
近年では、脱炭素と電力の安定供給を両立する次世代エネルギーとして、フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)への期待が高まっています。しかし、核融合は燃料となるプラズマを1億度級まで加熱し続ける必要があり、装置開発がボトルネックになりやすい分野です。量子科学技術研究開発機構の解説でも、中性粒子入射(NBI)がプラズマ加熱の手段であることが示されています。
株式会社ビームフォーフュージョン(以下、ビームフォーフュージョン)は、中性粒子入射加熱装置(NBI)など高パワービーム技術の装置設計を担い、研究成果を社会実装へつなぐことでこの壁を越えようとしています。
本記事では、株式会社ビームフォーフュージョンの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介していきます。
事業内容①:核融合炉向け「中性粒子入射(NBI)」の設計・開発
同社の中核は、磁場で閉じ込めた核融合プラズマを高温にするための中性粒子入射加熱装置(NBI)の設計・開発です。NBIは、(1)イオン(電気を帯びた粒子)をつくり、(2)高電圧で加速し、(3)中性化して磁場の影響を受けにくい中性粒子に変え、(4)プラズマへ入射して衝突でエネルギーを渡す──という考え方で加熱します。
ポイントは「高エネルギー化しても効率よく中性化できるか」で、同社は次世代炉で重要度が高い“負イオン方式NBI”の知見を事業の中心に据えています。
また、同社は負イオンビームを基盤とするNBIを実用機級で成立させてきた技術者の知見を土台に、性能だけでなく安全性・保守性まで含めた設計判断を提供できる点が特徴です。要件定義から基本・詳細設計、調達仕様づくり、据付時の監修や保全設計まで「長く安全に動かす」視点を織り込めるとしています。
ターゲットは、核融合装置の開発を進める研究機関や、実証・原型炉を見据える事業者の開発部門です。自前で人材と設備を揃えるより、立ち上げ期間と試行錯誤のコストを圧縮できることが導入メリットになります。
事業内容②:液体リチウム等の液体金属技術と、医療・産業向け中性子源

同社は、液体リチウムなど液体金属の流動伝熱(熱を運び、冷やす仕組み)や、磁場中での流れ制御に関する知見も核融合分野から応用します。核融合炉ではダイバータや第一壁などが極めて高い熱負荷にさらされるため、強い冷却能力と材料劣化への対策が課題になりやすく、同社は液体金属技術をベースに関連機器の設計・試作開発へ貢献するとしています。
さらに同社は「高エネルギービーム×液体リチウム」を組み合わせ、医療用中性子源としてホウ素中性子捕捉療法(BNCT)向け装置への展開も掲げています。BNCTは、国立がん研究センター中央病院の解説では、腫瘍細胞に集積させたホウ素薬剤に中性子を照射し、腫瘍内で核反応を起こす治療法として説明されています。
同社サイトでは、ビームと液体リチウム技術を適用して大強度の中性子を生成し、治療時間の短縮などに貢献し得る装置構想も示しています。
中性子源を「病院設置型」として提供できれば、場所・運用面の制約が減り、医療機関や装置メーカー、研究用途のユーザーにとっても検討価値が高まります。
核融合で磨いた「高熱負荷・高放射線・高電力」前提の設計思想を、隣接産業へ転用できる点も、この事業のメリットです
資金調達:シードで5,000万円を第三者割当増資

ビームフォーフュージョンは、シードラウンドにおいて、インキュベイトファンドを引受先とする5,000万円の第三者割当増資を実施しました。
調達背景には、核融合エネルギー市場が拡大する中で、実証炉建設の進展に伴い中核技術であるNBI(中性粒子ビーム入射装置)の重要性が高まっている点が挙げられます。また、従来主流であった正イオン方式では高エネルギー化に伴う効率低下という課題があり、次世代炉に不可欠な負イオン方式の安定生成が長年の技術的ボトルネックとなっていることも背景にあります。
今回調達した資金は、NBI装置の開発や移転を完遂し、世界最高峰の技術を次世代へ継承・組織化するための基盤構築に充当すると発表しています。
【本資金調達概要】
- 調達日:2026年3月31日
- 調達額:5,000万円
- 調達方法:シードラウンドにおける第三者割当増資
- 引受先:インキュベイトファンド
- 資金使途:NBI装置の開発や技術移転のような長期プロジェクトを完遂するための基盤づくり
市場規模:フュージョンエネルギー市場は2033年には5,435億米ドルに

Spherical Insights & Consultingが発行した調査レポートによると、世界の核融合技術市場 規模は、2023年から2033年の予測期間中に5.70%のCAGRで成長し、2023年の3,121億米ドルから2033年には5,435億米ドルに成長すると予想されています。
核融合市場は、クリーンで豊富で持続可能なエネルギー ソリューションを提供できる可能性によって推進されています。 ITER などの取り組みを通じた世界的な協力により、研究能力が高まり、持続可能な核融合エネルギーの生産に向けた進歩が加速しますが、核融合技術市場は、広範な商業化への道を遅らせる厳しいハードルに直面しています。純エネルギー増加で核融合反応を生成および維持することの難しさなどの技術的制約と、開発および材料要件の高コストが相まって、大きな障壁となっています。
こうした中でビームフォーフュージョンは、核融合炉の中核装置であるNBI(中性粒子ビーム入射装置)領域にフォーカスし、長年のボトルネックであった負イオン生成技術の高度化に取り組んでいます。これは、単なる研究開発にとどまらず、今後の核融合産業における「実装フェーズ」を支える重要なポジションにあると言えるでしょう。
市場の拡大とともに、核融合関連の装置・技術に対する需要はさらに高まることが予想されます。その中で、ビームフォーフュージョンのようにコア技術に特化し、産業化の鍵を握る領域を担う企業は、今後のエネルギー産業の構造を大きく左右する存在になる可能性があります。核融合という長期テーマの中で、同社がどのように技術を社会実装へとつなげていくのか、引き続き注目が集まります。
(グラフ:内閣府資料の市場規模推計を参照)。
会社概要
会社名:株式会社ビームフォーフュージョン
所在地:岐阜県可児市桜ケ丘6-73-18
設立年月日:2023年9月20日
代表者名:堀池 寛
公式HP URL:https://beam4fusion.com/
まとめ
株式会社ビームフォーフュージョンは、核融合の産業化で鍵となるNBI(中性粒子入射)を中心に、負イオンビームや液体金属技術といった難易度の高い領域を事業化するスタートアップです。
エネルギーと装置産業は、投資回収までの時間軸が長い一方で、供給網を押さえた企業が強くなる世界でもあります。核融合の現場品質を支える立場として、今後の動向にも注目が高まります。
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