最終更新日 25/05/12
国内スタートアップ注目企業

Ubie株式会社とは?症状検索とAI問診で注目の医療スタートアップ

AIヘルスケア
Share this post
(引用:公式HP)

日本は世界有数の高齢化社会となり、医療ニーズの増加に伴い現場の負担が深刻化しています。限られた医療資源の中で患者一人ひとりに適切なケアを提供するには、デジタル技術の活用が不可欠です。

こうした社会課題に対し、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」ことをミッションに掲げるヘルステック企業が Ubie株式会社 です。

医師とエンジニアの共同創業によって2017年に設立された同社は、AIを駆使したソリューションで患者と医療機関をつなぐ新たな取り組みに挑戦しています。そのサービスは生活者向けと医療機関向けの双方に展開されており、医療業界初心者でも使いやすい形で提供されています。

本記事では、Ubie株式会社の事業内容や市場展望、資金調達状況について詳しく紹介し、同社が目指す医療DXの未来像に迫ります。

事業内容:生活者向け症状検索エンジン「ユビー」

(引用:Findy)

Ubie株式会社が提供する生活者向けサービス「症状検索エンジン『ユビー』」は、インターネットやスマートフォンから簡単に自身の症状に合った情報を得られる受診支援ツールです。

ユーザーは体調に関する20前後の質問に回答するだけで、AIが症状に関連する可能性のある疾患名やその解説、適切な診療科や近隣の医療機関を教えてくれます。これにより、「どの病院に行けばいいか分からない」「ネット検索では情報が玉石混交で不安」といった悩みを解消し、早期の適切な受診行動を後押しすることが可能です。

実際、サービス開始からわずか3年で累計利用回数が1億回を超え、月間利用者数は約1,300万人に達しています。これは日本の人口の約1割に相当する人々が「まずユビーで調べる」という新しい行動様式を定着させつつあることを示しています。

同サービスは50名以上の現役医師が開発に参画し、約5万本の医学論文に基づいて構築された信頼性の高い質問アルゴリズムを備えており、誰でも無料で利用できる点も大きな魅力です。ターゲットとなる利用者層は健康不安を抱える一般生活者全般で、特に子育て世代や慢性疾患を持つ方、高齢者まで幅広く活用されている状況です。

「ユビー」によって自宅にいながら専門的な医療情報にアクセスできることで、ユーザーは症状への適切な対処法や受診の必要性を素早く判断でき、無用な不安の軽減や医療機関受診の適正化につながっています。

事業内容:医療機関向けAI問診サービス「ユビーメディカルナビ」

(引用:ユビーメディカルナビ

医療現場向けのソリューションとしてUbie株式会社が展開するのが、「ユビーメディカルナビ」と総称されるサービス群です。その中核である「ユビーAI問診」は、紙の問診票に代わりタブレットやスマートフォンで患者に事前問診を行うクラウド型システムです。

来院前または受付時に患者自ら症状や既往歴を入力すると、AIが回答内容に応じて適切な追加質問を自動生成し、必要な情報を深掘りして収集します。こうして得られたデータは医師向けに専門用語へ翻訳され、電子カルテに連携されるため、医師は診察前に詳しい問診結果を把握できるようになります。

従来、問診は患者が紙に書き込んだり看護師が口頭で聞き取ってカルテに転記したりする非効率な作業でしたが、本サービスによりその負担が大幅に軽減されました。例えば、愛知県の刈谷豊田総合病院ではユビーAI問診の導入後にカルテ記載に要する時間が12分から8分に短縮され、患者の待ち時間も減少したとの報告があります。また、コロナ禍においては患者が自宅から問診を受けられるため、院内での感染リスク低減にも寄与しました。こうした業務効率化や患者体験向上の効果が評価され、ユビーAI問診は2018年の提供開始以降、全国の病院・クリニック約1,800施設に導入されています。

さらに同社は近年、医療現場のニーズに応じて生成AIを組み合わせた新機能拡充にも取り組んでいます。2023年末にはある病院で実施した生成AIの実証実験において文書作成業務時間が最大1/3に短縮される成果が確認され、その技術を取り入れた「ユビーメディカルナビ 生成AI(β版)」の提供も開始しました。

このサービスではGPT-4をはじめとする複数の高度なAIモデルを安全な環境下で活用し、問診内容からの診療サマリ自動生成や音声入力のテキスト化、画像解析による情報抽出など、医療従事者の煩雑な事務作業を強力にサポートします。医療機関向け事業の収益モデルは、システム利用料(SaaS型)や導入支援サービスによるものとなっており、導入先病院からは「診療の質向上と効率化に欠かせないプラットフォーム」として高い評価を得ている状況です。

このようにUbieの医療機関向け事業は、慢性的な人手不足に悩む現場のDX推進に貢献し、患者と医療者双方にメリットをもたらす革新的サービスと言えます。

資金調達:2022年までに累計約107.2億円を調達

(引用:PR TIMES)

Ubie株式会社は創業以来、事業拡大に合わせた積極的な資金調達を行ってきました。2022年10月にはシリーズCラウンドを総額62.6億円でクローズし、創業からの累計調達額を約107.2億円としています。このシリーズCには、国内外の事業会社やベンチャーキャピタルに加え、商工組合中央金庫や日本政策金融公庫、みずほ銀行などからの融資も含まれており、同社の事業性と社会的意義の高さに金融機関も注目した形です。

さらに2024年10月には米Googleからの出資受入を発表し、生成AI分野での連携強化に合意しました。金額は非公開ながら、グローバルIT企業の参画は同社の技術力が世界的にも評価された証と言えるでしょう。

そして直近の2025年5月には、政府系金融機関である株式会社商工組合中央金庫(商工中金)から長期融資10億円を調達しています。この最新の資金は既存事業・新規事業の開発や成長加速に充当され、同社が目指す「健康寿命の延伸」に向けた取り組みを一層推進していく方針です。

創業期から現在までの出資者には、グローバル製薬企業のCVCや国内有力ファンド、事業会社など多彩な顔ぶれが並び、医療×AIスタートアップとしての将来性に期待が集まっています。資金調達面で得たリソースを背景に、Ubieはプロダクト開発やマーケティング、人材採用を加速させ、日本発の医療DXソリューションを世界へ広げるべく躍進を続けています。

市場規模:国内デジタルヘルス市場規模は2033年には558億米ドルにまで成長

(引用:IMARC Group【日本のデジタルヘルス市場概要】

Ubie株式会社が事業を展開するヘルステック/デジタルヘルス分野は、国内外で急速な市場拡大が見込まれています。

国内市場に目を向けると、医療や健康分野におけるデジタル技術活用の進展により、 日本のデジタルヘルス市場規模は2024年に約292億米ドルと推定され、2033年には558億米ドルに達すると予測されています。これは予測期間中(2025-2033)の市場成長率7.5%という高い成長率で拡大を続ける計算です。

一方、世界のデジタルヘルス市場も同様に力強い成長が予測されており、2023年に約2,392億米ドルだった市場規模が2032年には約1兆158億米ドルに達する見込みで、年平均成長率は約17.3%に上ります。

このグローバル規模での市場拡大には、AI技術の進歩やコロナ禍による遠隔医療ニーズの高まり、各国政府のデジタル医療推進政策などが追い風となっています。特に医療AIに限れば世界市場のCAGRが40%近くに達するとの試算もあり、症状チェックや診断支援といったUbieのサービス領域も今後ますます需要が高まる見通しです。急成長するマーケットの中、同社は国内で確立したモデルを武器に海外展開も進めており、2022年には米国拠点を設立してグローバル市場への足掛かりを築いています。

医療分野のDXは世界共通の課題であり、市場規模の拡大と競合環境の成熟が進む中でも、Ubieのような日本発スタートアップが存在感を示す余地は大いにあるでしょう。

会社概要

  • 会社名: Ubie株式会社
  • 所在地: 東京都中央区日本橋本町三丁目8番4号 日本橋ライフサイエンスビルディング4 5F
  • 設立: 2017年5月
  • 代表者: 阿部吉倫・久保恒太(共同代表取締役)
  • 公式HP: https://ubie.life

まとめ

日本発のヘルステックスタートアップであるUbie株式会社は、AI問診システムと症状検索エンジンというユニークな両輪で、患者と医療のミスマッチ解消に取り組んでいます。社会課題となっている医療現場の負担軽減や受診控えの解消に対し、同社のサービスが提供する価値は大きく、すでに国内多数のユーザーや医療機関から支持を獲得してきました。

今後は国内で培った実績をもとにグローバル展開を加速し、世界中の人々を「適切な医療へ案内する」ことを目指しています。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

Ubie株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

目次に戻る

タイトルとURLをコピーしました