
建設業界では高齢化に伴う人手不足が進行し、労働負荷の軽減が喫緊の課題となっています。その解決策として注目されるのが建設用3Dプリンターです。コンクリート構造物を現場で自動造形できるこの技術により、施工の飛躍的な効率化と省人化・工期短縮・安全性向上が期待されています。
この革新的技術で業界を変えようとしているのが株式会社Polyuseです。同社は国内唯一の建設用3Dプリンタメーカーとして、ハード・ソフト・材料を自社開発し、導入支援まで一貫提供しています。
本記事では、株式会社Polyuseの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。
事業内容:建設用3Dプリンタ『Polyuse One』の統合ソリューション
Polyuse One – 現場施工を変える国産3Dプリンター
Polyuse Oneは現場に持ち込んで使用できる国産初の建設用3Dプリンターです。株式会社Polyuseは当初、3Dプリンターで住宅を建築する構想から事業を模索していましたが、建築基準法などの壁に直面したため、より人手不足の深刻な土木分野に軸足を移した経緯があります。

実際に2022年の初適用以降、公共インフラ工事を含め全国で200件以上の施工実績が積み重ねられており、従来は熟練技能者に頼っていた複雑な形状の構造物も3Dプリンタで造形可能となりました。
その結果、災害復旧現場や人手不足に悩む施工現場で生産性向上や工期短縮につながる技術として注目されています。
この大型プリンターを使えば、コンクリート構造物をその場で直接造形できるため、型枠工事など人手のかかる作業の自動化が可能になります。Polyuse Oneは2025年9月に正式発売され、価格は1台約3,300万円とされています。同年末時点で既に20台が納品済みで、100台以上の受注残を抱えるなど、市場から大きな反響を得ています。

ワンストップ提供による導入支援
Polyuseの強みは、ハードウェア・ソフトウェア・材料を一体で開発・提供するワンストップサービスにあります。建設用3Dプリンタ本体(Polyuse One)だけでなく、その操作を行うソフトウェアや専用のモルタル(インク)材料まで含めてパッケージ化しており、導入企業は煩雑な手続きを経ることなく新技術を活用できます。さらに、社内のシステムには全国各地で蓄積した200件超の施工データがデータベース化されており、過去の事例に基づく最適な施工方法や効率的な運用ノウハウを共有することで、新規ユーザーの円滑な立ち上げを支援しています。
このように開発から運用支援まで包括的に手掛ける企業は国内でも他になく、Polyuseは建設業界向け3Dプリンティング分野で独走的な地位を築いています。
国土交通省から高い評価をPolyuse one

Polyuseは令和4年度国土交通省インフラDX大賞で「優秀賞」を受賞しました。
インフラDX大賞は、建設現場の生産性向上に関する好事例の横展開に向けて、平成29年度から実施されています。
当初は「i-Construction大賞」という名称でしたが、令和4年度から「インフラDX大賞」に改称され、新たにインフラスタートアップの取り組み支援を目的に、「スタートアップ奨励賞」を設置しました。
そしてPolyuseが開発する3Dプリンタを活用した施工技術が、2023年に国土交通省の新情報技術システムNETISに登録されました。
このNETISは国土交通省が新技術の活用のために、新技術に関わる情報の共有及び提供を目的として整備したデータベースです。政府が工事の効率化を推進するために推奨する技術が掲載されており、新技術の活用を提案し実際に工事で活用された場合は、工事成績評定の加点対象となります。

資金調達:シリーズBで約27億円を調達

同社は創業から段階的に資金調達を実施し、研究開発を加速してきました。
2023年2月、シリーズAラウンドで約7.1億円の第三者割当増資を実施し、リード投資家のユニバーサルマテリアルズインキュベーター(UMI)やSBIインベストメントなどが出資しました。
続いて2025年12月3日には、シリーズBとして約27億円の大型調達を発表しています。今回のラウンドではWiL(World Innovation Lab)とグロービス・キャピタル・パートナーズが共同リードを務め、UMI、SBIインベストメント、大和ハウスベンチャーズなど複数の投資家が参加しました。調達資金は研究開発基盤の拡充および事業体制の強化に充てられ、建設用3Dプリンタ技術の社会実装スピードを一層高める方針です。
市場規模
急成長する建設用3Dプリンター市場
世界の建設用3Dプリンター市場は今後10年で飛躍的な拡大が見込まれています。Global Market Insightsの予測では、2032年までに市場規模は約1,039億ドル規模に拡大し、年平均成長率は約59.6%に達するとされています。このように建設3Dプリンターが爆発的な市場拡大を遂げる可能性を物語っています。
こうした急成長の原動力となっているのは、建設業界における省人化ニーズと持続可能性への関心です。3Dプリンター施工は高騰する人件費や材料ロスの削減に寄与し、複雑なデザインの建築も可能にするため、世界中で採用が加速しています。一方で、導入にはプリンター設備への高額な初期投資や技術者の育成が必要となり、一部地域では規制面の課題も残ります。例えばドバイでは2030年までに新築建物の25%を3Dプリンター建設とする目標が掲げられるなど、官民を挙げた積極的な取り組みが世界各地で進められています。
日本国内の市場とPolyuseの立ち位置
日本においても、建設用3Dプリンター市場はまだ黎明期ながら着実に動き出しています。
2022年には国土交通省管轄の公共工事で初めて3Dプリンタ施工が採用され、Polyuseは国内初となる建築許可を取得した3Dプリンタ建築物の施工にも成功しました。また同社は全国各地で実証実験を重ね、その実績を踏まえて土木学会と共同で3Dプリンター施工のガイドライン策定にも参画しており、国内標準の確立に貢献しています。
こうした中、大和ハウス工業など大手企業も出資や協業を通じて建設DXを後押ししており、建機レンタル大手の西尾レントオールはPolyuse Oneのレンタルサービス提供を開始しました。これは施工現場への新技術導入ハードルを下げ、深刻な人手不足解消や工期短縮、カーボンニュートラル推進につながる取り組みです。Polyuse自身も2025~26年度で全国100台のプリンター設置を計画しており、国内市場でも3Dプリンター施工が今後一気に普及する可能性が高いでしょう。
会社概要
- 会社名: 株式会社Polyuse(ポリウス)
- 所在地: 東京都港区浜松町2-2-15 浜松町ダイヤビル2F
- 設立: 2019年6月
- 代表者名: 岩本 卓也・大岡 航(共同代表取締役/共同創業者)
- 公式HP: https://polyuse.xyz/
まとめ
Polyuseは建設用3Dプリンターという先端技術で、建設業界の喫緊の課題に挑む気鋭のスタートアップです。独自のワンストップソリューションと確かな実績によって、業界内で存在感を示しています。
巨額の資金調達を経て研究開発や人材拡充が加速する今、同社の技術は国内インフラ維持管理や災害復旧の現場で今後さらに重要な役割を担っていくでしょう。人とテクノロジーの“共存施工”というビジョンのもと、今後の事業拡大にも大きな期待が寄せられています。
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