
がんは日本人の2人に1人が罹患すると言われる、極めて身近な病気です。医療技術の進歩で入院から通院治療へのシフトが進む一方、患者は日常生活と治療を両立させるという新たな課題に直面しています。仕事を続けながら通院するがん患者は約49.9万人にのぼり、心身の負担や医師への相談の難しさに悩むケースが少なくありません。
こうした課題に対し、デジタルの力で患者の毎日に寄り添うサービスを展開しているのが、小野薬品工業の100%子会社として設立された株式会社michiteku(以下、michiteku)です。同社はがん患者向け生活支援アプリ「YOHA(よは)」を通じ、治療と生活の両立をサポートしています。
本記事では、株式会社michitekuの事業内容や資金調達動向、市場規模などを詳しく紹介します。
事業内容:がん患者向け生活支援アプリ「YOHA」

michitekuが展開する「YOHA」は、がん患者の日常生活と通院治療の両立を支えるために開発された生活支援アプリです。無料で提供されており、会員登録すれば全機能を利用できます。
「日常モード」と「通院モード」で寄り添う独自設計

最大の特徴は、利用者の状況に応じて切り替えられる「モード機能」です。普段は「日常モード」で日々の記録や気分の記録を行い、通院日には「通院モード」に切り替えることで、持ち物リストや医師への質問まとめなど治療に専念しやすい画面が表示されます。通院モードでは「同じ日にアプリを使って通院している人数」が表示され、「自分だけが治療に向き合っているわけではない」という安心感や共感が得られる設計です。
AIを活用した感情整理と医師相談支援

YOHAには「今日の気分」を記録する機能があり、言葉にしにくいその時の気分をワンタップ保存できます。気分の変化は、週次と月次でレポートで振り返ることも可能です。

さらに、診察で話したいことを言葉にしやすくする「My診察準備」機能を搭載しています。こちらは、気になるキーワードを入力すると、AIが医師に伝えやすい質問づくりを手伝う機能で、 診断直後・治療中・治療後の段階に応じて質問例が自動で切り替わるため、医師に何を聞けばよいか分からない患者の不安を解消します。
日々の暮らしを支える多彩な機能
このほか、日常の記録(メモ・画像・URL添付)、通院予定管理、端末カレンダー連携、お薬や症状のリマインダー、週ごと・月ごとのレポート機能などを搭載。治療中の患者だけでなく、家族や治療後のフォローを必要とする方にも幅広く役立つツールです
創業者の経歴と起業の背景
初代代表取締役社長の三戸仁氏は、SIer・アパレルSPA・化学メーカーを経て2017年に小野薬品工業へ入社。経営企画部でDXを推進した後、新規事業を担当し、イノベーション人財育成プログラム「Ono Innovation Platform(OIP)」を企画しました。2021年10月にBX推進部長へ就任し、2022年11月にmichiteku代表取締役社長へ就任しています。
三戸氏は「患者さんの一番のお困りごとを解決してこそ意味がある」との考えのもと、課題ドリブンで事業開発を進めてきました。がん患者が告知から長期にわたり多様で深い悩みを抱える点に着目し、小野薬品工業の主業であるがん治療薬との相乗効果も期待できることから、デジタルサービス開発の対象としてがん患者向け領域を選定しています。
M&Aと事業領域の拡大
2023年6月には、michitekuは関西電力発スタートアップの猫舌堂(大阪市)を買収しました。猫舌堂はがん治療後に口が開きにくい悩みを抱える人向けのカトラリーの製造・販売を手掛けており、食事領域を含む「がん患者を取り巻く社会課題の解決」へと事業領域を広げています。2025年1月にYOHA正式版をリリース後、ユーザーの声を反映しながら継続的に機能をアップデートしています。
市場規模:拡大を続けるグローバルがん治療市場と日本のニーズ
グローバルのがん治療市場は約27兆円規模
Mordor Intelligenceの調査によると、グローバルのがん治療市場は2025年には2451億8000万米ドルと評価され、2026年の2695億5000万米ドルから2031年には4468億9000万米ドルに成長すると予測されており、予測期間(2026年~2031年)中の年平均成長率(CAGR)は10.64%です。
世界中で2,000万件を超える新規がん症例が報告されており、2050年までに3,500万件へ増加するとの見通しもあります。背景には、人口の高齢化、ライフスタイルの変化、環境汚染、遺伝的素因などがあります。
拡大する支持療法(サポートケア)市場
患者の生活を支える支持療法製品市場も拡大基調です。Global Information2025年の調査によると、2025年の224億7,000万ドルから、2026年には235億4,000万米ドルへと、CAGR4.8%で成長が見込まれております。YOHAのような生活支援デジタルツールは、この支持療法市場と隣接する成長領域として注目されています。
日本国内における構造的なニーズ
日本は「世界一のがん大国」と呼ばれ、日本人の死因の3分の1を占める身近な病となっています。仕事を持ちながら通院しているがん患者は約49.9万人(令和4年国民生活基礎調査)にのぼり、年々増加傾向にあります。平均入院日数の短縮化と外来治療へのシフトにより、患者が日常生活を維持しながら治療を継続するためのデジタルサポートニーズは構造的に高まっています。
YOHAは、このニーズに対して「日常」と「通院」をシームレスに橋渡しするユニークなポジショニングを確立しており、今後の市場拡大とともに利用者数のさらなる拡大が期待されます
会社概要
- 会社名:株式会社michiteku
- 所在地:〒104-0031 東京都中央区京橋三丁目1番1号14F
- 設立年月日:2022年11月16日
- 代表者名:藤山 昌彦
- 公式HP:https://www.michiteku.jp/
まとめ
株式会社michitekuは、小野薬品工業の100%子会社として「がんになっても怖くない、誰もがそう思えるような世界をつくる」というビジョンを掲げ、がん患者の日常生活と治療の両立を支えるアプリ「YOHA」を提供しています。日常モードと通院モードの切り替え、AIを活用した感情整理機能、診療ガイドラインに基づく医師相談支援機能など、患者目線に立った独自の設計が大きな特徴です。
がん治療がますます外来・長期化していくなかで、株式会社michitekuの取り組みは、患者と家族に寄り添う新しいインフラとなる可能性を秘めています。今後の事業拡大と機能進化に、引き続き注目したい企業です。
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