
少子高齢化や晩婚化を背景に、婚礼・宴会業界は市場縮小と業績悪化という構造的な課題を抱えています。帝国データバンクの調査では、2023年度の結婚式場業界の35.6%が赤字に転落。会場運営者にとって業務効率化と新たな集客手法の確立は待ったなしの状況です。この領域で存在感を強めているのが、婚礼・宴会業務のデジタル化を一気通貫で支える「バーティカルSaaS」を展開する株式会社TAIAN。「祝い事で社会的つながりを活発化させる」をビジョンに掲げ、日本発の祝祭プラットフォーム構築を目指しています。本記事では、株式会社TAIANの事業内容や資金調達動向、市場の規模等について詳しく紹介します。
事業内容①:All in One婚礼宴会システム「Oiwaii」
株式会社TAIANの主力プロダクトは、クラウド型の婚礼宴会システム「Oiwaii」です。ブライダルフェアの申し込み受付から来場・成約、メニューやオプションの見積もり作成、受発注、挙式・披露宴終了後の顧客関係構築までを一元管理できる、業界特化型のオールインワンシステムとして設計されています。

現場の課題を丁寧にヒアリングして開発された点が大きな特徴です。複数の集客媒体にフェア情報を一括掲載し、予約状況に応じて空き枠を自動調整する機能や、プランナーの個別予定と会場全体の予約を統合的に把握できるスケジュール管理機能を備えています。導入企業ではFAX業務が95%削減され、予約管理業務も50%減少するなど、劇的な業務効率化を実現しました。
差別化の要は、BtoBtoCモデルとして「プランナー」と「カップル」双方の使いやすさを追求したUI/UXにあります。配席や見積もりの変更が発生してもシステム全体に即時反映されるため、現場のオペレーションミス防止と顧客満足度向上を両立できます。全国の式場・ホテル・レストランなど約800社にサービスを提供しており、導入した250式場では解約ゼロという実績を積み上げてきました。2025年6月からは「Oiwaii AI」の提供も開始し、AIエージェントを活用した業務支援も本格化しています。
事業内容②:Web招待状・席次表「Concept Marry」とインバウンド支援

もう一つの柱が、Web招待状・席次表サービス「Concept Marry」です。無料の一般的なWeb招待状とは異なり、式場ごとに情報設定ができ、招待状はプランナーの添削を経なければ送付できない仕組みになっています。式場ブランドを守りながらペーパーレス化を推進できる点が高く評価されているのです。国際基準のISMS(ISO 27001)も取得済みで、個人情報管理の面でも安心して利用できます。さらに、Web招待状で集めたゲストデータは「Oiwaii」の施行管理システムに自動で取り込まれ、業務全体の効率化にも寄与します。
インバウンド需要への対応も進めています。400式場の支援実績を持つバイリンガルチームが、海外カップル向けの集客設計から施行オペレーションまでを一気通貫でサポート。「Oiwaii」との連携により、国内カップルと合わせた一元管理を可能にしました。訪日客の増加に伴い、日本での挙式を希望する海外カップルは今後さらに拡大が見込まれるため、この領域は同社の大きな成長ドライバーになると考えられます。
このほか、業界向けマーケティングWebメディア「ブライダルDXマガジン」も運営し、業界全体のデジタル化を後押ししています。TAIANは単なるツール提供にとどまらず、業界の構造改革をリードする存在として位置付けられているのです。
資金調達:シリーズBで約7億円を調達し祝祭プラットフォーム構想を加速

株式会社TAIANは、シリーズBラウンドにおいて第三者割当増資により約7億円の資金調達を実施したと2026年7月に公表しました。今回のラウンドにはグロービス・キャピタル・パートナーズ、JFR MIRAI CREATORS Fund、東京海上日動などが参加しています。
調達資金の使途は次の4点です。
- 婚礼宴会事業の組織体制強化と国内市場シェアの拡大
- 宴会プラットフォーム事業への投資
- ホテル・レストラン向けサービスの拡充
- インバウンド向け事業の本格展開
同社はこれらの投資を通じてバーティカルデータ基盤を確立し、AIエージェントを活用した「祝祭プラットフォーム」への進化を目指すとしています。インターネットやAIの普及によって「個」の時代が進む一方、「人が集い、心が動く」リアルな体験の価値が改めて見直されている——こうした時代背景を事業成長の追い風と捉えているのです。
投資家からの評価も高く、グロービス・キャピタル・パートナーズの工藤真由氏は、TAIANが「リアルな集いの場の価値を高める中核を担う存在」であるとコメント。JFR MIRAI CREATORS Fundの徳田和嘉子氏は、祝祭市場が持つ高い親和性に注目していると述べています。祝祭という日本文化に根ざしたテーマ性と明確な成長戦略の両立が、投資家の共感を集めた形です。
市場規模:縮小傾向のブライダル市場に生まれるDX需要
国内ブライダル市場の現状
矢野経済研究所の調査(2025年)によれば、2024年の国内ブライダル関連市場規模(主要6分野計)は前年比99.9%の約1兆8,448億円で推移する見込みです。主力である挙式披露宴・披露パーティ市場も僅かな伸びに留まり、市場全体としては横ばい〜緩やかな縮小傾向が続いています。少子高齢化・晩婚化・未婚率の上昇といった構造的な要因が背景にあり、コロナ禍前の水準には戻っていません。
業界の課題とDX需要
帝国データバンクの調査では、2023年度の結婚式場業界の35.6%が赤字、「減益」を含めた業績悪化企業は約6割にのぼりました。「ナシ婚」「ジミ婚」、少人数披露宴の増加も進み、ブライダル業界現状調査2025によれば、少人数の結婚式を選ぶカップルが55%を超えるなど、価値観の多様化も鮮明です。
厳しい環境下で会場側に求められているのは、受注1件あたりの収益性を高めつつ、業務効率化と新たな集客手法を確立すること。市場が縮小しているからこそ、限られたリソースを最大化するDX投資への需要が高まっているといえます。
TAIANの市場ポジション
TAIANは、婚礼にとどまらず宴会・ホテル・レストラン・インバウンドへとサービス領域を広げ、「祝祭市場」という広義の成長領域を捉えようとしています。婚礼市場が縮小しても、法人宴会や記念日イベント、海外富裕層向けの祝祭需要は引き続き拡大が見込まれ、中長期的な成長ポテンシャルは大きいでしょう。
会社概要
- 会社名:株式会社TAIAN
- 所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿一丁目34-16 清水ビル3F
- 設立年月日:2020年6月23日
- 代表者名:村田 磨理子(代表取締役CEO)
- 公式HP URL:https://taian-inc.com/
まとめ
株式会社TAIANは、婚礼・宴会という日本文化に深く根ざした領域で、業界特化型SaaS「Oiwaii」や「Concept Marry」を通じて現場のデジタル変革をリードしています。約7億円のシリーズB調達をテコに、AIエージェントを活用した「祝祭プラットフォーム」の実現へ大きな一歩を踏み出しました。市場が縮小傾向にあるからこそ、DXによる生産性向上と新たな価値創出は、会場運営者にとって避けて通れないテーマになっていくはずです。「祝い事で社会的つながりを活発化させる」というビジョンのもと、日本の祝祭文化を再定義しようとする同社の挑戦から、今後も目が離せません。
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