規模は2024年に85億米ドルに達しました。今後は、2025年から2033年の間に11.23%の成長率(CAGR) を示し、2033年までに市場が221億米ドルに達するとの予想です。

HLCが切り拓く市場内での独自ポジション

ヒューマンライフコード株式会社は、この急成長する再生医療市場において、国産の臍帯を原材料とする細胞医薬品の安定供給プラットフォームを展開し、非常に先駆けて製品化を目指す点で、ユニークで重要な立場を確立しています。

さらに、今後は難病での垂直展開だけでなく、慢性炎症や加齢性疾患、例えばサルコペニアなど、社会課題解決に大きな影響を与える疾患への水平展開も視野に入れています。これにより、ただ治療だけでなく、健康寿命の延長という大きなテーマにも貢献できる可能性を秘めているのです。

臍帯という、これまで未活用だった資源を最大限に生かし、高度な技術力と安定供給体制を構築することで、ヒューマンライフコードは再生医療市場の未来をリードする存在となることでしょう。

会社概要

  • 会社名:ヒューマンライフコード株式会社
  • 所在地:東京都中央区日本橋堀留町一丁目9番10号日本橋ライフサイエンスビルディング7 5階
  • 設立年月日:2017年4月5日
  • 代表者名:代表取締役社長 原田 雅充
  • 公式HP URL:https://humanlifecord.com/

まとめ

ヒューマンライフコード株式会社は、「つなぐ命のきずなつながる未来」という企業理念のもと、これまで治療が困難だった難病に苦しむ患者さんに、臍帯由来の再生医療という新たな希望を届けています。廃棄物とされていた臍帯に秘められた可能性を最大限に引き出し、高い増殖能力、への優れた蓄積性、低い免疫原性といった独自の技術力で、次世代の医療を創造しています。

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