最終更新日 26/03/02
国内スタートアップ

【Synflux株式会社】AIとアルゴリズムで「惑星のためのファッション」を創るサステナブルテックの旗手

AIアパレルデザイン
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(引用:PR TIMES

世界で2番目に環境負荷が高いとされるファッション産業は、今、歴史的な転換点を迎えています。従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」という線形モデルは、資源の枯渇と深刻な環境汚染を招き、持続不可能な限界に達しています。特に衣服の製造工程で発生する生地の裁断屑は、全素材の約15〜30%にも及び、その多くが活用されることなく廃棄されているのが現状です。
こうした深刻な社会課題に対し、デジタルテクノロジーとデザインの力で抜本的な解決を試みているのが、2019年に創業したSynflux株式会社です。同社は「FASHION FOR THE PLANET / 惑星のためのファッション」を掲げ、機械学習や3Dシミュレーションを駆使した独自の設計システム「Algorithmic Couture」を展開しています。これにより、設計段階から廃棄を極小化する「最適化生産」を実現し、環境負荷の低減と新たなクリエイティビティの創出を両立させています。
本記事では、株式会社Synfluxの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。    

事業内容①:AIデザインシステム「Algorithmic Couture」の展開

Synfluxの核となる事業は、機械学習、3Dシミュレーション、そしてアルゴリズミックデザインを統合した次世代のデザインシステム「Algorithmic Couture(アルゴリズミック・クチュール)」の開発と提供です。 このシステムは、従来のファッション業界で200年以上変わっていないとされるアナログな型紙設計のプロセスを、デジタル技術によって根本から再定義するものです。

(引用:公式HP)

従来の衣服制作では、3次元の身体を包むために2次元の布を裁断しますが、その際に型紙をパズルのように配置する中で、どうしても複雑な隙間が生じてしまいます。 「Algorithmic Couture」は、まず衣服の3Dデータを作成し、そこから身体の形状や生地の特性、デザインの制約条件をAIが解析します。 その結果、布の廃棄を最小限に抑えるように最適化された2Dの型紙データを自動生成することが可能になります。

この技術を導入することで、従来のアパレル産業において常態化していた15〜30%もの生地廃棄率を、わずか3〜5%程度にまで大幅に削減できるという驚異的な成果を上げています。 これは、企業の原材料コストを直接的に押し下げるだけでなく、生産プロセス全体におけるエネルギー消費やCO2排出の抑制にもつながる、極めて社会的意義の高いソリューションです。

事業内容②:有力ブランドの共同開発及び社会実装支援

Synfluxは単なるソフトウェア開発企業に留まらず、国内外の有力なアパレル・ファッション企業との新商品開発や、共同研究を通じた社会実装を多角的に展開しています。 同社の技術は、既に多くの著名なプロジェクトで採用されており、その実効性が証明されています。

株式会社ゴールドウインとの共同プロジェクト「SYN-GRID(シン・グリッド)」

(引用:PR TIMES

このプロジェクトでは、THE NORTH FACEやNEUTRALWORKS.などのブランドから、極小廃棄を実現した製品をリリースしています。 最新の事例では、ロンドンのブランド「J.L-A.L」とコラボレーションし、Spiber株式会社が開発したプロテイン繊維「Brewed Protein™」などの次世代素材を使用しながら、複雑なパネル構造のデザインと廃棄物の大幅削減を両立させました。    

メディカルアパレルブランド「クラシコ」とのプロジェクト


メディカルアパレルブランド「クラシコ」とのプロジェクトでは、医療用白衣の型紙を最適化し、従来比で約9〜10%の廃棄率低減を実現。 この「ショートコート・MOVE」は、環境配慮と快適性、洗練されたデザインが高い次元で融合しているとして、2025年度グッドデザイン・ベスト100を受賞しました。

(引用:PR TIMES

資金調達:シリーズAラウンドで5.2億円を調達

(引用:PR TIMES

Synfluxは2026年1月、シリーズAラウンドにおいて、総額5.2億円の資金調達を完了したことを発表しました。 本ラウンドの累計調達額は5.2億円、創業以来の累計調達総額は7.4億円に達しています。 今回の調達は、同社の技術が日本国内のみならず、世界基準の環境価値として認められたことを象徴しています。

【資金調達の詳細】

  • 調達日
    2026年1月14日
  • 調達額
    5.2億円 
  • 調達方法
    第三者割当増資
  • 主な調達先
    Goldwin Play Earth Fund(リード)、Collateral Good、株式会社脱炭素化支援機構(JICN)、サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブ1号投資事業有限責任組合、株式会社サザビーリーグ、立命館ソーシャルインパクトファンド、mint、MTG Ventures

成長フェーズにおける戦略的活用

調達された資金は、活用先は以下のとおりです。

  1. グローバル市場の開拓
    欧州のArticle 9投資家との連携を深め、デザインや製造だけでなく、政策連動型の情報開示や報告分野においても欧州企業との協力を強化します。これにより、グローバルな環境規制への対応を強みとした国際展開を加速させます。    
  2. エンタープライズ企業との連携
    OEM・ODMを含む上流サプライチェーンへのシステム導入をターゲットに、自社開発のデザインシステム「Algorithmic Couture」の機能を拡充し、大手企業の基盤インフラとしての実装を進めます。    
  3. 人材採用と組織体制の強化
    国際的なサステナブルファッションの実務やESG、事業開発に精通した人材の採用を強化し、複雑な社会課題とビジネスを高度に結びつけられる体制を構築します

市場規模:急成長するサステナブルファッション市場

Synfluxが主戦場とする「サステナブルファッション」市場は、今やファッション業界全体の成長を牽引する巨大なセグメントへと成長しています。 気候変動への危機感の高まりと、各国の環境規制の強化が、市場の構造そのものを劇的に変えつつあります。

世界のサステナブルファッション市場は、2024年に97億米ドルに達し、2037年までに1440億米ドルに達すると予測されています。年平均成長率は23.1%と予測されています。
特筆すべきは、サステナブルファッション市場が従来型のアパレル産業と比較して、最大で10倍近い速さで成長している点です。 Z世代を中心とした若年層の約65%が「持続可能なブランドからの購入」を優先するという消費者動向の変化が、この成長を強力に後押ししています。 2030年までには、ファッション企業の経営幹部の70%がサステナビリティを主要な成長ドライバーとして位置づけると予測されています。

日本国内における

(引用:矢野経済研究所


日本国内においても、アパレル市場全体の規模は2024年時点で約8兆5,010億円と推計されており、底堅い需要が存在します。 しかし、国内市場は成熟しており、単なる「安さ」や「流行」だけでは差別化が困難になっています。   

   

こうした中、日本政府が推進する「サーキュラーエコノミー」への移行は、Synfluxのようなテックスタートアップにとって大きな追い風となっています。 経済産業省は「みらいのファッション人材育成プログラム」などを通じて、環境負荷の低減とデジタル化を両立できる企業を支援しています。 日本の伝統的な繊維産業の技術力と、Synfluxのアルゴリズミックデザインが融合することで、世界市場においても強力な競争力を持つの新しい価値を創出できる可能性が高まっています。

会社概要

  • 会社名:Synflux株式会社
  • 所在地:東京都渋谷区神宮前6-9-11
  • 設立年月日:2019年3月27日
  • 代表者名:川崎 和也(代表取締役CEO)
  • 公式HP URL:https://synflux.io/

まとめ

Synflux株式会社は、ファッションという「文化」と、AIという「技術」を高度に融合させ、地球規模の課題に対する実効性のある回答を提示しています。 同社の中核技術「Algorithmic Couture」は、設計段階で廃棄を極小化するという、産業の根幹を揺るがすイノベーションを成し遂げました。 ゴールドウインやクラシコといった業界のリーダーたちとの協業実績は、その技術が既に一過性の実験を終え、実社会での標準実装フェーズに達していることを示しています。
Synfluxが描く「惑星のためのファッション」は、一企業のビジョンを超え、これからの時代を生きる人類全体の共通言語となっていくでしょう。 伝統と革新、環境と経済を両立させる同社の今後の展開から、目が離せません。   

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。株式会社Synfluxのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。    

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