
SNSマーケティングの現場では、企業とインフルエンサーのミスマッチにより広告費が無駄になるケースが長年の課題でした。一方、医療現場でも医師のカルテ入力業務が長時間労働の一因とされ、業務効率化が急務となっています。こうした異なる領域の社会課題に対し、AI技術を軸に立ち向かうスタートアップが株式会社ADVATEC(以下ADVATEC)です。連続起業家の池田和泉氏が創業し、累計調達額は7.6億円に到達。IPOを見据えた成長ステージに入っています。本記事では、ADVATECの事業内容や資金調達動向、市場規模などを詳しく紹介します。
事業内容①:AIインフルエンサーマッチングプラットフォーム「Beee」
株式会社ADVATECの中核事業は、2021年8月にリリースされたAIインフルエンサーマッチングプラットフォーム「Beee(ビー)」です。独自開発したAI技術でインフルエンサーのフォロワー属性や過去の投稿内容を解析し、PR案件と最適なインフルエンサーを自動でマッチングする仕組みを構築しました。
インフルエンサーマーケティングは急速に拡大していますが、「フォロワー数だけで選んで効果が出なかった」「案件とインフルエンサーの世界観が合わなかった」といった課題が長年指摘されてきました。Beeeはデータドリブンな解析でマッチング精度を高め、企業とインフルエンサー双方の利益最大化を実現しています。
累計導入社数は2,000社を突破し、アパレル・コスメ・グルメなど幅広い業界で採用されているのが特徴です。特にD2Cブランドや中小規模のECショップにとっては、低コストでPR施策を開始でき、応募ベースで効率的に施策を進められる点が大きなメリットとなっています。
同社はBeeeを起点に、SNS運用代行やWeb広告運用代行(Google・Meta)といった成果直結型のマーケティング支援をワンストップで提供。D2C特化型企業として培った「モノを売るノウハウ」とAIを掛け合わせた提案力が差別化ポイントです。
関連事業として、アパレルメーカーの余剰在庫を販売するECサイト「サステナモール」も展開しています。AIが余剰在庫商品を選定し、契約インフルエンサーが自分の気に入った商品を宣伝、販売数に応じて報酬を得る仕組みで、余剰在庫廃棄という社会課題の解決にも寄与しています。

事業内容②:音声AIカルテ作成支援サービス「コエカル」
もう一つの注目事業が、医療分野に特化した新規事業「コエカル(COEKAR)」です。Beeeで培ったAI解析力・開発力を医療領域に応用し、診療現場のカルテ入力を音声AIでサポートするツールとして開発されました。
医師の長時間労働は深刻な社会課題で、その一因がカルテ入力をはじめとする事務作業の負担です。コエカルは診察中の医師と患者の会話をAIが解析し、カルテとして自動で整えることで、医師が診察そのものに集中できる環境を提供します。音声認識・自然言語処理といった最先端技術を駆使している点が強みです。
ターゲットは、業務効率化を進めたい医療機関や、勤務環境改善に取り組みたいクリニック。導入により医師の残業時間削減、患者との対話時間の確保、記載漏れの防止などの効果が期待されます。
現在、ADVATECは医療機関の導入から活用定着をリードするカスタマーサクセス職を積極的に募集しており、コエカルの事業拡大に向けた体制強化を進めています。インフルエンサーマーケティング領域にとどまらず、医療DXという大きな市場へと事業ポートフォリオを広げている点は、他のマーケティング系スタートアップとの明確な差別化要因です。

資金調達:プレシリーズBで1.6億円、累計7.6億円に到達
株式会社ADVATEC(旧KOLテクノロジーズ)は、複数回の資金調達を経て累計調達額7.6億円に到達しました。公式会社概要によれば、資本金(資本準備金含む)は7億998万2,000円と記載されており、累計調達額との整合性が取れています。
これまでの資金調達ラウンド履歴は以下の通りです。
| ラウンド | 調達額(目安) | 累計(目安) |
|---|---|---|
| シード | 約1億円(融資含む) | 約1億円 |
| プレシリーズA | 約1億円 | 約2億円 |
| シリーズA | 約2億円 | 約4億円 |
| プレシリーズB等 | 約1.6億円 | 約7.6億円 |
直近のプレシリーズBラウンドでは1.6億円を調達。AIインフルエンサープラットフォーム「Beee」の機能拡張、音声AIカルテ支援「コエカル」の医療機関向け展開、採用体制強化などに充てられていると考えられます。
同社は現在IPOを視野に入れて準備を進めていることが採用情報でも明示されており、今回の調達はその成長ステージの重要な一歩と位置付けられます。2025年12月には事務所を東京都渋谷区神泉町のDaiwa渋谷神泉ビル8Fへ移転しており、事業拡大に伴う拠点強化も進んでいます。
創業者の池田和泉氏は、2018年にアパレルD2C特化の株式会社nodeを設立し、2020年7月に上場企業へ売却した連続起業家。過去の起業経験のなかで大量の余剰在庫が廃棄されていく現場を目の当たりにし、「目を背けたくなるような社会課題を解決したい」という想いでKOLテクノロジーズ(現ADVATEC)を立ち上げました。CFOの長井遼平氏は公認会計士としてKPMGあずさ監査法人での経験を持ち、CTOの加藤彰宏氏は楽天市場「RMS」の開発責任者を務めた実績を持つなど、経営陣の顔ぶれも豪華です。
市場規模:拡大するインフルエンサーマーケティングと医療DX市場
インフルエンサーマーケティング市場の拡大
サイバー・バズ/デジタルインファクトの調査によれば、国内のインフルエンサーマーケティング市場は2023年時点で741億円規模に達しており、2027年には約1,302億円規模まで拡大すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は約12%と高水準で、SNS利用の一般化と広告主のニーズ多様化を背景に、今後も持続的な成長が見込まれる分野です。
その中で「Beee」はAIによるマッチング精度と累計導入社数2,000社以上という実績を武器に、中小EC事業者からナショナルブランドまで幅広い層をカバー。市場拡大の波に乗るポジションを確立しています。

医療DX市場の急拡大
医療DX市場も大きな成長が見込まれています。富士経済などの調査によれば、国内の医療ICT・DX関連市場は2030年に向けて数千億円規模へと拡大すると予測されており、なかでも音声認識・AI活用によるカルテ支援や業務効率化ソリューションは特に注目領域とされています。医師の働き方改革が2024年から本格施行された影響もあり、医療機関からのDXニーズは急速に高まっています。
コエカルはこの追い風のなか、音声AIによるカルテ入力支援という具体的な業務効率化ソリューションを提供しており、今後の伸びしろが大きい領域です。
花卉産業DXという新たな挑戦
さらにADVATECは、約1.1兆円規模とされる国内花卉産業のDX化にも着手し、2033年までに日本の花卉業界で最大の会社になるという長期ビジョンを掲げています。複数の巨大市場に多角的に挑戦する姿勢が、同社の成長ポテンシャルを支えています。
会社概要
- 会社名:株式会社ADVATEC
- 所在地:東京都渋谷区神泉町9-1 Daiwa渋谷神泉ビル8F
- 設立年月日:2020年7月
- 代表者名:池田 和泉
- 公式HP:https://www.advatec.co.jp/
まとめ
株式会社ADVATECは、AIインフルエンサーマッチング「Beee」で培った技術力を、医療DXの「コエカル」や花卉産業DXなど新たな領域へと拡張し続けている注目のスタートアップです。累計調達額7.6億円に到達し、IPOを見据えたフェーズに入った同社は、社会課題の解決とビジネス成長を両立するモデルケースとして、多くのビジネスパーソンから注目を集めています。
連続起業家である池田氏のリーダーシップ、財務・技術の両面を支える強力な経営陣、そして具体的な市場ニーズに応えるプロダクト群。この三拍子が揃っており、今後の事業展開が非常に楽しみな企業と言えるでしょう。マーケティング領域から医療、花卉産業までを見据えた同社の挑戦は、日本のDXを次のステージへ進める原動力となる可能性を秘めています。
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