
ソーシャルアクションカンパニー株式会社(以下、ソーシャルアクションカンパニー)は、2018年設立のスタートアップで、社会貢献活動を可視化しインセンティブ化するプラットフォーム「actcoin(アクトコイン)」を運営しています。actcoinは、社会問題への学びや行動を独自のオンラインコインで記録・評価し、ユーザーはマイページで活動履歴とコイン残高の管理可能です。またしたコインは特典や寄付、エシカル商品の購入に使える仕組みです。2023年には約1.6万人の個人ユーザーと350以上のNPOや企業、自治体と提携し、社会貢献の輪を広げています。
本記事ではその事業内容や創業背景について紹介していきます。
事業内容:社会貢献を見える化するアプリ「actcoin(アクトコイン)」

actcoinではユーザーが行った社会貢献活動を以下の4つのカテゴリに分類し、それぞれに応じた方法でコインの獲得が可能です。
- EVENT(イベント参加)
- DAILY(日々の習慣)
- DONATION(寄付)
- POST(情報発信)
以下の記事で各機能の具体的な内容と意義をまとめていきます。
EVENT(イベント参加)

EVENTは、NPOなどが主催するボランティア活動やセミナー等のイベントに参加し、その報告をアプリ上で行うことでコインを獲得できる機能です。参加したイベントはマイページ上で活動履歴として「見える化」され、自身の社会貢献実績として蓄積されていきます。この機能により、ユーザーは様々な社会課題イベントに気軽に参加でき、参加履歴が可視化されることで継続的な関与への励みとなります。
DAILY(日々の習慣)

DAILYは、環境や社会に配慮した日常の小さなアクション(例:節電・節水、マイバッグ持参、ゴミ拾い等)を実践・報告することで毎日コインが貯まる習慣化支援の機能です。SDGsの17目標に紐づいた複数のアクション項目がアプリ内で紹介されており、その中から最大17個を自由に選んで設定できます。日々の積み重ねを「見える化」して記録することで、ユーザーが楽しみながら継続して社会や地球に優しい行動を取る動機付けとなっています。
DONATION(寄付)

DONATIONは、信頼できる寄付先に対してアプリ上で簡単に寄付ができ、その寄付額と同額分のコインを獲得できる機能です。actcoin上には法人格を有するNPOやグッドガバナンス認証取得団体など信頼性の高い寄付先一覧が用意されており、ユーザーは社会課題の分野ごとに関心のある団体を選んで寄付できます。寄付に対してコイン報酬を付与する仕組みにより、ユーザーの「寄付をしたいがどこにすればいいか分からない」「どんなメリットがあるのか」といったハードルを下げ、寄付文化の醸成に繋げています。
POST(情報発信)

POSTは、社会課題やSDGsに関するイベント・ニュース・アイテム等の情報をアプリ内タイムライン上で共有し、ユーザー同士でソーシャルグッドな情報拡散を促進する機能です。タイムラインへの投稿によってもコインが貯まり、投稿内容は他のユーザーから閲覧・評価されます。投稿機能は一定の基準を満たしたユーザーにのみ権限が与えられる仕組みで、信頼性の高い情報や実体験が集まりやすく、質の高いコミュニティ形成に寄与しています。これによりユーザーは社会貢献に役立つ知見や最新の活動情報を得やすくなり、アクションへの啓発につなげることが可能です。
社会的課題への価値提供
ソーシャルアクションカンパニー(SAC)が開発したactcoinは、「社会課題に関わる人の裾野を広げ、社会全体のムーブメントをつくる」ことを目指しています。日本では社会貢献への参加や寄付文化が薄く、善意の行動が評価されにくい現状がありました。actcoinはテクノロジーとゲーミフィケーションでこれを変え、ユーザーの社会貢献活動をオンラインコインで可視化することでコインの獲得が「見える報酬」となり、行動変容を促します。これにより若い世代を中心に寄付や参加者が増え、社会課題解決への資金循環が生まれています。
また、actcoinは信頼できるNPOや団体の活動への参加を容易にし、SDGsの目標に沿ったプロジェクト探しも可能です。団体側も情報開示を進めるインセンティブが働き、非営利セクターの健全な発展に貢献しています。さらに企業向けには従業員の社会貢献を促進・可視化するサービスを提供し、行政とも連携して地域プロジェクトを支援しており、複数の社会課題分野で成果を上げています。
総じて、actcoinは「利他的な行動」を可視化し、ユーザーにとっては参加が「楽しくかっこよく、充実感のある体験」となり、「なりたい自分に近づく機会」を提供します。社会貢献へのハードルを下げ、誰もが主体的に関わるムーブメントを創出することで、新たな社会価値を生み出しています。
創業背景
ソーシャルアクションカンパニー株式会社は、元代表取締役の佐藤正隆氏によって2018年5月に創業されました。佐藤氏は起業前、非営利組織向けのITサービス開発やNPO伴走支援に携わっており、社会課題解決の現場で感じた課題意識がactcoin着想の原点となりました。かつて協力していた企業CSR出身者との対話を通じ、「社会貢献の領域では当事者同士で『ありがとう』が積み上がっているのに、それが見える化されておらず証明する手立てがない」ことに気づいたと言います。たとえば「人にどれだけ良いことをしたか」「社会にどれだけ貢献したか」は通帳の残高のように数値化されておらず、どんなに善意の活動をしても評価されにくいのが現状でした。そうした「善意の可視化・定量化」の想いから発案されたのがactcoinであり、佐藤氏は2017年頃にブロックチェーン技術と出会ったことで「これなら実現できる」と確信し、新会社SACを設立して開発に乗り出しました。
共同ファウンダーとして参画した石川淳哉氏はクリエイティブ分野のプロデューサーで、東日本大震災後に立ち上げた情報支援サイト「助けあいジャパン」や環境省の「NEWドギーバッグアイデアコンテスト」、講談社の雑誌『FRaU SDGs』のプロデュースなど、多彩な社会課題プロジェクトの実績を持ちます。石川氏の知見とネットワークも活かしながら、actcoinのサービス設計には「楽しく参加できる社会貢献」という観点が盛り込まれていきました。
創業者のプロフィール

現在、SACを率いるのは代表取締役の薄井大地氏です。薄井氏は大学在学中からグラミン銀行と協働でバングラデシュに日本の学生を派遣するソーシャルビジネスプログラムを創始し、民間の不登校支援教育事業や国際協力NGOの事務局長などを歴任してきたソーシャルセクターの実務家です。2021年7月、ソーシャルアクションカンパニーに取締役COOとしてジョインし(当時代表は佐藤氏)、それ以前よりプロボノとしてactcoin立ち上げに2年以上関わっていた経緯もあります。薄井氏は「NPO・社会的企業の組織基盤強化」や「生活者一人ひとりのアクションを盛り上げることによる課題解決エコシステムの構築」に情熱を持ち、2021年末には代表取締役に就任してサービスのミッション実現に向け事業を牽引しています。こうした創業チーム・経営陣の経験とビジョンに支えられ、actcoinは社会課題解決に資するプラットフォームとして成長を続けています。
今後の展望と成長戦略
ソーシャルアクションカンパニーのミッションは、「より良い未来を願う人々が繋がり、アクションの輪が広がることで多様性と包摂性のある社会へ」をビジョンに掲げ、ソーシャルアクションを新しい価値に変えることです。actcoinを軸に個人コミュニティ拡大やNPO、企業、行政との連携を進め、内閣府や複数自治体との共同プロジェクトを実施しています。2024年4月には日本コムシンクと資本業務提携してAndroidアプリをリリースしており、ユーザー層のさらなる拡大が期待されています。
今後は、コインを寄付や社会的商品の交換に使える仕組みを導入予定で、財団設立やクラウドファンディングによる原資プールも計画中です。決済機能も搭載し、利便性向上と収益モデル強化を目指します。
また、コミュニティ活性化にも注力し、2021年からは社会貢献活動が顕著なユーザーを表彰しています。2023年にはオフラインイベントも再開し、若年層を中心としたムーブメントを社会に広げることを目指しています。さらに、世代間の価値観融合で「社会貢献を新しい価値にする」成功モデルを創出し、actcoinの広範な認知を目指しています。
会社概要
- 会社名:ソーシャルアクションカンパニー株式会社
- 所在地:〒107-0062東京都港区南青山2-2 5F
- 設立:2018年5月22日
- 代表者:薄井 大地
- 公式サイト:https://actcoin.jp/
まとめ
今回はソーシャルアクションカンパニー株式会社が提供するアプリ「アクトコイン」を紹介しました。
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