
国内の製造業や建設業では人手不足や生産性停滞が深刻化し、海外勢との競争力格差が課題になっています。特に現場では属人的な技術伝承や紙ベースの業務が多く、デジタル化の遅れが指摘されてきました。
こうした状況を打開すべく登場したのが、東京大学松尾研究室発のAIスタートアップ燈株式会社(以下、燈)です。社名の「燈(あかり)」が示すように、「日本を照らす燈となる」ことを使命に掲げた同社は、最先端AIテクノロジーで産業界の課題解決に挑戦しています。建設・製造・物流・小売など幅広い基幹産業の企業に対し、AIによるデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を拡大し、各業界の競争力強化と国内産業基盤の刷新を目指しています。
本記事では、燈の事業内容や資金調達、また最新の動向まで詳しく紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
事業内容①:DXソリューション事業

一つ目の事業は、DXソリューション事業です。こちらは、クライアント企業ごとの課題に合わせたAIソリューション開発を提供し、DX推進を支援するサービスとなっています。
最大の特徴は、現場と経営の双方の観点を取り入れた課題抽出によって、クライアントに合った最適な提案やコンサルティングを行う点です。また、顧客企業が持つ業界知見やデータ資産と、燈の高度なAIアルゴリズム開発力を融合し、急速な市場環境の変化にも適応できる業務改革を実現します。
例えば建設業界では、現場の長時間労働や熟練技術者の減少といった課題に対し、AIアシスタント「Archibs(アーカイブス)」を共同開発しました。これは生成AI技術を用い、建設会社内に蓄積された数百万件規模の図面・報告書等から目的の資料を瞬時に検索し回答するシステムです。
現場監督はチャットや音声で質問するだけで必要な情報を入手でき、業務効率化と技術継承の両立に大きく貢献しています。こうしたオーダーメイド型のDXソリューションにより、燈は各企業の生産現場に深く入り込み、AIによる課題解決を次々と実装しています。
事業内容②:AI SaaS事業

二つ目の事業は、AI SaaS事業です。こちらは燈の最先端テクノロジーをSaaSプロダクトという形で提供するサービスで、現在は主に建設業のバックオフィス業務の効率化に特化したクラウドサービスを展開しています。
ファーストプロダクトである「Digital Billder(デジタルビルダー)」は、建設業向けに特化した管理業務(見積処理・発注・受領請求書処理・経費精算・原価管理)のDXサービスです。これらの業務が建設業特化で一気通貫で本サービス上で完結し、書類の運搬・整理・入力などがなくなります。
他にも建設業に特化した生成AIエージェント「光/Hikari」や、製造業に特化した生成AIエージェント「工/Takumi」など、それぞれの業界に特化したサービスを展開しており、業界全体の生産性向上に寄与しています。
資金調達:三菱電機から50億円を調達し企業評価額1000億円超 資本業務提携発表時の記者会見の様子(燈株式会社と三菱電機)

燈は2026年1月28日、三菱電機株式会社を引受先とする第三者割当増資により、50億円の資金調達を実施しました。これにより、同社の企業評価額は1,000億円超となります。
調達背景としては、今回引受先となった三菱電機がFAシステム・社会システムなどの幅広い事業領域とグローバルなネットワークを持ち、製造現場における膨大な「実データ」と、機器を制御する「ドメイン知識」を保有していることが挙げられます。
今回の資金調達を機に事業連携を加速し、三菱電機の「現場を動かす力(フィジカルなアセット)」と燈の「知能化する力(AIのアセット)」を掛け合わせながら、無人化・自立化された未来の工場の頭脳となるシステム「次世代産業OS」の開発を進めます。これにより、生産性の向上や技術の伝承といった日本産業全体が直面する課題に対し、AIが自律的に現場を最適化する新たな社会インフラを提供するとともに、グローバル市場における競争優位性の確立を目指します。
【本資金調達概要】
- 調達額:1,000億円
- 調達日:2026年1月28日
- 調達方法:第三者割当増資
- 資金使途:M&Aの推進、研究開発の加速
- 引受先:三菱電機株式会社
市場規模:産業DXの国内投資とAI導入トレンド

日本政府や民間企業はDX推進に積極的に投資しており、そのマーケット規模は年々拡大しています。富士キメラ総研の調査によれば、国内におけるDX関連投資額は2030年度に約9兆2,666億円に達する見込みで、2020年代後半にかけて倍増ペースの成長が予測されています。中でも製造業が約3兆円と最大の割合を占め、次いで物流・小売・建設など幅広い産業でデジタル化投資が拡大するとされています。
背景には、生産性向上や働き方改革への需要に加え、2024年のインボイス制度施行や電子帳簿保存法の改正といった法制度面の追い風もあります。例えば建設業界ではこれらへの対応が急務となり、受発注や請求処理のデジタル化ニーズが高まっています。実際、国内建設業のDX市場規模は2023年に約1,500億円に達し、2028年には3,000億円超へ倍増する見込みとも報じられています。燈株式会社のサービスは、まさにこの波に乗ったソリューションであり、今後の成長が期待されます。
会社概要
- 会社名: 燈株式会社(Akari Inc.)
- 所在地: 〒101-006 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ21階
- 設立: 2021年2月
- 代表者名: 野呂 侑希(代表取締役社長 兼 CEO)
- 公式HP: https://akariinc.co.jp/
まとめ
燈株式会社は、日本の産業界が抱える構造的な課題に真正面から挑むスタートアップです。現場主義を徹底し、AIによって人の知見と機械の力を融合する独自のソリューションは、多くの企業から信頼を獲得しています。その歩みは、日本のものづくり現場に明るい光を灯し、私たちのビジネスと生活をより豊かに変えていくはずです。まさに産業界を照らす「あかり」として、今後の躍進に大いに期待が寄せられます。
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