
日本の漁業・養殖業は、近年の海洋環境変化や担い手不足など複合的な課題を抱えています。生産量は令和5年で383万トンと、ピーク時(昭和59年)の約3分の1まで縮小しました。現場では、魚の計量や伝票作成など「紙と手書き」に依存した工程が残り、少人数の漁協職員に長時間労働が集中しやすくなっています。
今回紹介する株式会社ZIFISH(以下、ZIFISH)は、漁港の水揚げを起点にAI・IoTで計量と記録をデジタル化し、漁獲データを“使える資産”へ変えることで、水産業の高度化と地域産業の持続的な発展を目指すスタートアップです。
本記事では、株式会社ZIFISHの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。
事業内容①:スマート計量システム

「ZIFISHスマート計量システム」とは、既存の計量器(はかり)にカメラ付きタブレット端末を連携させた自動計量システムです。魚をはかりに載せて画面をタッチするだけで、重量を自動記録します。さらに画像AIで魚種を自動判別し、体長も推定する仕組みです。
また、生産者名・漁場名・漁法などの情報と紐づけて瞬時にデジタル化でき、手書き伝票を前提にした現場業務をペーパーレス化します。
テストとして導入した鹿児島県高山漁協での事例では、3人必要だった業務を2人で回せるようになったと報告されています。鮮度とスピードが最優先の水揚げ現場で、作業時間の短縮は品質維持と人手不足対策の両面に効果的です
さらに、大規模なシステム刷新ではなく、取得データをクラウドへ上げた上で各漁協が既に使っている会計ソフトへ自動入力(自動連携)できる設計なため、高額な改修が難しい小規模漁協でも導入しやすいことも強みです。
事業内容②:魚食文化の普及活動

またZIFISHは「水産業・魚食文化普及活動」も事業として掲げ、地魚の魅力を発掘・発信し、季節や地域ごとに異なる地魚の“おいしい食べ方”を広げる取り組みを進めています。
その一例として開かれたのが、「ZIFISH QUEST」です。 「ZIFISH QUEST」とは、東京や大阪などの都会に住む子供たちが、地域の水産業を通じて地方の子供たちと交流を図りながら、魚の漁獲方法や水産物流通について学び、それらの知識を活かしておいしい魚料理を自らの力で考えて社会実装することを体験するプログラムです。
「ZIFISH QUEST」は子供たちに普段の生活では体験できない世界を体験させる斬新なアイデアと社会的インパクトの高さが評価され、「なんぎんキャピタル賞」と「BIPROGY賞」を受賞しました。地方創生や食育とも相性がよく、データ活用を“次世代の担い手づくり”につなげようとする姿勢が読み取れます。
資金調達:地域投資家からの資本参加で基盤強化

ZIFISHはベータ・ベンチャーキャピタル株式会社、株式会社なんぎんキャピタル、株式会社薩ナグを引受先とする資金調達を実施しました。今回の資金調達は、調達額は非公表ですが現場に根ざした事業基盤をさらなる強化、収集される高付加価値なデータを活用した独自の成長戦略の推進に使われる予定です。
また、ZIFISHは2026年2月には取締役CXOとして甘利恵理子氏が参画し、事業拡大フェーズでのオペレーション構築やガバナンス強化を進める体制も整えました。甘利氏はソニーグループ株式会社で海外営業や商品開発PMなどを歴任したとされています。
市場規模:スマート水産業と漁業IoTが広げる成長余地

Spherical Insights & Consultingが発行した調査レポートによると、世界の漁業および養殖業向けIoT市場 規模は、2022年の4億6,817万米ドルから2032年には14億6,867万米ドルに拡大し、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は12.1%になると予想されています。養殖業の農場数の増加、革新的な製品、研究開発投資の増加、先進技術の急速な導入、タンパク質を豊富に含む水産食品の需要の高まり、養殖インフラ開発に対する政府の支援の増加などにより、漁業および養殖業向けIoT市場は前進する可能性があります。
ZIFISHは「水揚げ現場」を起点に、計量データを高頻度(リアルタイム)で集め、分析や販売支援、資源管理につながる基盤づくりを目指します。市場の“入り口”を押さえるプロダクト設計は、データ活用の連鎖を生みやすく、スマート水産業の成長とともに存在感を高めることが期待されます。
会社概要
- 会社名:株式会社ZIFISH(ジフィッシュ)
- 所在地:〒890-0045 鹿児島県鹿児島市武1丁目2-10 JR鹿児島中央ビル4F
- 設立年月日:2025年1月
- 代表者名:江幡 恵吾
- 公式HP URL:https://zifish.co.jp/
まとめ
ZIFISHは、漁港の“計量”という現場起点の課題に対して、AIスマート計量で紙業務を置き換え、漁獲データをリアルタイムに活用できる基盤へ発展させようとしています。資金調達や経営体制の強化とあわせ、地域の小規模漁協でも導入しやすい設計を武器に、現場の省人化と水産業DXの“型”を広げていく展開が期待されます。
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