
日本の医療現場には膨大な診療データが蓄積されています。しかし、その多くはフォーマットが統一されておらず、研究や創薬への活用が進みにくい状況です。電子カルテやレセプトといったリアルワールドデータ(実臨床で得られるデータ)は、本来であれば新薬開発や希少疾患の発見に大きな価値をもたらすはずですが、データ整備の難しさから「眠ったまま」になっているのが実情です。
株式会社Yuimediは、こうした医療データを独自のAI技術で整理・標準化し、製薬企業や研究機関が使える状態へと変換することで、医療の質を引き上げようとしています。
本記事では、株式会社Yuimediの事業内容や資金調達動向、市場規模などについて詳しく紹介します。
事業内容①:医療データ標準化ソフトウェア「Yuicleaner」と「YuiData」
Yuimediの中核事業のひとつが、医療データを国際標準規格に変換するソリューションです。
AIを活用したノーコードのデータクレンジングソフトウェア「Yuicleaner」は、フォーマットがバラバラな医療データを分析可能な形に整える役割を担います。オフラインで動作するため、機密性の高い医療データも安全に扱える点が大きな特長です。データ変換の証跡をたどれる仕組みも備えており、品質を担保しながら整備を進められます。

加えてYuimediは、リアルワールドデータを国際標準規格「OMOP CDM」に変換する標準化事業も展開しています。OMOP CDMは世界中の医療データを共通フォーマットで扱うためのスキーマで、これに準拠すれば国際的な研究比較や多施設共同研究が容易になります。社内の専門家による手動マッピングに、AIによる自動マッピングを組み合わせることで、変換作業の効率を大幅に高めている点もポイントです。
製薬企業向けには「YuiData」というRWDサービスを提供しており、提携医療機関の電子カルテデータをもとに、最短週次での患者発見から緻密なペイシェントジャーニー分析までを実現します。
データ提供協力病院数は約30施設に達し、JMDCとの協業による国内最大規模のRWDのOMOP CDM対応、MEDIS標準病名マスター全件のOMOPコンセプト変換評価など、業界横断の取り組みも進行中です。製薬企業の研究開発担当者にとっては、創薬や市販後調査の精度を高める強力な基盤となるサービスです。
事業内容②:ヘルスケア特化型AIサービス「YuiQuery」

もうひとつの柱が、自然言語で医療データ研究を実行できるヘルスケア特化型AIサービス「YuiQuery」です。病院の電子カルテDBから生成AIを用いて必要な情報を抽出するSaaSプロダクトで、専門的なクエリ言語の知識がなくとも、知りたいことを自然な言葉で問いかけるだけでデータを取り出せます。
製薬企業向けの代表的な活用例が「症例探索アラート」です。たとえば肺がんのセカンドライン治療(一次治療後に行う二次治療)の適応候補患者を探したい場合、病名・ファーストラインで使用した薬剤名・副作用の発現状況などをアラート条件に設定すれば、前週にどの病院のどの診療科で該当患者が何名いたかという通知が届きます。条件設定はYuimediの元臨床医や病院データに精通したコンサルタントが伴走するため、製薬企業のニーズに即した精度の高い探索が可能となります。
このサービスがレセプトデータではなく電子カルテに基づいている点も独自性のひとつです。
レセプトには反映されない検査・処置のオーダー状況や検査結果も活用するため、患者の病態をより立体的に捉えられます。Yuimediが目指す方向性のひとつが、未診断の希少疾患の発見です。電子カルテを統計処理することで、希少疾患に該当する可能性のある症状を抽出し、潜在患者数を推定できる余地があると考えられています。
資金調達:累計15億円超、米国展開も視野に
Yuimediは創業以来、段階的に資金調達を重ねています。
2024年7月には米国法人を設立すると同時に、DG Daiwa Venturesをリード投資家とし、既存投資家及びあおぞら企業投資より合計4億円を追加調達しました。この時点で累計資金調達額は9.5億円に到達しています。米国法人はデラウェア州に設立され、事業所はマサチューセッツ州ボストンに構えました。ボストンには世界最大のライフサイエンス・クラスターが形成されており、事業展開の場として最適と判断された背景があります。
その後、2026年2月のファーストクローズではDG Daiwa Ventures、三井住友信託銀行、HearstLab、SMBCベンチャーキャピタル、千葉道場、インキュベイトファンド、D4Vを引受先として総額4億円を調達。続く2026年5月のセカンドクローズでは、農林中金キャピタルとDarwin Venture Managementを引受先とする第三者割当増資により2億円を追加調達し、同ラウンドの調達総額は6億円となりました。

調達した資金は「YuiData」と「YuiQuery」両事業の強化に充当される予定で、YuiDataでは事業開発・セールス人材や専門職人材を、YuiQueryでは開発人材を拡充する方針が示されています。国内外のVCに加え、メガバンク系・地銀系・事業会社系まで多様な投資家が参画しており、Yuimediが手掛ける医療データ事業の社会的意義と成長性が高く評価されている証だといえます。
市場規模:拡大が続くヘルスケアデータ市場
世界のヘルスケアアナリティクス市場
調査会社の各種レポートによると、世界のヘルスケアアナリティクス市場は2023年時点で約400億ドル規模とされ、2030年には1,500億ドルを超える水準まで成長すると予測されています。年平均成長率は20%前後と非常に高く、AIや機械学習を活用したRWD解析がその牽引役となっています。
国内のリアルワールドデータ市場
国内に目を向けると、製薬企業によるRWD活用は年々拡大しており、医薬品開発・市販後調査・薬価交渉など、多岐にわたる場面で需要が高まっています。厚生労働省も次世代医療基盤法のもと医療情報の二次利用を推進しており、国全体として医療データ利活用を加速させる流れが鮮明になっています。
Yuimediのポジショニング
Yuimediは、データの「変換・標準化」と「AI解析」の両方をワンストップで提供できる稀有なプレイヤーです。
琉球大学病院との協働、国立がん研究センターとの研究用構造化データベース開発に関する共同研究契約、名古屋大学医学部附属病院との診療統計データ活用プロジェクトなど、信頼性の高い医療機関との連携実績を積み重ねており、国際標準規格OMOP CDMへの対応も進めています。日米双方で事業を展開している点も、今後のグローバル市場での競争力を高める要素となるでしょう。
会社概要
- 会社名:株式会社Yuimedi
- 所在地:東京都港区
- 設立年月日:2020年
- 代表者名:グライムス英美里
- 公式HP:https://yuimedi.com/
まとめ
株式会社Yuimediは、医療データの整備という地道ながら極めて重要な領域に正面から取り組み、AIと専門知見を組み合わせて製薬企業や研究機関に新たな価値を届けているスタートアップです。「医療をアップデートするデータ利活用インフラの構築」「データを通じて必要な医療を必要な患者さんへ届ける」というミッションのもと、創業者のグライムス英美里氏らが切り拓く未来は、希少疾患患者の発見や創薬の加速など、社会的インパクトの大きい成果へとつながっていく可能性を秘めています。日米両国でのさらなる事業拡大、そして医療データ活用のスタンダードとなる日が、着実に近づいています。
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