
南海トラフ地震や首都直下地震のリスクが現実味を帯びるなか、災害時に「誰がどこで助けを求めているのか」を把握する仕組みは、依然として整っていません。1995年の阪神・淡路大震災では、情報が届かないことで失われた命が数多くありました。あれから30年、スマートフォンやIoT技術の進化を背景に、防災のあり方そのものを刷新する動きが加速しています。
兵庫県神戸市に拠点を構えるステラクレードル株式会社(以下、ステラクレードル)は、「今まで救えなかった命を、救える命へ」を理念に掲げ、自助・共助・公助を一気通貫でつなぐ次世代型防災DXプラットフォームの開発を進めています。
本記事では、ステラクレードル株式会社の事業内容や資金調達動向、市場規模などについて詳しく紹介します。
防災減災プロジェクト「WORLD防災センター(WDPC)」

ステラクレードルは、防災減災プロジェクト「WORLD防災センター(WDPC)」を推進しており、その中で南海トラフ巨大地震、首都直下地震、豪雨災害、都市型水害、富士山噴火などの複合災害時代に備え、発災直後に命の所在を見失わないための防災DX「わたしはココ」および「レスキューロケーター」構想を発表しました。
事業内容①:自動で命を守る防災アプリ「わたしはココ」

「わたしはココ」は、スマートフォンの位置情報やセンサーを活用し、災害時に本人の所在や状況を自動で発信する無料の防災アプリです。最大の特徴は、スマホのセンサーが異常を検知し、自動で家族や知人に危機を知らせる特許技術(特許第7379768号)にあります。被災者がパニックで操作できない状況でも、アプリ側が能動的に「助けて」を発信する設計です。
従来の安否確認サービスの多くは、利用者自身がボタンを押す、メッセージを返信するといった「自発的な操作」を前提としていました。しかし、災害直後の混乱や負傷時に、その操作自体が困難であることは少なくありません。「わたしはココ」はこの常識を覆し、受動型の安否確認という新しい設計思想を打ち出しました。
加えて、通信圏外でもBluetoothメッシュ通信を用いて、近隣ユーザー間でSOSや位置情報を自動共有できる仕組みも備えています。これにより、被災現場に居合わせた人同士が「誰かを助けられる」共助ネットワークを自動形成できるのです。
対象ユーザーは、一般の個人から高齢者、子ども、外国人観光客まで幅広く、iOSアプリは世界8言語に対応。無料で提供されるため、導入のハードルは極めて低く抑えられています。家族の安否を即座に知りたい世帯、要配慮者を抱える施設、観光地での災害対応に課題を持つ自治体まで、有用な活用先は多岐にわたります。
事業内容②:救助機関の初動を支える「レスキューロケーター」

「レスキューロケーター」は、「わたしはココ」などから集まる要救助者情報を地図上に集約・可視化し、自治体・消防・自衛隊・医療機関などの初動判断を支援する防災DXシステムです。2024年10月にベータ版がリリースされ、政府自治体・消防・自衛隊・医療関係向けの専用プラットフォームとして提供が始まりました。
自治体が長年抱えてきた課題のひとつが、災害発生時の状況把握の遅れです。紙の住民台帳や声かけによる安否確認では、広域災害には対応しきれません。レスキューロケーターは、登録者全員の被害状況や救助要請をリアルタイムで地図上に表示し、「誰が」「どこで」「どのような状態か」を一目で把握できる仕組みを実現します。
ステラクレードルが重視しているのは「発災後10分」という時間軸です。代表の山本法義氏は、「人は10分でも心停止すれば死んでしまう。発災してからこの10分がすべて」と語り、従来言われてきた「72時間の壁」よりも早い段階での情報把握こそが命運を分けると主張しています。
自治体・消防のほか、企業のBCP(事業継続計画)、学校、福祉施設、交通事業者、イベント運営者など幅広い導入先が想定されています。「わたしはココ」と組み合わせれば、自助から公助までを単一プラットフォームで完結させられる点が、他の防災ソリューションとの決定的な差別化要因となっています。
創業背景:「救えなかった命」への想いと、常識を疑い続ける探究心
ステラクレードルの代表である山本氏は、大手電機メーカーでキャリアを積んだ後、50歳で早期退職という決断を下しました。その後、「人工重力」と「防災システム」という、一見すると交わらない二つの領域で起業の道を選びます。その背景にあるのは、1995年の阪神・淡路大震災で目の当たりにした「救えなかった命」への深い悔恨と、常識を疑い続ける探究心でした。
倒壊した街、届かない情報、聞こえない声――復興活動に関わるなかで生まれた「もし発災直後に要救助者の居場所が分かっていれば、救えた命があったのではないか」という問いが、現在の事業の原点になっています。
現在、同社は社会実装フェーズに入り、自治体、消防、学校、企業、福祉施設、工場、交通事業者、イベント運営者などとの実証連携を精力的に進めています。特に、都市型災害、高層・地下空間、子どもの見守り、水害対策、車内置き去り防止、企業BCP、防災教育の各分野で連携先を募集中です。
2025年5月にはデジタル庁の「防災DXサービスマップ・サービスカタログ」への掲載が実現し、政府公認プラットフォームとしての信頼性も獲得しました。展示会出展も活発で、RISCON危機管理産業展2023、震災対策技術展、東京国際消防防災展2023などに登壇し、認知拡大を着実に進めています。
市場規模:拡大する防災DX市場と高まる社会的要請
矢野経済研究所の調査によると、防災情報システム市場は、2024年の184億円と推計され、2026年には190億円へと拡大する予測されています。
南海トラフ地震・首都直下地震といった大規模災害への警戒が強まるなか、防災への関心は急速に高まっています。実際、2024年1月の能登半島地震以降、防災商品の売上は前年比2桁の伸長を続け、南海トラフ地震臨時情報が発表された同年8月には前年比300%超を記録しました。
自治体職員の減少や、高齢者・障害者・乳幼児・外国人といった要配慮者の増加など、社会構造の変化も防災DXへの需要を強く押し上げています。
防災DX市場におけるステラクレードルのポジション
近年では、各種センサー、ドローン、クラウド、ビッグデータ、AI、人工衛星などを活用した防災対策の実用化が進んでいます。デジタル庁も「防災DXサービスマップ・サービスカタログ」を整備し、自治体調達のデジタル化を加速させています。
こうした流れの中で、特許技術に裏打ちされた自動発報機能と、自助・共助・公助を一気通貫でつなぐアーキテクチャを持つステラクレードルは、独自のポジションを築きつつあります。安否確認と救助初動をシームレスに結ぶ「世界初の安否確認システム」として、今後の市場拡大の波に乗る可能性を秘めています。
会社概要
- 会社名:ステラクレードル株式会社
- 所在地:〒652-0898 兵庫県神戸市兵庫区駅前通5ー3-11
- 設立年月日:2025年6月26日
- 代表者名:山本 法義
- 公式HP:https://www.wdpc.info/
まとめ
ステラクレードル株式会社は、「今まで救えなかった命を、救える命へ」という理念を掲げ、防災DXの新たなスタンダードを切り拓こうとしている注目企業です。スマホのセンサーが異常を自動検知してSOSを発信する「わたしはココ」と、要救助者情報を地図上に可視化する「レスキューロケーター」は、自助・共助・公助の壁を取り払い、発災直後の「10分」を救命のための時間に変えるポテンシャルを持っています。
南海トラフ地震や首都直下地震という現実的なリスクが迫る今、同社の取り組みは私たち一人ひとりの命と暮らしに直結します。デジタル庁公認カタログへの掲載や各種展示会での発信を通じて社会実装が進むなか、今後の自治体・企業との連携拡大に大きな期待が寄せられます。
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