最終更新日 26/05/14
国内スタートアップ

テックベジタス|「agrinex suite」で農家と実需者を直接つなぐ

システム開発・サービス農業
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(引用:公式HP

日本の農業は、担い手の高齢化や離農の進行、流通における需給ミスマッチなど、根深い課題を抱えています。2005年から2020年にかけて基幹的農業従事者は約4割減少し、平均年齢はすでに68歳を超えました。食料自給率(カロリーベース)も38%前後まで低下しており、生産基盤の縮小は食料安全保障リスクに直結しています。
こうした中、沖縄から「農業から顔が見える経済を取り戻す」というミッションを掲げ、農産流通DXに取り組む企業が注目を集めています。それがテックベジタス株式会社です。
本記事では、テックベジタス株式会社の事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。

事業内容:農産流通DXプラットフォーム「agrinex suite」

テックベジタスが開発・運営する「agrinex suite」は、生産・流通・消費を一気通貫でつなぐ農産流通DXプラットフォームです。中核となるのは、「agrinex農業革命」「agrinexハルモニ」の2つのプロダクトであり、農家と実需者(飲食店・ホテル・小売など業務用バイヤー)を直接つなぐ仕組みづくりを進めています。

事業内容①:agrinex農業革命 ― 生産情報をデジタル化する無料Webアプリ

「agrinex農業革命」は、生産者のアナログな情報をデジタル化し、収穫カレンダーと商品カルテとして整理・共有できる無料のWebアプリです。沖縄の農業現場から生まれたシンプルな設計が特長で、個人農家から法人農家まで幅広く利用されています。

(引用:公式HP

主な機能として、圃場ピンポイント天気予報、営農計画書作成、防除管理、気象分析、農機レンタルといった付加機能を備え、生産者の日々の営農活動を多面的にサポートします。さらに有料機能では、AIによる栽培提案や帳票出力なども提供され、農家の経営判断を後押しします。

これまで紙やExcelで管理されてきた栽培情報や収穫予測を、デジタル上で一元管理できるようになることで、農家自身の業務効率化はもちろん、後述するバイヤーとの取引にも直結する情報基盤が整います。

事業内容②:agrinexハルモニ ― 商談から決済までを一元管理するBtoBプラットフォーム

「agrinexハルモニ」は、agrinex農業革命で入力された商品カルテや収穫予測カレンダーと自動連携、「商談〜受発注〜決済〜販促」までを一元管理できるBtoBプラットフォームです。バイヤーは産地・作物・数量・時期・条件などで検索でき、「いつ・どの品目が・どのくらい揃うか」をオンライン上で一覧的に把握できます。

気になる農家にはその場でコンタクトし、メッセージ機能を通じて規格・価格・納品条件などを個別に調整可能です。さらに、テックベジタスが商流に介在することで、決済や納品品質に関するリスクが低減される仕組みも整えられています。個別審査をクリアした買い手会員は、当月締め翌月末払いの買掛仕入れにも対応します。

「顔が見える農産物」「沖縄県産の安定供給」「計画的な需給マッチング」へのニーズが高まる中、agrinexハルモニは飲食店・ホテル・小売業者にとって理想的な調達手段となり得るプラットフォームです。直販プラットフォームを活用する農家の中には、市場価格の1.5〜2倍で販売しているケースもあり、生産者の所得向上にも直結する仕組みといえます。


資金調達:カリーファンドからのインパクト投資を実行

2026年4月28日、沖縄で社会起業家を支援する株式会社うむさんラボが運営する地域課題解決型のインパクト投資ファンド「カリーインパクト&イノベーション1号投資事業有限責任組合(カリーファンド)」が、テックベジタス株式会社への出資を実行しました。

(引用:PR TIMES

出資の概要

  • 日付:2026年4月28日
  • 調達方法:インパクト投資ファンドからの出資
  • 調達先:カリーインパクト&イノベーション1号投資事業有限責任組合(運営:株式会社うむさんラボ)
  • 調達額:非公開

今回の出資は、テックベジタスが農家向けと流通・消費側向けの双方にアプローチする総合的な農産流通DXを構築し、農家と実需者の直接取引を促進することで、農家の経営安定と所得向上を実現しようとしている点が高く評価されたものです。沖縄発の再現性ある地域農業の成長モデルが全国に展開されていくことへの期待も示されています。

創業者・新垣裕一氏の歩み

代表取締役の新垣裕一氏は、琉球大学農学部、JAおきなわ、IT企業を経て、収穫予測・販売計画・集客戦略・プロモーションなど「ブランディング」と「マーケティング」を意識した農業コンサルティングに従事してきました。「農家の所得を上げ、若者がもっと農業に関心を寄せてほしい」という想いを出発点に、うるマルシェでの農産バイヤー経験を通じて得た現場知識を活かし、沖縄生産者の情報共有システムの構築に着手したことが、agrinex suiteの原点となっています。

テックベジタスとカリーファンドは、社会的インパクトを定量的に測定・マネジメントするためのKPIを設定し、定期モニタリング体制を整えています。


市場規模:拡大するスマート農業市場とDX需要

国内スマート農業市場は2030年に約788億円規模へ

矢野経済研究所によると、国内スマート農業市場の2024年度規模は前年度比115.2%の455億200万円と見込まれており、市場は確実な拡大基調にあります。2031年度には969億400万円まで拡大すると予測されており、年平均成長率でも高い伸び率が見込まれています。

(引用:矢野経済研究所

廃棄ロスを抑える産地毎のリレー出荷計画立案、農業用ドローン・ロボットのシェアリングサービスなど、新たな農業ICTサービスの登場も期待されています。

流通の非効率と直販プラットフォームの可能性

国産青果物の約86%は市場流通を経由しているとされますが、関係者間の情報共有が不十分であることが課題視されています。農水省の試算では、農産物の流通コストは小売価格の40〜60%を占めるとも言われており、直販比率を高めることは生産者の収益改善に直結します。

agrinex suiteのポジショニング

大手プレイヤーがプラットフォーム全体を狙う農業DX市場において、テックベジタスは「生産情報の可視化×直接取引促進」という一点突破型のソリューションで差別化しています。agrinexハルモニは農家の商品カルテ・収穫予測カレンダーとシームレスに連携し、バイヤーが欲しい時期・欲しい量を事前に把握できる点、メッセージ機能による柔軟な商談、農家の著作権フリー画像ライブラリ提供によるPOP・SNS活用まで一体的に支援できる点で、現場課題にダイレクトに刺さる強みを持っています。


会社概要

  • 会社名:テックベジタス株式会社
  • 所在地:沖縄県南城市大里字嶺井518番地2
  • 設立年月日:2022年11月1日
  • 代表者名:新垣 裕一
  • 公式HPhttps://www.techvegetas.com/

まとめ

テックベジタス株式会社は、沖縄の農業現場から生まれたリアルな課題意識をベースに、「agrinex農業革命」「agrinexハルモニ」という2つの軸で農産流通DXに取り組むスタートアップです。生産者のアナログな情報をデジタル化し、実需者と直接つなぐことで、農家の所得向上と地域農業の持続可能性を同時に追求しています。
カリーファンドからの出資により、社会的インパクトの測定・マネジメント体制も整いつつあり、「農業から顔が見える経済を取り戻す」というミッションの実現に向けた歩みは加速していくでしょう。沖縄から全国へ、再現性ある地域農業の成長モデルがどのように広がっていくのか、その動向に大きな期待が寄せられます。

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