
長らく低価格帯が中心だった日本酒市場。国内消費はピーク時の4分の1以下にまで縮小し、産業全体が低利益構造から抜け出せずにいます。一方、世界に目を向ければワインは1本100万円で取引されることもあり、日本酒との価値ギャップは歴然です。こうした課題に挑むのが、株式会社Clearが手がける高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」。16年熟成のヴィンテージ日本酒「礼比(らいひ)」をはじめとする革新的な商品で、日本酒を世界に誇るラグジュアリー領域へと押し上げています。本記事では、株式会社Clearの事業内容や資金調達動向、市場規模などを詳しく紹介します。
事業内容:高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」の展開

株式会社Clearが運営する「SAKE HUNDRED」は、2018年に立ち上げられた高価格帯特化型の日本酒ブランドです。1.5万円〜26万円という、これまでの日本酒市場では珍しいレンジのみを扱い、グローバルラグジュアリーへの挑戦を掲げています。自社で醸造設備を持たず、全国8箇所のパートナー酒蔵と共同開発を行うファブレス型のビジネスモデルが特徴です。
ラインナップは、フラッグシップ「百光」(38,500円・税込)、「百光 別誂」、ミズナラ樽貯蔵の「思凛」、スパークリング日本酒「白奏」「深星」、デザート日本酒「天彩」など多彩で、いずれも卓越した酒質設計に基づいています。商品開発責任者は、全国で162名しかいない清酒専門評価者の認定を受けた元大手酒造メーカーの海外醸造責任者。専門性の高い議論を経て、商品が世に送り出されています。
なかでも注目を集めるのが、2026年5月に熟成16年を迎えたヴィンテージ日本酒「礼比」です。マイナス5℃の氷温環境で長期熟成された本商品は、10年以上の歳月を経ながらも新酒のようなフレッシュさを併せ持ち、極めてなめらかなテクスチャーを実現しました。「氷温熟成」「フレンチオーク樽熟成」「累乗仕込み」という3つの異例の挑戦から生まれた一本で、輝きのある黄金色と妖艶な香りが魅力です。アジア最大級の日本酒コンクール「Oriental Sake Awards 2025」では部門チャンピオンを受賞し、国際的な評価も獲得しました。
差別化のポイントは「時間価値」の表現にあります。効率では到達できない長期熟成という希少性を商品の核に据え、日本酒における新たな価値軸を提示しているのです。さらに31年熟成の「現外」(297,000円・税込)も存在し、超長期熟成カテゴリの旗手として位置づけられています。
主なターゲットは、ワインやウイスキーといった既存のラグジュアリー酒類を嗜む富裕層、そして大切な記念日や贈答シーンを彩りたいビジネスパーソン。リピート顧客の購買単価は71,560円(2024年5月時点)と新規顧客の42,969円を大きく上回り、累計1,000万円以上を購入する顧客も存在するなど、強固なファンベースが形成されています。
資金調達:累計24.4億円、海外展開を加速
株式会社Clearは2025年3月、HIRAC FUNDをリード投資家とし、既存投資家であるSMBCベンチャーキャピタルからの追加投資を受け、累計調達額が24.4億円に到達したと発表しました。
直近の資金調達概要
- 調達日:2025年3月
- 調達額:累計24.4億円(過去には総額12.95億円の調達実績あり)
- 調達方法:エクイティファイナンス
- 調達先:HIRAC FUND(リード)、SMBCベンチャーキャピタル ほか
調達資金は、SAKE HUNDREDの海外展開加速を主目的に活用される計画です。重点投資領域は次の3点。第一に、グローバル領域を担う人材・CxOの採用強化。第二に、各国でのペアリングイベントなどリアルプロモーションへの投資。第三に、海外メディアへのアプローチを通じたPR活動の拡充です。
SAKE HUNDREDは2020年から香港・シンガポールを皮切りに輸出を開始。2024年には台湾・タイ・メキシコなど新規展開国を増やし、過去最大の受注実績を達成しました。同年5月には第77回カンヌ国際映画祭のパーティー「JAPAN NIGHT」へ協賛し、世界各国を舞台に映画・音楽・アートとのコラボレーションを展開。日本酒が持つ情緒的価値・文化的価値を国境を越えて伝える戦略は、ブランディングと販路拡大の両面で大きな成果を上げています。
なお、代表の生駒龍史氏は国税庁主催「日本産酒類のブランド戦略検討会」の委員も務めており、日本の酒類産業の未来づくりにおいて公的な役割も担っています。
市場規模:拡大するグローバル日本酒市場とラグジュアリー領域の余白
グローバル市場は2033年に128億ドル規模へ

世界の日本酒市場は、2023年時点で89.5億米ドル規模に達しました。2024年から2033年までの年平均成長率は5.05%と予測されており、2033年末には128億米ドル規模に拡大する見込みです。2024年12月には日本酒や焼酎、泡盛といった「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、海外での注目度は一段と高まっています。
| 年 | 市場規模(億米ドル) |
|---|---|
| 2023年 | 89.5 |
| 2025年(予測) | 98.8 |
| 2027年(予測) | 108.7 |
| 2030年(予測) | 118.4 |
| 2033年(予測) | 128.0 |
国内市場の縮小と輸出の拡大
一方、国内市場は厳しい状況にあります。清酒の課税移出数量は、ピーク時(昭和48年度)の177万kLから令和4年度には約41万kLへと、約4分の1にまで減少しました。少子高齢化やライフスタイルの変化が主な要因です。
対照的に、輸出は好調を維持。2024年度の輸出実績は総額434.7億円(前年比105.8%)、数量3.1万kL(同106.4%)と過去最高を更新しました。国内縮小と海外拡大という二極化が、日本酒市場の構造的な特徴となっています。
ラグジュアリー領域は未開拓の巨大市場
SAKE HUNDREDが照準を合わせるのは、市場規模約4,300億円の日本酒マーケットそのものではなく、158兆円規模のグローバルラグジュアリーマーケットです。ワインが1本100万円で取引される一方、日本酒は2,000円前後が一般的で、10万円超の銘柄はほぼ存在しませんでした。この価格ギャップこそが事業機会の源泉です。
実際、フラッグシップ「百光」は2024年醸造分1万本の抽選販売に対し7万人の応募が殺到するなど、高価格帯への需要は確実に存在しています。同社は2040年に売上規模2,000億円、海外売上比率7割超を目指しており、ラグジュアリー領域での先行優位を着実に固めつつあります。
会社概要
- 会社名:株式会社Clear
- 所在地:東京都
- 設立年月日:2013年
- 代表者名:生駒 龍史
- 公式HP:https://clear-inc.net/
まとめ
株式会社Clearは、日本酒の「価値が安すぎる」という構造的課題に正面から向き合い、SAKE HUNDREDというグローバルラグジュアリーブランドを通じて産業全体の未来を切り拓いています。16年熟成の「礼比」をはじめとするヴィンテージ日本酒は、時間価値という新たな評価軸を市場にもたらし、日本酒の可能性を大きく広げる存在です。累計24.4億円の資金調達を背景に海外展開も加速度的に進んでおり、世界に誇る日本発のラグジュアリーブランドへと飛躍する未来が期待されます。日本の伝統文化に新たな経済価値を吹き込むその挑戦は、業界関係者のみならず投資家やビジネスパーソンにとっても見逃せない動きです。
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