
世界的な脱炭素化の潮流のなか、石炭火力発電所からのCO2排出削減は喫緊の課題です。その一方で、農業残渣や生活ゴミといった未利用バイオマス・有機性廃棄物は膨大に存在しながら、その多くが燃料化されずに捨てられています。
こうした未利用資源を再生可能エネルギーへ転換し、既存の石炭火力インフラで活用する道筋を切り拓こうとしているのが、株式会社日本TOYO(以下、日本TOYO)です。同社は東京科学大学(旧・東京工業大学)との産学連携により「次世代型加水分解装置」を開発し、日本とベトナムを中心に国際実証を進めています。
本記事では、株式会社日本TOYOの事業内容や資金調達動向、市場規模などを詳しく紹介します。
事業内容:未利用バイオマス・有機性廃棄物を燃料化する次世代型加水分解装置

日本TOYOは、未利用バイオマスや有機性廃棄物を対象とした加水分解処理設備の開発と、その大型化・連続運転化技術の実装を行っています。加水分解技術とは、高温・高圧の水蒸気を用いてバイオマスや廃棄物を分解し、燃料として使える形へ転換するプロセスを指します。同社が開発する「次世代型加水分解装置」はこの原理を応用し、従来技術ではブラックペレット化が困難だった廃棄物や、パーム油殻(EFB)などの未利用バイオマスを効率よく燃料化できる点が特徴です。
この技術はCO2削減に大きく貢献することで注目が集まっています。石炭火力発電所は依然として世界の電力供給の重要な柱ですが、CO2排出量の多さから脱炭素化への転換が急務です。日本TOYOは、農業残渣や生活ゴミを原料としたブラックペレット(水熱炭化物)を製造し、既存の石炭火力設備で石炭と混焼させることで、大規模なインフラ改修なしにCO2削減を実現する道を示しています。
他の脱炭素化の技術と大きく異なるのは、多様な原料への対応している点です。従来のホワイトペレット(木質ペレット)は原料が木質資源に限定されがちですが、ブラックペレットは疎水性が高くエネルギー密度にも優れ、既設の石炭火力設備との互換性が高いという利点を備えています。しかも、廃棄物や未利用バイオマスから製造したブラックペレットを石炭と混焼する試みはこれまで実証例がなく、技術的フロンティアに位置する取り組みとして評価されています。
他にも、既存設備を活かせる導入コストの低さ、廃棄物処理コストの削減、再生可能エネルギー活用によるCO2排出削減効果などがメリットとして挙げられ、脱炭素化を迫られている電力事業者や自治体、廃棄物処理事業者、そしてバイオマス燃料の安定調達を求める産業界からも大きく注目が集まっている企業です。
加えて同社では、AIやIoT技術を活用した都市防災DXソリューション「Metro Smoke Station+」の開発も進めており、エネルギー転換と防災DXを融合させた独自の事業構造を築いています。
創業背景と事業拡大戦略:NEDO国際実証事業への採択とベトナム展開
代表取締役の古塩勝彦氏は、ベトナムを含む海外エネルギープロジェクトの推進において対外交渉・契約締結を担っており、国際案件の実行力を備えた経営者です。2021年に設立された同社は、東京科学大学名誉教授である吉川邦夫氏(TOYOグループ上席研究員)との共同研究体制を軸に、産学連携での技術高度化を進めてきました。
事業拡大の重要な転機となったのが、公的支援と国際連携です。2023年7月31日には、ベトナム国営電力グループ傘下のEVN PECC2(Power Engineering Consulting Joint Stock Company 2)との間で、次世代型加水分解装置を用いた脱炭素化社会の実現に向けた覚書(MOU)を締結しました。さらに、パートナー企業の日本インシュレーション株式会社(JIC)と共同提案した「石炭火力発電所でのCO2排出削減を実現するための廃棄物・未利用バイオマス資源からのブラックペレット製造と石炭との混焼の国際実証(ベトナム)」が、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2024年度「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」第1回公募に採択されました。
現在の事業拡大戦略として、ベトナム電力公社(EVN)と連携し、ファーライ火力発電所(GENCO2)およびニンビン火力発電所(GENCO3)で次世代ブラックペレット混焼実証試験を推進中です。加えて、2025年4月にはパートナーのJICが台湾の廃棄物資源化企業へ第一号の加水分解装置を納入し、運転を開始しました。商用化フェーズへの移行が本格化しつつあります。
市場規模:拡大するバイオマス・廃棄物エネルギー市場
国内市場・世界市場の動向
日本TOYOが事業を展開するバイオマスエネルギー市場は、国内外で急速な拡大が予測されています。矢野経済研究所の調査によると、2023年度の国内バイオマスエネルギー市場規模は11,641億円と見込まれ、2030年に向けて大きく拡大していくとの予想です。さらに、2030年度の国内バイオマス発電量は45,988GWhに達すると予測されており、市場の伸長も追い風となり、2030年に向けて市場拡大が続く見込みです。
世界市場に目を向けると、SDKIの調査によると廃棄物エネルギー市場の収益は2024年に約440億米ドルに達し、CAGR約8%で成長して2037年までに約億米940ドルへ拡大すると予想されています。
環境産業全体における位置付け
国内の環境産業市場規模は2022年に59.8兆円(前年比+4.3%増)で、2050年には約135.9兆円まで拡大すると推計されています。とくに「廃棄物処理・資源有効利用」セグメントは2050年時点で構成比51.5%と最大領域を占める見通しで、まさに日本TOYOが取り組む分野が中核市場となります。
同社の次世代型加水分解装置は、既存の石炭火力インフラを活用しつつ廃棄物を燃料化するという独自性から、脱炭素化と資源循環という二つの巨大トレンドに同時にアプローチできる技術として、大きな成長ポテンシャルを秘めています。
会社概要
- 会社名:株式会社日本TOYO
- 所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座3丁目9-4 第一文成ビル 402号室
- 設立年月日:2021年
- 代表者名:古塩 勝彦
- 公式HP:https://nihon-toyo.com/
まとめ
株式会社日本TOYOは、廃棄物や未利用バイオマスを次世代型加水分解装置でブラックペレット化し、既存の石炭火力設備との混焼で脱炭素化を実現するという、実務的かつ革新的な事業を展開しています。東京科学大学との産学連携、NEDO国際実証事業への採択、ベトナム電力公社(EVN)や台湾企業との連携など、産学官・国際協力を巧みに組み合わせた事業推進力は、同社ならではの強みといえます。
エネルギー転換と資源循環という世界共通の課題に対し、日本発の技術で応える同社の挑戦は、これから本格的な商用化フェーズへ移行していきます。日本国内はもちろん、アジア諸国の脱炭素化における重要なプレイヤーとして、今後さらに注目が集まっていくはずです。
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