
現代の消費者は、モノの価値だけでなく、その背景にあるストーリーや社会的意義にも関心を持つ時代になりました。ファッション業界も例外ではなく、サステナブルな視点を取り入れたブランドが注目を集めています。
こうした潮流の中、アフリカを拠点に教育・雇用・環境の課題に取り組み、ファッションの力で社会課題に挑む企業があります。それが、株式会社DOYAです。
同社はライフスタイルブランド「CLOUDY」や、“架空の大学”をテーマにした新ブランド「The University.」を展開し、ビジネスと支援の好循環を実現しています。
本記事では、株式会社DOYAの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。
事業内容①:アフリカの彩りを届けるライフスタイルブランド「CLOUDY」

DOYA社が展開する「CLOUDY(クラウディ)」は、創業以来の中核ブランドであり、ファッションを通じてアフリカに雇用と彩りを生み出すライフスタイルブランドです。ブランド名には「曇りの日をきちんと楽しんで生きる」というテーマが込められており、社会に山積する課題(=曇りの日)にも前向きに取り組もうというメッセージが示唆されています。
CLOUDYのプロダクトは、メンズ・レディス・キッズ向けのアパレルから、バッグ・ポーチなどの雑貨小物、そして近年はインテリア雑貨・食器にまで広がっています。2023年春には新ラインとなる「CLOUDY TABLE」を開始し、自社のアフリカンテキスタイル柄をあしらった陶器の食器やホームデコ商品を展開しました。同年6月には老舗洋食器メーカーのNIKKOと協業し、カラフルなオリジナル食器を発表、伊勢丹新宿店でポップアップショップを開催して話題を集めています。
CLOUDYのファッションアイテムにはアフリカ伝統の生地・素材が積極的に取り入れられており、鮮やかな色彩や大胆な模様が特徴です。これらの素材は現地のクリエイターや職人たちと共創し、生み出されたデザインを日本の消費者に届けています。
「社会課題をリデザインしながら、お客様とともにファッションの新たな可能性をつくり出す」というブランドコンセプト通り、消費者にとって魅力的なデザインとストーリー性を両立させている点が強みです。
事業内容②:“架空の大学”が渋谷に誕生―The University.が拓く新しい学びの場

2025年6月、渋谷の商業施設RAYARD MIYASHITA PARKにオープンした新ブランド「The University.」は、“架空の大学”をコンセプトに掲げる実験的なライフスタイルブランドです。
株式会社DOYAおよび認定NPO法人CLOUDYによる「CLOUDY」に続く新たな取り組みとして誕生し、その名の通り大学を模した世界観を持つ店舗を展開しています。コンセプトメッセージは「新たな才能のはじまりになる。」であり、売上の3%はアフリカでの学校建設資金に充てられる仕組みです。
店舗デザインにもユニークな工夫があります。ショップ名は「The University. -Club Room-」と称されており、大学の購買部ではなく「部室(クラブルーム)」をイメージした空間づくりがなされています。
実際の店舗は教室やロッカーを思わせる内装で、商品を買うだけでなく人々が集い語り合い、新しいプロジェクトが生まれる「場」となることを目指しています。店内に並ぶ商品の一つひとつには、アフリカの子どもたちへの教育支援や誰かの「好き」を応援するストーリーが込められており、顧客が商品を選ぶ行為自体が誰かの新たな一歩(“はじまり”)につながる仕掛けになっているのです。
このように「The University.」は、小売店舗の枠を超えてコミュニティと学びの場を提供しようとする意欲的なブランドです。ビジネス的には、新たな顧客体験を創造することでブランドロイヤリティを高めつつ、その活動自体がPR効果を生み出すという好循環を狙っていると言えるでしょう。
銅冶氏も「服で終わらないブランドをつくろうと思いました」と述べており、ファッションを入口に教育・コミュニティ事業へと発展させるビジョンが示されています。
資金調達:創業者の経歴と成長戦略

株式会社DOYAの創業者、銅冶勇人氏は慶應義塾大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券に勤務。その後、アフリカのスラムでの体験をきっかけにNPO法人CLOUDYを設立し、2015年に株式会社DOYAを創業しました。
外部資金調達の情報は現時点で非公開ですが、収益の一部を非営利活動に循環させる独自モデルを構築。事業収益による社会貢献という、持続可能な成長戦略を推進しています。
雇用創出や学校建設に加え、職業訓練校の設立やリサイクル工場の建設など、社会インフラ整備にも取り組んでいます。
市場規模:2033年までに世界のサステナブルファッション市場は331億米ドルに達する見通し

世界のサステナブルファッション市場は、2024年に81億米ドルと評価されており、今後も右肩上がりの成長が見込まれています。2024年から2033年にかけての年平均成長率(CAGR)は22.9%と非常に高く、2033年には331億米ドルに達する見通しです。これは、持続可能性や社会的責任を重視する消費者の増加、そして企業のESG対応の加速が背景にあります。
サステナブルファッションとは、単に「エコ素材」を使った衣服にとどまらず、デザイン、製造、流通、使用、廃棄に至る衣類の全ライフサイクルを通じて、環境保全と社会的公正の実現を目指す運動を指します。現在、世界中でその意義が再認識されており、市場としても拡大フェーズにある状況です。
成長の背景には、各国政府の積極的な政策支援が挙げられます。たとえば、EUの「持続可能な繊維戦略」や、米国FTCの「グリーンガイド」、国連のサステナブル・ファッション連合の原則などが、業界の透明性や資源効率化を後押ししています。素材の選定においても、オーガニックコットンや再生プラスチックの使用が義務化されつつあり、企業は戦略にサステナビリティの視点を取り入れざるを得ない状況です。
また、テクノロジーの進化も大きなドライバーです。ブロックチェーンやIoTによるサプライチェーンの可視化、AIやビッグデータを活用した需要予測と在庫管理、仮想サンプリング・3D設計による廃棄削減などが実現しています。さらに、バイオ素材やリサイクル繊維の開発、衣類の選別・再資源化技術の進展も、ファッション業界の「循環型社会」化を後押ししています。
こうした流れの中で、サステナブルファッションは単なる一過性のトレンドではなく、今後10年を見据えたビジネス戦略の重要項目です。株式会社DOYAのように、環境・社会課題に正面から取り組み、消費者と共感ベースで関係性を築くブランドが、新市場のリーダーとなる可能性を秘めていると言えるでしょう。
会社概要
- 会社名:株式会社DOYA
- 所在地:東京都港区赤坂8丁目12-19 メトロパーク赤坂201
- 設立年月日:2015年1月
- 代表者名:銅冶 勇人
- 公式HP:https://www.theuniv.org/
まとめ
株式会社DOYAは、社会課題に対してファッションという身近な手段でアプローチし、支援とビジネスの好循環を生み出しています。
「The University.」のような挑戦的なブランド展開により、今後も社会へのインパクトを拡大していくことが期待されます。
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