最終更新日 26/07/10
国内スタートアップ

【宇宙建築の常識を覆す】株式会社Space Quartersが挑むDAIQとは

テクノロジー宇宙
Share this post
(引用:PR TIMES

 宇宙開発が加速する現代、通信衛星や宇宙ステーションといった「宇宙インフラ」への需要は急速に高まっています。しかし従来、宇宙構造物は地上で完成させたうえでロケットに載せて打ち上げるため、そのサイズはロケットのフェアリング(先端部)に収まる範囲に制限されるという根本的な課題を抱えていました。この制約が、次世代の大型通信アンテナや宇宙太陽光発電といった未来のインフラ実現を阻んでいます。

 こうした課題に真正面から挑むのが、東北大学発スタートアップの株式会社Space Quartersです。同社は「建材を打ち上げ、宇宙で組み立てる」という発想の転換により、宇宙建築の新時代を切り拓こうとしています。
 本記事では、株式会社Space Quartersの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。

事業内容:宇宙建築ロボットシステム「DAIQ」の開発

 株式会社Space Quartersが手掛けるのは、宇宙空間で大型構造物を自律的に組み立てるロボットシステム「DAIQ(ダイク)」の開発です。DAIQは、建材とともに衛星に搭載してロケットで打ち上げ、軌道上で複数種類の小型ロボットが協調しながら構造物を建築するというコンセプトを採用しています。

(引用:PR TIMES

3種類のロボットによる協調システム

DAIQは、「取り出し」「設置」「接合」という建築の全プロセスを3種類の専用小型ロボットが分担する仕組みです。まず、建材の軌道上への輸送および取り出しを担う「Tree」、次にパネル建材のエッジに設置されたレールを足場として移動し、複数台が協調して建材を運搬・設置する「Ant」、そして同社のコア技術である省エネルギー・小型電子ビーム溶接技術を搭載し、建材同士の位置をμm(マイクロメートル)オーダーで精緻に調整しながら精密かつ強固に接合するロボットが存在します。

従来方式の限界を打破

 これまでの宇宙構造物は、地上で完成させた完成品を打ち上げる方式が主流でした。この方式では、サイズがロケットのフェアリング径に制限されるうえ、打ち上げ時の激しい加速度や振動に耐える設計が必要となり、大型化・高機能化が難しいという課題がありました。

DAIQは、この常識を根本から覆します。建材を打ち上げて宇宙空間で組み立てるプロセスへと転換することで、フェアリングサイズや振動・加速度の制限から解放され、これまで実現不可能だった大型かつ高付加価値の宇宙インフラを圧倒的な低コストで建築することが可能になります。

幅広い用途と実証スケジュール

 DAIQが目指す宇宙インフラは多岐にわたります。静止軌道衛星とスマートフォンを直接つなぐ大型・高精度アンテナリフレクタ、大型宇宙ステーション、宇宙太陽光発電など、次世代インフラの中核となる構造物が対象です。2026年6月には地上モデルによる実証実験に成功し、2028年の宇宙空間での溶接実証、2029年の軌道上建築実証を経て、2031年の商用化を目指しています。

資金調達:シードラウンドで7億5,000万円を調達

 株式会社Space Quartersは、2025年10月にシードラウンドとして総額7億5,000万円の第三者割当増資を実施しました。

(引用:PR TIMES

調達の概要

  • 調達日:2025年10月
  • 調達額:7億5,000万円
  • 調達方法:シードラウンド(第三者割当増資)
  • リード投資家:Frontier Innovations
  • 引受先:慶應イノベーション・イニシアティブ、東急建設-GBイノベーション投資事業有限責任組合、XTech Ventures、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル

調達した資金は、開発チームの強化、試験設備の導入・改修、宇宙実証に充当される予定です。金融系VCから事業会社系ファンド、大学系ファンドまで多彩な投資家が参画しており、同社の技術と将来性への期待の高さがうかがえます。

公的機関・大企業との強固な連携

 資金調達に加え、Space Quartersは政府系・公的機関、そしてグローバルな宇宙機関との連携も進めています。NEDOの「SBIR推進プログラム」に「大型宇宙構造体の建設サービス提供に向けたモビリティ型電子ビーム溶接システムの開発」として採択されており、東北大学・大阪公立大学の研究者も参加しています。

(引用:PR TIMES

 さらに、フランス国立宇宙センター(CNES)から宇宙建築技術の研究を正式受託したほか、大林組から月面基地建築技術開発プロジェクトを受注し、レゴリス(月の砂)材料の接合技術に関する共同研究契約を締結しました。加えて、スカパーJSATが構想する次世代超大型宇宙構造物に対する建築検討業務も受注しており、国内外の大手プレイヤーからの信頼を着実に獲得しています。

市場規模:拡大を続ける宇宙インフラ市場

Space Quartersが挑む宇宙ビジネス市場は、世界的に急拡大しています。

世界の宇宙ビジネス市場

 世界経済フォーラム(WEF、2024年)によれば、宇宙ビジネスの世界市場規模は2023年時点で6,300億ドル(約100兆円)に達しています。今後は2030年に1兆1,600億ドル(約185兆円)、2035年には1兆7,900億ドル(約286兆円)まで拡大すると予測されており、10年強で市場規模がほぼ3倍になる見通しです。

宇宙インフラ市場と軌道上製造市場

より焦点を絞ると、世界の宇宙インフラ市場は2025年時点で1,609億7,000万ドルと評価されており、2034年には3,736億7,000万ドルへと、年平均成長率10.0%で成長すると予測されています。また、DAIQが直接関わる軌道上製造市場は、2026年の15億ドルから2030年には35.1億ドルへ成長すると見られ、年平均成長率は23.6%と極めて高い成長性を示しています。

(引用:fortune business insights

2025年には宇宙セクターの431社へ約553億ドルが投じられ、前年比65%増を記録するなど、投資マネーの流入も加速しています。

日本国内市場と政策的追い風

日本国内の宇宙ビジネス全体の市場規模は約1.2兆円で、内閣府は「宇宙産業ビジョン2030」の中で2030年代早期の市場規模倍増を目標に掲げています。2023年に設立されたJAXA宇宙戦略基金(10年で1兆円)も追い風となり、民間企業の新規参入が急増しています。こうした市場環境の中で、Space Quartersの「宇宙で建築する」という独自技術は、今後の宇宙インフラ拡大の中核を担うポテンシャルを秘めています。

会社概要

  • 会社名:株式会社Space Quarters
  • 所在地
    東京オフィス:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前五丁目コスモス青山サウス501
  • 設立年月日:2022年6月
  • 代表者名:大西 正悟(代表取締役CEO)
  • 公式HPhttps://space-quarters.com/

まとめ

株式会社Space Quartersは、「建材を打ち上げ、宇宙で組み立てる」という発想の転換により、宇宙建築の常識を根本から変えようとしている注目のスタートアップです。ロボットシステム「DAIQ」を軸に、電子ビーム溶接というコア技術を武器に、大型アンテナや宇宙ステーション、宇宙太陽光発電といった次世代インフラの実現を目指しています。

シードラウンドで7億5,000万円を調達し、フランス国立宇宙センターや大林組、スカパーJSATといった内外のトッププレイヤーとの連携も進む同社は、2031年の商用化に向けて着実に歩みを進めています。代表の大西氏が幼少期から抱いてきた宇宙への夢と、「人類が宇宙を生活圏とし可能性を広げ続ける世界を創る」というビジョンが、いま現実の技術として形になり始めています。急成長する宇宙インフラ市場において、日本発の技術がどのような未来を切り拓くのか、その動向から目が離せません。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。株式会社Space Quartersのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

システム開発はGenAiにお任せ!

 New Venture Voiceは、株式会社GenAiによって運営されています。
 当社は「未来を最速で実現する」をミッションに掲げ、ITコンサルティングやシステム開発、メディア事業を展開しています。テクノロジーの力で企業の成長を支援し、新たなビジネス創出を通じて、より良い未来の創造を目指しています。
 当社の詳細な事業内容やお問い合わせについては、以下よりご覧ください。

目次に戻る

タイトルとURLをコピーしました