最終更新日 26/04/02
国内スタートアップ

【ネッスー株式会社】食品ロス削減と子ども支援を両立する注目スタートアップ

サステナブル子育て食品
Share this post
(引用:公式ホームページ

日本では、2023年度の食品ロスが464万トンにのぼる一方、子どもの貧困率は11.5%、ひとり親世帯の貧困率は44.5%と、食と機会の格差はなお大きな社会課題です。まだ食べられる食品が捨てられる一方で、必要な家庭や団体に十分届いていない。この“もったいない”と“足りない”の分断は、経営者や新規事業担当者にとっても、解決余地の大きいテーマといえます。

ネッスー株式会社は、こうした課題に対し、単なる寄付仲介ではなく「持続可能な仕組み」を事業としてつくる会社です。公式サイトでは、「こどもの機会格差をなくし、やさしい社会をつくる。」を掲げ、自治体・企業・団体をつなぎながら、食支援、地域創生、資源循環を横断する事業を展開しています。社会貢献を“善意だけに依存しないモデル”へ変えようとしている点が、同社の大きな特徴です。

事業内容:食支援と地域循環を仕組み化するインパクト事業

①保育園受取型ネットスーパー「ネッスー」

(引用:公式ホームページ

ネッスーの原点となるサービスが、保育園で子どものお迎えと一緒に夕食を受け取れるネットスーパーです。当日13時までの注文で、地域の連携先飲食店がつくった惣菜などを保育園で受け取れる仕組みで、最低注文金額なし・1品から利用可能という設計になっています。忙しい子育て世帯にとって、買い物と夕食準備の負担を減らし、親子の時間を生み出せる点が分かりやすい価値です。現在はアプリ開発のため一時休止中ですが、子育て支援と生活インフラを結び付ける発想は同社の中核にあります。

この事業の独自性は、単なる宅配ではなく「保育園」という生活導線に組み込んでいることです。共働き世帯、ワンオペ育児家庭、帰宅後の家事負担を減らしたい保護者に向いており、時間コストの削減効果が大きいモデルといえます。子育て家庭の余裕は、結果として子どもの体験機会の創出にもつながるため、生活支援と機会格差の緩和を同時に狙う設計になっています。

②未利用食品活用プラットフォーム「ステナス」

(引用:公式ホームページ

「ステナス」は、賞味期限が迫った商品や規格外品など、まだ食べられる未利用食品を活用する食品マッチング事業です。ネッスーは2025年、ライフコーポレーションや東急ストアと連携して実証実験を開始し、さらに2026年には国分グループ本社と連携して、食品メーカー・卸・小売・外食が抱える未利用食品を、支援が必要な団体や世帯へ届ける仕組みを拡張しています。

この事業によって、食品関連企業にとっては廃棄コストや運用負担を抑えやすく、支援を受ける側にとっては必要な食品を選べる余地が広がります。加えて、ネッスーは無償寄贈だけでなく「ソーシャル・プライシング」という有償提供も組み合わせ、善意に頼り切らない継続可能性を追求しています。食品ロス削減、子ども支援、物流効率化を同時に満たす点が差別化ポイントで、食品メーカー、流通業、自治体、こども食堂など幅広い利用主体と相性が良い事業です。

③ふるさと納税活用の「こどもふるさと便」

(引用:公式ホームページ
(引用:公式ホームページ

「こどもふるさと便」は、ふるさと納税を通じて地域の特産品や体験機会を、こども食堂やひとり親世帯などへ届ける仕組みです。ネッスーはこれを「使いみち共感型」のふるさと納税として推進しており、寄付者は返礼品を受け取りつつ、子ども支援にも参加できます。2025年末には6自治体と本格連携を開始し、都城市や旭川市など具体的な地域プロジェクトも公開されています。

この事業は、地域経済の活性化と子ども支援を分けずに設計されています。自治体は寄付の使い道を明確化でき、生産者は地域産品の流通機会を得られ、支援先には実用品や食体験が届きます。寄付者にとっても、「何に使われるか」が見えやすく、参加しやすいモデルです。地域創生を担当する自治体や、CSV・インパクト投資を検討する企業にとって、連携余地の大きい仕組みといえます。

資金調達:初の外部資本導入で成長加速フェーズへ

ネッスー株式会社は、2026年1月29日に初の資金調達を実施し、新たな成長フェーズに入ったことを発表しました。なお、調達額やラウンド、引受先などの詳細は非公表となっています。創業から約3年で未調達ながらも売上10億円規模に到達しており、その成長スピードの速さには目を引かれるものがあります。今回の資金調達をきっかけに、今後の展開にもさらに注目が集まりそうです。

代表取締役の木戸優起氏は、慶應義塾大学卒業後、日本紙パルプ商事、ドリームインキュベータを経て、2022年6月にネッスーを創業しました。幼少期から、機会に恵まれにくい子どもたちと関わってきた経験が、現在の事業の原点になっています。商社と戦略コンサルの両方で培った経験を活かしながら、「社会課題をビジネスで解決する」という軸をぶらさずに事業を展開してきました。
これまで同社は、複数の事業を同時に立ち上げつつ、黒字事業で得た資金を新規事業へ再投資する形で成長してきました。今回の資金調達を機に、組織体制の強化や認知拡大を進めながら、さらに事業をスケールさせていくフェーズに入ったといえるでしょう。

(引用:公式ホームページ

市場規模:食品ロス削減市場の構造と成長余地

日本の食品ロスは依然「巨大市場」

(引用:nippon.com

上記のグラフから分かる通り、日本の食品ロスは年々減少傾向にあるものの、2023年度でも約464万トンと依然として巨大な規模です。内訳は、家庭系が約233万トン、事業系が約231万トンと、ほぼ半々となっています。

この数値は、単なる「環境問題」にとどまりません。食品ロスによる経済損失は年間約4兆円とされており、企業にとってもコスト削減や新規事業創出の余地が大きい領域です。
つまりこの市場は、「削減対象」であると同時に、「再流通・再活用ビジネスの機会」でもある点が重要です。

ネッスーの市場ポジション

ネッスーの面白さは、特定の1つの市場にきれいに収まらないところにあります。

食品ロスの削減という環境領域のテーマを扱いながら、子ども支援やフードバンクといったソーシャルな文脈にも関わり、さらにネットスーパーのような生活インフラにも踏み込んでいる。いわば、いくつかの領域をまたぎながら事業を組み立てているのが特徴です。

その中で重要なのは、「余っているもの」と「足りていないもの」をどうつなぐかという視点です。前述のグラフが示すように、食品ロスは減少傾向にあるとはいえ、依然として大量に存在しています。一方で、必要な家庭や支援現場には十分に行き届いていない現実もある。このギャップを埋める仕組みを、事業として成立させている点に同社の価値があります。

食品ロスは構造的にゼロにはなりにくい領域です。だからこそ、「発生したものをどう活かすか」という発想は今後も求められ続けます。ネッスーはその中で、単なる支援や仲介にとどまらず、流通や価格設計まで含めた仕組みとして組み上げている点が特徴です。

複数の領域を横断しながら、社会課題とビジネスの両方に向き合う。そうした立ち位置こそが、今後の成長を考えるうえでの強みになっていきそうです。

会社概要

  • 会社名:ネッスー株式会社
  • 所在地:東京都世田谷区代沢4丁目44-4
  • 設立年月日:2022年6月10日
  • 代表者名:木戸優起
  • 公式HP URL: https://nessu.co.jp/

まとめ

ネッスー株式会社は、食品ロス削減や子ども支援を個別の社会貢献活動としてではなく、持続可能な事業モデルとして実装しようとしているスタートアップです。保育園受取型ネットスーパー、未利用食品活用の「ステナス」、ふるさと納税を活用した「こどもふるさと便」は、いずれも“余っている資源”と“足りない機会”をつなぐ設計になっています。

2026年には初の資金調達も公表され、未調達成長のフェーズから、外部資本を活かした拡大フェーズへ進み始めました。社会課題の解決と事業成長を両立できるのか。ネッスーの次の一手は、インパクトスタートアップの現在地を考えるうえでも示唆に富みます。子どもの機会格差という重いテーマに、ビジネスの力で向き合う同社の今後に注目したいところです。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

ネッスー株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

目次へ戻る

タイトルとURLをコピーしました