最終更新日 25/12/18
国内スタートアップ

【AGRIST株式会社】農業ロボットとAIで「人手不足×高齢化」農業を変える

AIロボット農業
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(引用:公式HP

日本の農業従事者の平均年齢はおよそ67歳に達し、高齢化・担い手不足が加速しています。このような背景で、農業のデジタル化・省力化が急務となり、AIやロボット技術の導入が注目されています。
AGRIST株式会社はこの課題に対し、自動収穫ロボットやAI農業システムを開発し収穫作業の自動化や作業効率化を実現しようとしています。同社の技術は農業現場の生産性を向上し、日本の農業の持続可能性を高める可能性を秘めています。本記事では、株式会社AGRISTの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。

事業内容 ① AI搭載型自動収穫ロボットの開発・提供

(引用:公式HP

AGRISTの中核製品である自動収穫ロボットは、農業の収穫作業を大幅に省力化する画期的なロボットです。従来の大型多機能な農業ロボットとは一線を画し、AGRISTは「安価でシンプルなロボット」をコンセプトに開発を進めてきました。必要最低限の機能に絞りつつ性能を高めた設計とすることで、コストを抑えつつ信頼性を向上させ、世界に通用する農業ロボットの実現を目指しています。
最大の特徴は、ロボットが天井に張ったワイヤーやレールに吊り下がった状態でハウス内を移動する点です。この国際特許出願中の吊り下げ式構造により、デコボコした地面の影響を受けず安定して走行でき、効率的な収穫作業が可能になっています。実際の運用では10アール(1,000㎡)あたり1台のロボットを設置し、年間収穫量の約20%を自動収穫できる計算です。これはロボット導入によって農家の収益を向上させることを意味します。
また、収穫適期を逃さずタイミングよく収穫できるため、収穫遅れによる品質低下を防ぎつつ、後続の果実へ適切に栄養を行き渡らせる効果も期待できます。操作面でも、ロボット本体の「自動収穫」ボタンを押すだけで収穫を開始でき、スマホやPCから遠隔操作することも可能なため、ITに不慣れな高齢農家でも扱いやすい設計です。初期導入時に若干のコストはかかるものの、パート人件費の削減による人件費圧縮効果で投資回収が見込め、結果として農家の収益性が改善します。

事業内容②:スマート農業システム 「AGRIST Ai」

(引用:公式HP

AGRISTが開発する「AGRIST Ai」は、農作物の収量予測や栽培管理を支援する次世代スマート農業システムです。ビニールハウス内に設置した環境センサーや、収穫ロボットが撮影した作物の生育画像データをクラウド上でAI解析し、最適な栽培方法や収穫のタイミング、施肥・潅水計画を自動提案します。これにより新規就農者でも勘や経験に頼らず高度な栽培管理が可能となり、農家の負担軽減と収穫量・品質の向上、農業経営の最適化を実現します。

農業パッケージとしての提供

このAIシステムは現在、ビニールハウス一棟単位の「農業パッケージ」として提供されています。AGRISTが設計した最適環境のハウスを導入し、センサー類とともにAGRIST Aiを稼働させることで、初心者でも簡単に高効率な栽培をスタートできる仕組みです。実際に、2023年に鹿児島県東串良町に建設した自社農場ではAGRIST Aiの導入により28.6%以上の収益増加を見込んでいます。また宮崎県新富町のハウスでは、農業未経験者がIoTを活用して県指標比1.5倍の収穫量を達成することにも成功しました。これらの成果は、AGRIST Aiによるデータ駆動型の栽培支援が実際に生産現場で効果を発揮していることを示しています。

資金調達:シリーズBラウンドでの資金調達を実施

AGRISTは複数のシリーズBラウンドで資金調達を実施し、事業拡大を図っています。

  • 2024年10月NIPPON EXPRESS ホールディングスからシリーズB資金調達
    AIによる収量予測やスマート農業による物流効率化を目的とし、農業DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速。
  • 2025年9月グローバル・インフラ・マネジメント株式会社からのシリーズB追加資金調達
    プロジェクトファイナンス型スキームを構築し、自治体や大学とも組んで廃校・耕作放棄地再生など地域課題解決に注力する計画が示されています。

資金調達を通じ、AGRISTは農業ロボットの量産体制の強化、金融スキームの標準化による導入負担の軽減、自治体連携による地域農業の再生など、多方面での拡大を目指しています。

市場規模

農業分野では、世界的な人口増加や食料需要の拡大に加え、各国で進行する農業従事者の高齢化・人手不足を背景に、農業の自動化・デジタル化(スマート農業)への関心が急速に高まっています。その中核を担うのが、AGRIST株式会社が注力する農業ロボットおよびAI農業領域です。

世界の農業ロボット市場

(引用:Grand View Research)

Grand View Researchによると、世界の農業ロボット市場規模は2024年時点で約147億米ドルと推定されており、2030年には約480億米ドル規模まで成長すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は約23%と非常に高く、製造業や物流分野と並ぶ成長市場と位置づけられています。
特に収穫ロボットは、播種・施肥・防除といった工程と比べて自動化が難しい領域である一方、人手依存度が高いため、今後の技術進展による市場拡大余地が大きい分野とされています。

スマート農業/AI農業市場の拡大

(引用:Grand View Research)

農業ロボットを含むスマート農業市場全体で見ると、その成長性はさらに顕著です。Grand View Researchのレポートでは、世界のスマート農業市場規模は2024年時点で約253億米ドル、2030年には約547億米ドルに達すると予測されており、CAGRは約13〜14%で推移すると見込まれています。
AIやIoT、データ解析を活用した農業は、単なる省力化にとどまらず、収量予測や品質安定、経営判断の高度化といった付加価値を生み出す点が評価され、投資対象としても注目を集めています。

日本国内市場

国内市場では、農業のスマート化に関連する機器・システムの市場規模が2024年度に約201億円に達し、前年比13.6%増となりました。さらに2030年にはその約3倍となる539億円規模に拡大すると予測されており年平均成長率(CAGR)は10%以上に上る計算です。

AGRISTは、施設園芸×収穫工程という市場の中でも、「現場実装を前提としたロボット設計」「AIによるデータ活用」を両立するポジションを確立しています。単体ロボットに留まらず、データを活用したスマート農業プラットフォームへと展開している点は、市場拡大の波に乗る上で大きな強みと言えるでしょう。

会社概要

会社名:AGRIST株式会社
所在地:宮崎県児湯郡新富町富田東1丁目47番地1
設立:2019年10月24日
代表者:代表取締役 齋藤潤一、秦裕貴
公式HPhttps://agrist.com/

まとめ

AGRIST株式会社は、AIとロボットを融合したスマート農業技術で、日本の農業が抱える人手不足・生産性課題を革新的に解決しようとするスタートアップです。自動収穫ロボットやデータ解析AI「AGRIST Ai」など、現場ニーズに即したプロダクトを通じて、農作業支援から収益向上まで一貫した価値を提供しています。市場も急成長を続けており、AGRISTが国内外で存在感を高める可能性は極めて高いと言えるでしょう。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。AGRIST株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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