
現代では、どこへ行くにも、何をするにも、事前にネットで調べ、スコアや口コミを確認してから行動することが当たり前となっています。このように、効率化や失敗しないことが優先される一方で、ふとした瞬間に訪れる「偶然の出会い」や、自分の直感に従って動く「自由な喜び」は、少しずつ失われているのかもしれません。
そのような時代の中で、本田技研工業株式会社 デジタルラボ(以下、Honda)から生まれたのが、車のナビを使って飲食店を探すことができるアプリ「EatMo(イートモ)」です。同サービスは、単なる飲食店検索ツールではなく、その時、その場所、その人たちだからこそ生まれる「新しい可能性の広がり」を目指しています。
今回は、開発者であるHondaの佐藤貴亮氏とドライブをしながら実際にEatMoを使用する様子を見せていただき、その後のインタビューでEatMo誕生の背景にある想いやEatMoのユニークな特徴、さらに佐藤氏が掲げる「地域のお店に対する想い」などについて詳しくお話を伺いました。
EatMoとは?――「Eat×Mobility」で生み出す新体験
―――まず、「EatMo」がどのようなサービスなのか、具体的に教えてください。
一言で言えば、ナビを使って、みんなで楽しく簡単にお店を探せるアプリです。アプリを起動すると、今いる場所の周りにあるお店がナビ画面にパッと飛び込んできて、直感的に「美味しそう」と感じるお店をみんなで会話しながら選べます。
―――「探す」という行為そのものが、すでに旅の始まりのようですね。
そうなんです。しかも選んだお店はそのままナビで目的地として設定できて。普段なら通り過ぎてしまうような場所へ、足を運ぶきっかけにもなるし、「お店を選ぶ時間」そのものを楽しむこともできます。EatMoを使うと普段のドライブがもっと楽しくなります。
―――「EatMo」というネーミングの由来はどのようなものでしょうか。
EatMoという名前は、「Eat(食)」と「Mobility(移動)」を繋ぐという意味を込めて名付けました。それだけではなく、日本語の「いいとも(肯定)」「いいと思う」や、英語の「Eat more」といった、ポジティブな意味を込めています。EatMoを通して、車でドライブに出かけた時の新しい出会いや、楽しい時間を提供できればと考えています。

―――Hondaで、このサービスを立ち上げた背景にはどのようなビジョンがあったのでしょうか。
根底にあるのは、Hondaの掲げる「移動の喜び」と、私が「好きなこと」の重ね合わせです。基本的に食い意地が張っており、食べたり飲んだりが好きなので、「食と移動が交われば、もっと面白い世界がつくれるはず」という直感があり、過去にも何度も新しい企画を提案してきました。
―――個人の想いが、プロジェクトを動かす原動力に?
そうですね。創業者・本田宗一郎氏の言葉で「やりたいことをやれ」という言葉があるのですが、それが私の座右の銘でもあります。夢中になれることって、結果的に良いものを生みますし、周りや社会をもハッピーにできると思うんです。そんなHondaの良い文化を、私自身もこの新しい車の体験づくりを通じて、体現していきたいです。
―――ユーザーに提供したい体験はどのようなものでしょうか。
ユーザーの皆さんには単に「無難なお店」を選ぶだけで終わってほしくないという思いがあります。「心から楽しい本当のドライブとは何か?」を突き詰めて考えたとき、決められた計画通りに行動するだけでは、本当の意味での「移動の喜び」は味わえないと思うんです。
直感で選ぶ楽しさ――お店選びをコミュニケーションに
―――EatMoには具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
一番こだわったのは、「直感で決める楽しさ」です。今の時代、どこへ行くにも星の数やレビューを先に見てしまいますよね。私だってそうするときもあったりします。でもだからこそ、EatMoではあえてレビューを前面には出さないようにしています。評価ではなく、その瞬間のインスピレーションでお店を選べるようにしています。
―――直感によるインスピレーションを重視しているんですね。
そうですね。大切なのは、「その時、その場所、そのメンバー」という、ドライブだからこそ訪れるその瞬間と空間を最大限に楽しむことだと考えています。ふとした瞬間に素敵なお店と出会えることは、Hondaが大切にしている「自由な移動の喜び」にも通じますし、ユーザーにはEatMoを通してその喜びを提供していきたいですね。

―――「効率」とは真逆にある、アナログなワクワク感を感じます。
その通りです。例えば、上司との出張中に「ランチどうする?」となって、結局無難なチェーン店に落ち着く……なんてこと、よくあるじゃないですか。でも、そこでEatMoを使って直感で選んでみると、意外な化学反応が起きますよ。
『実は食の好みが似ていた』と気づいて会話が弾んだり、ノーマークだった店が驚くほど美味しかったり。そうした『予定調和を壊した先にある喜び』こそが、ドライブの醍醐味。お店選びをただの作業にせず、最高にハッピーなコミュニケーションの時間に変えていきたい。自分の感性で選ぶワクワク感を、ぜひ体感してほしいですね。
魅力ある店を残したい――EatMoにかける想いとは
―――デジタルなサービスでありながら、お話を伺っていると非常に「人」の手触りを感じます。地域のお店への想いについても聞かせてください。
先ほど飲むことも好きと言いましたが、バー巡りが趣味なんです。そこで出会うマスターの人柄や言葉にできない空気感がたまらなく好きで。ただ、それってどれだけ素晴らしいものでも、ネットの数字や文字だけでは伝わりきらないんですよね。
だからこそEatMoを通じて、そうした「地域に愛される店主の魅力」や「店舗の本来の魅力」をユーザーに足を運んでもらうことで伝えたいんです。そういったお店がこれからも長く愛され、活気ある経営を続けていけるような社会に貢献していけるよう頑張っていきたいです。
―――パートナーとなる飲食店とは、どのような関係を築いていきたいですか。
単に人を送り込み、数字としての集客を競うだけの「プラットフォーム」で終わりたくないと考えています。私たちの理想は、店舗の魅力を地域と社会に根差しながら共に育んでいけるパートナーシップを広げていくことです。誰かが作った一過性のブームに乗っかるのではなく、私たちのビジョンに共感してくれるお店と一緒に、「本当に良いもの」が、それを必要としている人たちにきちんと届く。そんな新しい文化を、共に創っていきたいと考えています。
EatMoが目指すゴール
―――最後に、今後の展望として「EatMo」が目指すゴールについてお聞かせください。
一言で言えば、「楽しさの最大化」です。
車は、どこへでも自由に行ける素晴らしいツールです。その「移動」の過程や目的地に、魅力的なお店との出会いがあり、ドライブの思い出や人と人との絆がもっと深まっていく。そんな楽しさをお店探しの側面から積み重ねていけるユニークな存在でありたいと思っています。
―――そのためにどのようにアプローチしていこうと考えていますか?
アプリをリリースしたての段階で、まだまだ至らないところがあるかと思います。アップデートを積み重ねながら、体験をより良くしていきたいと思います。その上で、同じ想いをもった企業やお店と繋がっていきたいと考えています。誰もがお店選びや移動を楽しめる、そんな世界を広げていきたいです。

本日は貴重なお話ありがとうございました!
会社概要
- 会社名: 本田技研工業株式会社
- 所在地: 〒105-8404 東京都港区虎ノ門2-2-3 虎ノ門アルセアタワー
- 代表者:取締役代表執行役社長 三部敏宏
- 設立年月日:1948年(昭和23年)9月
- 企業HP:https://www.honda.co.jp/
- EatMo HP:https://www.honda.co.jp/EatMo/
まとめ
EatMoが目指すのは、AIや効率化が加速する現代だからこそ価値を増す「自分の直感」や「人と人との関わり」でした。移動という文脈に「食」の楽しさを掛け合わせ、地域の魅力的な店主や文化へユーザーを導くEatMo。テクノロジーの力で、あえて「余白」や「驚き」を作り出す彼らの挑戦から、今後も目が離せません。
New Venture Voiceでは、EatMoのように、国内外の面白い新規事業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

