
少子高齢化や人口減少が進むなか、自治体の現場では「人手不足」と「業務量の増加」という二重の課題が深刻化しています。住民サービスの質を維持したまま、限られたリソースで政策立案や議会対応を進めることは、従来のやり方では難しくなってきました。
こうした状況に対し、生成AIを活用して公共部門の「OS」そのものをアップデートしようとしているのが、
今回紹介するPolimill株式会社(以下、Polimill)です。同社が提供する行政向け生成AI「QommonsAI」は、すでに全国約800自治体・30万人の職員に利用されるまでに成長しています。
本記事では、Polimill株式会社の事業内容や資金調達動向、市場規模などを詳しく紹介します。
事業内容:行政シェアNo.1生成AI 「QommonsAI」

Polimill株式会社が開発・運営する「QommonsAI」は、自治体・官公庁向けに設計された行政AX(AI Transformation)基盤です。
国内外の法律・政策・論文・自治体事例など数千万件以上のデータをエビデンスとして活用し、自治体が抱える政策課題の解決を支援します。2026年5月時点で全国約800の自治体・約30万人の職員が活用しており、議会対応から政策立案、住民対応、広報業務まで、幅広い行政実務をカバーしています。
3つのAIが行政実務を多面的にサポート
QommonsAIの中核を成すのは、「議会対策AI」「公共サービスサポートAI」「社会福祉サポートAI」の3種類のAIです。「議会対策AI」は過去の議事録を分析し、議員の発言傾向から想定質問や回答案を自動生成することが可能です。「公共サービスサポートAI」は膨大な行政文書を探索し、住民からの問い合わせに対する的確な回答案を提示します。「行政サポートAI」は社会福祉や都市計画など専門分野ごとに最適化され、政策立案や業務効率化を後押しします。
行政現場に特化した独自技術と柔軟な提供形態
独自開発の「LawChunker」による法令検索精度は98%に達し、全国自治体文書を5秒以内に横断検索できる速度感を実現しました。GPT-5.4、Claude 4.5、Gemini 3 Pro、PLaMo 2.1 Primeなど主要4社・12モデルを1つのプラットフォームに統合し、用途に応じて最適なAIを選べる仕様です。国内リージョンでのデータ処理を保証する点も、機密性の高い行政情報を扱う上で大きな安心材料となります。
注目すべきは、各団体1,000アカウントまで無償で提供している点で、財政制約を抱える自治体にとっても導入ハードルが極めて低い設計です。RAG(検索拡張生成)の仕組みにより、自治体がデータを蓄積するほどAIがその自治体固有の文脈を学習し、「唯一無二の頭脳」へと進化していく点も大きな特徴です。
資金調達:シリーズAで総額約6億3,500万円を調達

Polimill株式会社は2026年1月、シリーズAラウンドにてエクイティおよびデットファイナンスにより総額約6億3,500万円の資金調達を実施したと発表しました。
調達ラウンドの概要
- 日付:2026年1月
- 調達額:総額約6億3,500万円(エクイティ+デットファイナンス)
- 調達方法:シリーズA(VCからのエクイティ+メガバンクからのデットファイナンス1億円)
- バリュエーション:約50億円
無料サービスを軸としながら約50億円のバリュエーションを獲得した点は、同社のビジネスモデルが投資家から高く評価されている証左でしょう。スタートアップ投資家のみならず、保守的な審査基準を持つメガバンクからもデットファイナンスを引き出した事実は、事業の持続可能性に対する信頼の表れだといえます。なおこれ以前にも、2024年10月にプレシリーズAラウンドで総額5億円超を調達しており、累計調達額は11億円を超える規模に達しています。
調達資金の使途
調達資金は、①MCPアプリストア「Qommons ONE」の開発・パートナー拡大、②2026年内に1,200自治体・80万ユーザー獲得に向けた全国展開の加速、③QommonsAI Pro・Qommons Connect・QommonsAI Advanceの研究開発、④GraphRAG×行政オントロジー基盤の構築、⑤ヒューマノイドの公共導入実証など、成長投資に充当される予定です。単なる業務効率化ツールではなく、長期的な公共インフラ構築を志向する経営方針が、投資配分にも色濃く表れています。
市場規模:生成AI市場と自治体DXの追い風
QommonsAIが対象とする市場は、「生成AI市場」と「自治体DX市場」の交差点に位置しており、いずれも急成長フェーズにあります。
生成AI市場のグローバルな成長
Fortune Business Insightsのレポートによると、グローバルの生成AI市場規模は2025年に約1,036億ドルに達し、2026年には約1,610億ドル(約24兆円)へと拡大する見込みです。わずか1年で約55%の成長が予測されており、AIエージェントの普及がさらなる市場拡大を後押ししています。日本国内でも生成AI市場は2024年に1,000億円を突破し、2030年前後には1兆円規模に達すると見込まれています。
自治体における生成AI導入の急加速
総務省が2025年6月末に発表した資料によると、生成AIを「導入済み」と回答した自治体の割合は、都道府県で87%、指定都市で90%、その他の市区町村で30%に達しています。「実証中」「導入予定」を含めると、都道府県と指定都市は100%、市区町村でも51%と、ほぼ全ての自治体がAI活用に動き出している状況です。2025年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でも、2026年度までに政府AI基盤「ガバメントAI」の構築が掲げられ、政策的にも強い追い風が吹いています。
QommonsAIの市場ポジション
無料提供によるデファクトスタンダード戦略を取るQommonsAIは、競合がRFP案件を待つあいだに自治体職員のPCへ深く浸透しています。全国自治体データがAPIで横断的につながる設計により、1自治体の知見が全国に波及するネットワーク効果も期待でき、市場の急成長を取り込む有力プレイヤーとして注目を集めています。
会社概要
- 会社名:Polimill株式会社
- 所在地:東京都港区虎ノ門3丁目8番27号 巴町アネックス2号館3階
- 設立年月日:2021年2月
- 代表者名:伊藤あやめ(CEO)、谷口野乃花(COO)
- 公式HP URL:https://polimill.jp/
まとめ
Polimill株式会社は、生成AI「QommonsAI」を通じて自治体のデジタル化を支援し、行政の「OS」そのものをアップデートしようとしているスタートアップです。全国約800自治体・30万人という圧倒的な利用実績、無料提供によるデファクトスタンダード戦略、独自RAG技術による行政特化型AIなど、競合と一線を画す独自性を備えています。シリーズAでの6億円超の調達も追い風となり、2026年内には1,200自治体・80万ユーザーへの拡大を目指す同社の今後の展開からは目が離せません。
「自ら治める」と書いて「自治体」と読む——その原点に立ち返り、行政の意思決定そのものを支える公共インフラを構築しようとするPolimillの挑戦は、人口減少時代の日本社会にとって極めて大きな意義を持つはずです。
New Venture Voiceでは、こうした注目スタートアップを多数紹介しています。Polimill株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめていますので、関連記事もご覧ください。

