
地方銀行や信用金庫は、融資を柱とする従来のビジネスモデルからの脱却を迫られています。金融庁が2025年12月に発表した「地域金融力強化プラン」では、地域企業への成長支援やDX支援が重要施策として掲げられ、取引先同士をつなぐ「ビジネスマッチング」への期待も高まりました。ところが現場では、担当者ごとにニーズ情報の記録がばらつき、案件化まで至らないという課題が長年くすぶってきました。この状況を生成AIの力で根本から変えようとしているのが、東京大学松尾研究室発のスタートアップ・株式会社neoAI(以下neoAI)です。本記事では、同社の事業内容や資金調達の動向、市場規模について詳しく紹介します。
事業内容:地域金融機関向けAIビジネスマッチングシステム
neoAIが提供するAIビジネスマッチングシステムは、取引先ニーズの登録から候補提示、案件化までを一気通貫で支援する生成AI活用型のSaaSです。営業担当者が面談メモや議事録を入力・添付すると、生成AIが内容を読み取り、業種・地域・取引条件・求める相手先・提供できる価値といった観点で情報を自動的に整理します。これまで担当者次第で質にばらつきがあったニーズ情報が、マッチングに使いやすい業務データとして組織全体に蓄積されていく仕組みです。
このシステムの独自性は、生成AIを単なるチャットツールや検索機能ではなく、ニーズ登録・情報の構造化・候補推薦・案件化・承認・運用管理までを一体化した「AIネイティブな業務アプリケーション」として設計している点にあります。競合サービスがキーワード検索型のマッチングを提供するのに対し、neoAIは生成AIによる「意味的マッチング」を実現。面談メモから顧客ニーズの本質を捉え、最適な相手先を提案できます。
2025年に本番導入した多摩信用金庫では、約3万5千先の取引先を有するなかで、直近月には約500件のビジネスマッチングニーズが登録され、うち3割以上が実際のマッチングへ進むという成果が出ています。既存業務フローを大きく変えずに導入できるため、現場の抵抗感が少なく、定着率が高い点も強みです。


機密データにも対応するオンプレミス版
金融機関の決算情報など、クラウド型生成AIサービスでは扱いにくい機密性の高いデータに対応するため、オンプレミス版も用意されています。クラウド版で実績のある高精度RAG(検索拡張生成)技術と使いやすいUIをオンプレミス環境内でも利用でき、データ主権の確保が必須となる金融業界のニーズに応えています。信用金庫や地方銀行のように、地域密着で機微な情報を扱う組織でも安心して導入できる設計です。
資金調達:重要インフラを担う金融6社との資本業務提携
neoAIはシードラウンドとして、PKSHAアルゴリズム2号ファンドをリードインベスターに、松尾豊氏らの個人投資家から総額約5,500万円を調達しました。資金は人材採用・組織拡大や、生成AIを活用したモジュール・プロダクトの研究開発に充てられています。
さらに注目すべきは、金融機関との資本業務提携の広がりです。2026年5月にはゆうちょ銀行との資本業務提携を公表し、ゆうちょ銀行がneoAIの株式1,900株(議決権比率1.605%)を取得しました。中長期的な生成AI活用・DXの推進を目的とした提携であり、代表取締役CEOの千葉駿介氏はゆうちょ銀行のAIアドバイザーにも就任しています。
続く2026年7月9日には、あおぞら銀行・城南信用金庫・九州電力・京都中央信用金庫・岩手銀行の5社と一挙に資本業務提携を締結。ゆうちょ銀行と合わせて、日本の重要インフラを担う計6社との連携体制を築きました。
事業成長も著しく、前年度比734%という急拡大を遂げています。金融領域ではすでに65の金融機関に導入されており、規制・セキュリティ・信頼性への要求が最も厳しい領域での社会実装モデルを確立しつつあります。AIソリューション事業部・AI SaaS事業部・neoAI Researchの三事業を軸に、東京大学松尾研究室発の研究知見を約3カ月というスピードでプロダクトへ実装する体制が、成長を支える原動力です。

市場規模:拡大する地域金融機関のDX支援ニーズ
政策的な追い風と地域金融力強化プラン
2025年12月、金融庁は「地域金融力強化プラン」を策定し、地方銀行や信用金庫といった地域金融機関に対して、中堅企業への成長支援やDX支援を促す方針を明確に打ち出しました。AI活用による業務改革も重要施策に位置づけられており、地域金融機関のAI導入は今後さらに加速する見込みです。
中小企業支援の新たなフェーズ
地方銀行・信用金庫・信用組合による中小企業支援は、新たな段階に入っています。融資だけでは事業成長を支えきれないという認識が広まり、地方企業のビジネスマッチング業務に取り組む動きが全国で活発化しました。日本には100を超える地方銀行と信用金庫が存在し、それぞれが数千から数万の取引先を抱えていることを踏まえると、AIビジネスマッチング領域の潜在市場規模は極めて大きいといえます。
地域DX推進の課題とneoAIのポジション
日本銀行のワークショップでも指摘されているとおり、地域企業ではDXの必要性に対する認識や理解が十分に進んでおらず、IT/DXスキル不足の企業が多いことが課題です。こうした状況下で、地域金融機関には、信頼性と地域ネットワークを活かしたDX支援ハブとしての役割が期待されています。
neoAIはAIエージェントプラットフォーム「neoAI Chat」「neoAI Work」を金融機関の全社的なAI活用基盤として提供し、重要インフラに求められるセキュリティやガバナンスに応えながら、協働で得た知見をもとに基盤を継続的に進化させる方針です。加えて、信用金庫生成AI共同研究会「GEN×しんきんラボ」をsupported by neoAIとして推進しており、全国の信用金庫との連携も広がっています。政策的追い風と実装力の両輪で、地域金融機関市場のリーディングプレイヤーとしての地位を固めつつあります。
会社概要
- 会社名:株式会社neoAI
- 所在地:東京都港区虎ノ門一丁目10番5号KDX虎ノ門一丁目ビル3階
- 設立年月日:2022年8月
- 代表者名:千葉 駿介
- 公式HP:https://neoai.jp/
まとめ
株式会社neoAIは、東京大学松尾研究室発の研究知見と現場実装力を融合させ、地域金融機関の本業支援を変革するAIビジネスマッチングシステムを展開しています。多摩信用金庫での本番導入実績、ゆうちょ銀行をはじめとする重要インフラ6社との資本業務提携、前年度比734%という驚異的な成長率が、同社の技術力と社会実装力を物語っています。
地域金融力の強化が国の政策として明確に打ち出されるなか、neoAIが担う役割は今後ますます大きくなりそうです。融資中心の伝統的な銀行業務から、AIを活用した本業支援・DX支援への転換を金融機関と共に実現していく同社の挑戦は、日本の地域経済全体の活性化にもつながっていくはずです。
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