最終更新日 26/09/14
国内スタートアップ

メトロウェザーが挑む不審ドローン検知|風の計測技術で空の安全を守る

テクノロジー
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(引用:公式HP

 ウクライナ情勢や重要インフラを狙った脅威事案を背景に、「不審ドローン」への対策は世界的な喫緊の課題となりました。空港・発電所・防衛拠点への侵入リスクは高まる一方、既存のレーダーだけでは低高度を飛ぶ小型ドローンを捉えきれない弱点も浮き彫りになっています。
 京都大学発スタートアップの株式会社メトロウェザーは、独自の風計測技術「ドップラー・ライダー」を応用し、低高度領域の不審ドローン検知装置の実用化を進めています。ディープテック×ディフェンステック×AIを掛け合わせ、ドローン前提社会に不可欠なインフラの提供を目指す注目企業です。  本記事では、同社の事業内容や資金調達動向、市場規模などを詳しく紹介します。

事業内容:風の計測技術を応用した不審ドローン検知ソリューション

 株式会社メトロウェザーは、リモートセンシング技術と独自の信号処理技術によって、風の動きをリアルタイムで3次元に可視化する「ドップラー・ライダー」を軸に事業を展開しています。このコア技術をセキュリティ分野に応用したのが、不審ドローン検知装置「物体検知ライダー」です。

(引用:公式HP

サービス概要と社会的意義

 ドップラー・ライダーは、空気中に浮遊する微細なチリ人体へ無害な赤外線レーザーを照射し、その反射波を受信することで半径10〜15km圏内の風向・風速を3次元で測定する装置です。この技術基盤を応用し、既存のレーダー等では捉えきれない領域を補完する「物体検知ライダー」の開発が進められています。

 ウクライナ情勢を契機として、戦場での自爆型ドローン活用が国際的な脅威となり、民間レベルでもセキュリティ意識が急速に高まりました。空港、発電所、防衛拠点などの重要インフラ防護は待ったなしの課題であり、同社の技術はこの領域で大きな社会的意義を持ちます。

差別化ポイントとターゲット

 同社の強みは、ライダーが得意とする「低高度」領域にあります。電波で測定するレーダーが高高度の検知に強い一方、イランが開発した自爆型ドローン「シャヘド」のように低高度を飛ぶ機体に対しては、ライダーが真価を発揮します。同社の「Wind Guardian」は有効半径約15kmを誇り、シャヘドクラスの脅威に対して目標到達まで約10分のリードタイムを確保できる計算です。

 加えて、長年の大気リモートセンシング研究で培った信号解析アルゴリズムと、ハード・ソフト一体で最適化した国産ライダー設計により、本体は約65cm四方まで小型化されました。可搬性も高く、高所への設置も容易です。海外競合と比較して高スペックでありながら、圧倒的な小型サイズと低製造コストを両立している点が大きな差別化要因です。「Wind Guardian」は世界的なデザイン賞「Red Dot Design Award」のプロダクトデザイン部門も受賞しました。

主なターゲットは、防衛・安全保障を担う組織、空港・発電所などの重要インフラ運営者、そして「空飛ぶクルマ」やドローン配送を推進する民間事業者です。
EXPO 2025 大阪・関西万博では、ATCビル屋上や交通ターミナル内にドップラー・ライダーが設置され、上空の風況モニタリングに加え、未確認機体の検知にも活用されました。米国でもNASAのラングレー空軍基地周辺に2台のライダーが設置され、試験観測が進んでいます。

(引用:公式HP

資金調達:シリーズBで15億円、三菱重工と資本業務提携

メトロウェザーはシリーズBラウンドにおいて、インキュベイトファンドならびに三菱重工業を引受先とする第三者割当増資により、総額15億円の資金調達を実施しました。これで累計調達額は35.6億円に達しています。本ラウンドでは引き続き2ndクローズを予定しており、シリーズB全体では総額25億円の調達を目指しています。

調達サマリー

  • 調達時期:シリーズB(2025年)
  • 調達額:15億円(1stクローズ)/シリーズB全体で25億円を目標
  • 調達方法:第三者割当増資(シリーズB)
  • 主な引受先:インキュベイトファンド、三菱重工業

今回の調達を通じ、三菱重工が持つ防衛・インフラ分野の知見と、メトロウェザーのリモートセンシング技術を組み合わせ、安全保障分野・重要インフラ防護への展開を加速させる方針です。

これまでの調達推移と戦略的パートナー

 過去の調達実績を時系列で振り返ると、シリーズAラウンドで約7億円、シリーズAエクステンションラウンドで3.6億円・1.5億円を追加調達、その後プレシリーズBラウンドで総額8.5億円を調達しています。あわせて、東京計器・古河電気工業との資本業務提携も締結。東京計器は航空機搭載品や艦艇搭載品を中心とした防衛装備品の開発・製造実績を持ち、ドップラー・ライダーを防衛装備品化するための生産技術や販売体制を担います。

 過去の投資家にはNTTファイナンス、DRONE FUND、MOL PLUSといった有力プレイヤーが名を連ね、防衛・海運・通信・ドローンなど多様な業界からの期待の高さがうかがえます。「Deep tech × Defence tech × AI tech で空の安全を実現する」をテーマに掲げ、風計測・物体検知が可能なドップラー・ライダーを中核製品として位置付けています。

市場規模:急拡大するアンチドローン市場とデュアルユース戦略

国内ドローンビジネス市場の動向

インプレス総合研究所などの調査によれば、2024年度の日本国内におけるドローンビジネスの市場規模は4,371億円と推測され、2025年度は4,973億円に拡大する見込みで、2030年度には9,544億円に達すると予測されています。

(引用:インプレス総合研究所

グローバルのアンチドローン市場

セキュリティ用途に絞ったグローバルのアンチドローン市場は、さらに高い成長性を示しています。2025年の21億米ドルから、2035年には203億9,000万米ドルに達すると予測され、2026年から2035年のCAGR(年平均成長率)は25.5%と極めて高い水準です。ドローンの急速な普及に伴い、重要施設への不審ドローンの接近・侵入が世界的に深刻化しており、防衛のみならず、空港や発電所などの重要インフラ防護でも需要が急拡大しています。

メトロウェザーの市場ポジション

同社は、風況のリアルタイム3次元把握という独自の強みに、不審ドローン等の物体検知機能を掛け合わせることで、他社が容易に模倣できないポジションを築きつつあります。ドローン前提社会における必須インフラとして、防衛と民間の双方で活用が期待される「デュアルユース」戦略を展開している点も特徴です。2025年から本格化する量産モデルの提供を通じ、グローバル市場での安全・安心インフラ構築を目指しています。

会社概要

  • 会社名:株式会社メトロウェザー(Metro Weather Co., Ltd.)
  • 所在地:京都府宇治市
  • 設立年月日:2015年
  • 代表者名:代表取締役CEO 古本 淳一
  • 公式HPhttps://www.metroweather.jp/

まとめ

メトロウェザーは、京都大学で培われた最先端の大気リモートセンシング技術を礎に、風計測用のドップラー・ライダーを国産で開発してきたディープテック企業です。コア技術を応用した不審ドローン検知装置は、低高度領域という既存レーダーの弱点を補完するソリューションとして、防衛から重要インフラ防護、空飛ぶクルマの安全運航まで幅広い活用が期待されています。三菱重工業や東京計器、古河電気工業といった有力企業とのパートナーシップに加え、累計35.6億円超の資金調達を背景に、量産化とグローバル展開のフェーズへと突入しました。急拡大するアンチドローン市場において、日本発の技術で世界の空の安全を支える存在となるか、今後の動向から目が離せません。

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