最終更新日 25/05/13
国内スタートアップ注目企業

メドメイン株式会社が挑む病理AIクラウドとは?医療DXを加速させる注目スタートアップ

AIヘルスケア
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(引用:PR TIMES)

近年、世界的にがんの診断件数が増加し、それに伴い病理診断の需要も急速に高まっています。しかし、高度な専門知識を持つ病理医の数は慢性的に不足しており、医療現場では一人の病理医が多数の症例を抱える状況も珍しくありません。実際、日本でも2015年時点で病理専門医はわずか2,316人と報告されています。

こうした課題に対し、テクノロジーの力で解決に挑むのがメドメイン株式会社(以下、メドメイン)です。同社は「テクノロジーでいつどこでも必要な医療が受けられる世界をつくる」というミッションを掲げ、病理診断を支援するAI搭載クラウドシステム「PidPort(ピッドポート)」の開発・提供を行っています。

本記事では、メドメインの事業内容や資金調達状況、今後の展望について詳しく紹介します。

事業内容①:病理AIクラウド「PidPort」

(引用:メドメイン株式会社

PidPortはディープラーニング技術による独自の画像処理によって、病理組織画像の超高精度かつ迅速な診断を可能にするクラウドシステムです。また、クラウド経由の遠隔病理診断機能(テレパソロジー)も備えており、地理的に離れた医療機関同士で病理画像を共有しながらタイムリーに診断を依頼・協働することができます。さらに、従来は顕微鏡で見るガラス標本(プレパラート)だった病理組織を高品質なデジタル画像データに変換し、クラウド上に安全に保管・管理するサービスも提供しています。これにより標本の経年劣化や保管スペースの制約を気にせず症例データを活用することが可能です。

こうした一気通貫のデジタル病理プラットフォームとしてPidPortは既に多数の医療施設で活用されており、同社の独自技術によって全身の複数臓器のがんを検出可能な高度な病理AIも実現しています。実際の利用シーンも多岐にわたっており、遠隔病理診断だけでなく、病理カンファレンス(症例検討会)のオンライン開催や医学教育における症例共有、製薬・研究機関での病理画像の精度管理など、幅広い用途でサービスが導入されている状況です。

PidPortは病理診断のデジタル化と効率化を推進し、慢性的な病理医不足による医療現場の負担軽減に貢献することが期待されています。

事業内容②:医学生向けクラウドサービス「Medteria」

(引用:PR TIMES)

Medteria(メドテリア)は、医学生や若手医療従事者向けのクラウド型情報共有プラットフォームです。

資料やファイル、画像・動画などを安全に保存してグループ内で共有でき、学内外のコミュニティで知識や情報の円滑な共有・議論を実現します。膨大な学習量が求められる医学生を支援し、効率的な学習環境を提供する目的で2018年にサービスが開始され、九州大学など複数の医学部で運用が始まりました。その後順調にユーザ数を伸ばし、2024年にはMedteria事業を分社化して新たにメドテリア株式会社(Medteria Inc.)が運営を担当しています。これによりサービス体制を強化し、さらなる事業拡大と収益化を図る狙いです。

Medteriaは将来の医療従事者である学生同士のコラボレーションを促進し、医療コミュニティ全体の知識共有インフラとしても期待されています。

資金調達:2025年5月に第三者割当増資により約4.7億円の資金調達を実施し、累計25億円を調達

(引用:メドメイン株式会社

メドメインは2025年5月、第三者割当増資による約4.7億円の資金調達を実施し、累計資金調達額は25億円に達しました。

リード投資家を務めたのはSaaS・ヘルスケア領域で実績豊富な独立系ベンチャーキャピタルのOne Capitalで、米国シリコンバレー拠点のNiremia CollectiveおよびPlug and Playも出資に参加しています。海外投資家からの出資も得たことで、同社の技術と事業モデルがグローバルにも高く評価されていることがうかがえます。

調達した資金は主力サービスである病理AI搭載クラウド「PidPort」のさらなる開発強化に充てられる予定です。また、病理標本をデジタル化するための設備投資や営業体制の強化にも活用し、将来的には同社の病理AIを医療機器として承認取得するための準備や、海外展開に向けた基盤構築も進めていく計画です。

充実した資金基盤の下、メドメインは事業拡大とサービス高度化に向けた取り組みを加速させています。

市場規模:世界のデジタル病理学市場規模は2024年に約10.2億米ドルにまで成長

(引用:imarc)

調査会社IMARCによると、世界のデジタル病理学市場規模は2024年に約10.22億米ドルと推定され、2033年には約23.20億米ドルに達すると予測されています。この期間(2025〜2033年)の年平均成長率(CAGR)は約8.54%と高く、市場は今後も二桁近い成長を続ける見通しです。

市場拡大の背景には、正確で効率的な病理診断ソリューションへの需要の高まりがあります。従来の病理診断はガラス製のプレパラートと顕微鏡によるアナログな作業に依存しており、時間がかかるうえ人為的ミスのリスクも指摘されてきました。デジタル病理技術を導入することで、組織スライドを高解像度のデジタル画像に変換して解析・共有できるようになり、病理医は遠隔地からでも症例を確認して迅速に協議することが可能です。また医療ITインフラへの投資拡大やクラウドプラットフォームの普及も、病理データのシームレスな保存・共有を可能にし、市場成長を後押ししています。

一方、国内のデジタル病理市場もこれから大きな伸びが期待されています。2024年時点の市場規模は50億円程度とグローバルに比べ小規模ながら、2033年には約170億円規模と予測されており、年平均成長率にすると12.8%と世界市場を上回るペースで成長する見込みです。また日本はアジア太平洋地域においてデジタル病理分野で最大の市場規模を持ち、同地域全体の4分の1以上のシェアを占めているとも報告されています。

このことから、国内でも病理診断のデジタル化ニーズが高まっていることがうかがえます。医療機関のDX推進や、政府による医療ICT支援策などを背景に、日本におけるデジタル病理市場も今後大きな拡大が予想されるでしょう。

会社概要

  • 会社名:メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)
  • 所在地:福岡県福岡市中央区赤坂2-4-5 シャトレサクシーズ104(本社)
  • 設立:2018年1月11日
  • 代表者名:飯塚 統
  • 公式HPhttps://medmain.com

まとめ

メドメインは、深刻な病理医不足という社会課題に対し、AIとクラウドを駆使した実用的なソリューションで挑戦するヘルステック・スタートアップです。同社の提供するPidPortは、病理診断の精度とスピードを飛躍的に向上させるだけでなく、医療データの共有と利活用のあり方を変革しつつあります。

今後、さらなる機能強化や他システムとの連携を通じてサービスの利便性を高め、より多くの医療現場に価値提供していくとともに、グローバル展開に向けた組織体制の強化も進めていく方針です。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

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